唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。
このコラムでは、私のコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。
中小企業の後継者として会社を引き継ぐ際、「先代の経営スタイル」と「自分自身のやり方」をどう調和させるかという課題は、非常に多くの方が直面する共通のテーマです。
長年培われた企業文化や経営哲学を尊重する一方で、変革が必要な部分に踏み込むことは、後継者として避けられない重要なステップです。
現代のビジネス環境は、変化のスピードが速く、不確実性の高い「VUCA時代」です。
この環境で企業の持続的成長を実現するには、過去の成功体験だけでなく、新しい視点や方法を取り入れ、後継者としての「自分らしさ」を発揮することが求められます。
私たち唐澤経営コンサルティング事務所では、「コーチング」と「コンサルティング」を融合させたアプローチを用い、後継者が抱えるジレンマを解消し、自分らしい経営を築くお手伝いをしています。
本記事では、後継者が先代の経営スタイルを活かしながら、自らの強みを組み合わせて企業を次のステージへ導く方法をご紹介します。
後継者のジレンマとは?

後継者が感じるジレンマの中心は、「先代の経営スタイルと自身のスタイルをどう両立させるか?」という点にあります。
先代の経営スタイルの影響
先代が長年かけて築いた地域密着型の営業戦略や家族的な社風は、企業の成功に大きく貢献してきた可能性が高いです。
一方、デジタル化が進み顧客ニーズが多様化する昨今、そのスタイルをそのまま踏襲するだけでは十分な成果が得られなくなるリスクもあります。新しい技術の導入や市場拡大を阻む要因になりかねないのです。
自分らしさを追求する難しさ
後継者として、自分の強みや価値観を経営に反映させたい、という思いを抱くのは自然なことです。例えば、デジタルマーケティングの導入や働き方改革を進めたいと考えていても、従来の文化や慣習との衝突によって社員から抵抗を受ける可能性があります。特に古参社員にとっては、「新しいやり方」への不安が大きいため、後継者の方針に疑問を呈するケースも珍しくありません。
両立の必要性
先代が築いた強み(信頼関係や社風など)をベースにしながら、自分ならではのアイデアを取り入れることが、中長期的な持続的成長を実現するカギとなります。
例えば、先代の築いた顧客基盤に加え、後継者自身の得意分野であるデジタル戦略を組み合わせることで、新たな顧客層を開拓することも可能です。「尊重」と「変革」のバランスこそが、企業を次のステージへと押し上げる原動力になります。
私たちの「コーチ型コンサルティング」は、これらのジレンマに対処するための有効な手法です。コーチングを通じて後継者の内なる強みやビジョンを引き出し、コンサルティングによってそれを具体的な戦略や行動計画に落とし込むことで、企業全体を調和の取れた形で成長に導きます。
経営スタイルを両立させるための3ステップ

後継者が先代の経営スタイルを大切にしながら、自身の強みを最大限に活かすためには、以下の3ステップを意識してみてください。

以降、ステップごとに解説していきます。
ステップ1:先代の成功要因を徹底的に理解する
- 先代の成功背景を把握
先代の時代背景や市場環境、顧客ニーズを深く学びましょう。例えば「なぜ地域密着型が効果的だったのか」「どのような意思決定で成長を遂げたのか」など、先代の思考プロセスを知ることが重要です。 - 失敗事例にも学ぶ
成功体験だけでなく、過去の失敗や苦労話にも耳を傾けましょう。そこで得た教訓は、今後の改革や新規事業にも役立ちます。
ステップ2:自分の強みを明確化し、経営に活かす
- 自身の強みと得意分野を洗い出す
デジタル技術に詳しい、マーケティングの経験がある、コミュニケーション力に長けている等、自分自身が持つ武器をはっきりさせることが第一歩です。 - 具体策を立案する
たとえば、デジタルマーケティングの導入やSNSを活用した新規顧客開拓など、自分が得意とする領域を会社の成長戦略に組み込みます。
ステップ3:新しいアイデアや外部支援を積極的に活用する
- 異業種や最新のビジネスモデルに触れる
他業界の成功事例を参考にすると、自社の変革に活きるヒントが得られます。 - 専門家やコンサルタントの力を借りる
外部コンサルタントは多様な業界知見と専門性を有しています。自社だけでは気づきにくい課題や、先進的な手法を取り入れるうえでのサポートを受けることで、よりスムーズに組織改革を進められます。
私の体験談

私自身、経営コンサルタントとして企業の後継者支援に携わってきました。その中で、特に印象に残っている事例を一つご紹介します。
ある中小企業の後継者であるAさんは、先代が築いた堅実な経営スタイルを尊重しつつ、自分自身の新しいアイデアをどのように組み込むか悩んでいました。そこで私は、まず創業の動機や先代の成功要因を徹底的に調査・分析することを提案しました。
この時のポイントは、会社の沿革(ホームページの会社概要に掲載されていることが多い)を参照しながら、ていねいに時系列に沿って先代の話を聞くことです。沿革に記載されている出来事に従って、その時の外部環境や社内の状況(強み・弱みや社員数、組織体制など)、そして先代がどのようなことを考え、なぜそのような意思決定をしたのか。これらのことを丁寧に聞いていくのです。
この時はAさん同席のもとで、コンサルタントである私がヒアリングしていったのですが、先代は当時のこと思い出しながら、「なつかしいな~」「あの時は本当に大変だった…」という言葉とともに、正に先代の目の前でそれらのことが起きているかのように、生き生きと詳細に説明してくださいました。
この時にAさんは、先代が重視していた顧客との深い信頼関係が特に自社の強みであることを再認識することができました。
次に、Aさん自身の強みであるマーケティング力と営業力を活かし、従来のような受託型の営業スタイルだけではなく、お客様の経営課題から踏み込んでアプローチする提案型営業スタイルを取り入れました。同時に、お客様の経営課題からアプローチする新サービスを導入しました。これらの施策により、新規顧客層を開拓しつつ、既存顧客との関係も一層強化することができました。
この経験を通じて、Aさんは先代の経営スタイルと自分自身のアイデアをうまく融合させることができ、企業は新たな成長軌道に乗ることができました。
このように、後継者としてのジレンマを乗り越えるためには、過去と現在のバランスを取りながら、自分らしい経営スタイルを築くことが重要です。
次に、よくある質問についてお答えします。
Q&A
ここでは、後継者がよく直面する疑問や悩みに対する回答をいくつか紹介します。
Q1: 先代の経営スタイルをどこまで尊重すべきでしょうか?
A: 先代の経営スタイルを尊重することは大切ですが、すべてをそのまま受け継ぐ必要はありません。
重要なのは、先代がこれまで成功してきた要因をしっかりと理解した上で、それを基盤にして自分自身のアイデアや視点を加えていけないか?という視点で考えてみることです。「自社の強みを活かしながら、新しい時代に合わせた変革を進めていく」という視点で進めていくとよいでしょう。
Q2: 自分らしさを出すためにはどうすれば良いでしょうか?
A: 自分らしさを出すためには、まず自分のビジョンや強み、特性を明確する必要があります。その上で、「そのビジョンを実現するために何をするべきか?」「自分の強み・特性を経営にどのように経営に活かすか?」をじっくりと考えてみることです。
また、外部から新しいアイデアや視点を取り入れることで、自分自身のスタイルを確立することもできます。後継者は先代より年齢が若いわけですから、柔軟な発想をもちつつ、素直でオープンな姿勢をもつことが大切となります。
Q3: 変革に対して社内から反発がある場合、どう対応すべきでしょうか?
A: 変革に対する反発は珍しいことではありません。特に、先代の経営スタイルを信奉する古参社員からの抵抗は根強いものがあるでしょう。例えば、「先代の時代はこうだった」「今までのやり方で十分だ」「新しい社長は若くて経験が足りず、不安だ」といった意見が出てくることが予想されます。
このような状況では、特にコミュニケーションを重視し、変革の目的やメリットを従業員に自らの言葉で丁寧に説明することが大切です。また、可能であれば先代の協力を得ることもカギとなるでしょう。本内容の詳細にについては、別途記事にしたいと思います。
これらの回答が、後継者としてのジレンマ解消に役立つことを願っています。
最後に、この記事のまとめをご覧ください。
まとめ
後継者として先代の経営スタイルを大切にしながら、自分らしい経営を実現するのは容易ではあ後継者として「先代の経営スタイル」と「自分らしい経営」の両立は簡単ではありません。
しかし、以下のステップを踏むことで、そのジレンマを解消できます。
- 先代の成功要因を理解し、企業の強みを再確認する。
- 自分の強みを明確化し、具体的な戦略に落とし込む。
- 外部支援や最新のビジネスモデルを活用し、変革をスムーズに進める。
唐澤経営コンサルティング事務所では、「コーチング」と「コンサルティング」を融合させたアプローチで、後継者が抱える課題を解決し、自分らしい経営を実現するお手伝いをしています。変化を恐れず、次のステージへ進む準備を始めませんか?
「企業とあなた自身の未来を一緒に描きましょう。」
後継者としてのジレンマや具体的な経営課題についてお悩みの方は、ぜひ以下のフォームからお気軽にお問い合わせください。唐澤経営コンサルティング事務所が全力でサポートいたします。

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