唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。

このコラムでは、私のコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。

経営者として、日々の業務に追われながらも、会社の未来をどう切り開くべきか悩んでいませんか?

特に、自社の強みや弱みをどう活かし、外部環境にどう対応すべきかは、多くの経営者が抱える課題です。

そんな時に役立つフレームワークがSWOT分析です。

SWOT分析は、自社の内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を整理し、経営課題を明確にするためのツールです。

中小企業の経営者のみなさんがはじめて経営課題を整理する際に、シンプルでわかりやすいツールがSWOT分析だと私は考えています。

この記事では、初めてでも簡単に実践できるよう、SWOT分析の基本から具体的な進め方までをわかりやすく解説します。

本記事を読めば、経営者として新たな視点が得られ、次の一手を考えるためのヒントが見つかるでしょう。

 SWOT分析の基本

SWOT分析とは

SWOT分析は、企業の内部環境と外部環境を整理し、経営戦略や課題を明確にするためのフレームワークです。

具体的には、以下の4つの要素から構成されます。

  • Strength(強み):競合他社に対して、自社が優位に立つ経営資源のプラス要因
  • Weakness(弱み):自社に対して競合他社が優位に立つ経営資源のマイナス要因
  • Opportunity(機会):自社にとって追い風となる環境変化のプラス要因
  • Threat(脅威):自社にとって逆風となる環境変化のマイナス要因

ここでポイントなのは、内部環境である強み・弱みは自社でコントロール可能ですが、外部環境である機会・脅威は自社ではコントロールできないという点です。

以上4つの要素を整理することで、企業は自社が置かれている状況を客観的に把握し、次に取るべき行動を明確にできます。

特に中小企業では、限られた経営資源をどこに集中すべきかを判断するために、要素をもれなく抽出する上では有効な手法の1つとなります。

 SWOT分析の目的

SWOT分析は、自社の現状を把握し、次に取るべき具体的なアクションプランを導き出すための経営課題の抽出に行います。

その目的は以下の通りです。

  • 強みを最大限活用する:自社が持つ競争優位性をさらに強化し、市場でのポジションを確立します。
  • 弱みを改善する:成長や競争力向上を妨げている要因を特定し、それらを改善します。
  • 機会を捉える:市場や業界で生じている新たなチャンスに対応し、新たな収益源や成長機会を見つけます。
  • 脅威への対策:外部からのリスクや脅威に対して事前に備え、リスク管理体制を強化します。

SWOT分析による経営課題の設定

SWOT分析は単なる現状把握ツールではありません。
むしろ、その結果から具体的な「経営課題」を導出し、それら課題に対してどのような戦略で対応すべきか整理するためのフレームワークです。

例えば、「強み×機会」の組み合わせからは、自社が持つ技術力やノウハウを活かして、新しい市場ニーズに応える製品開発という課題が浮上することがあります。
一方、「弱み×脅威」の組み合わせでは、自社が抱える人材不足という弱みに対して、市場競争が激化する中でどのような採用戦略や育成プランが必要か、といった具体的な課題が見えてくるでしょう。

2. SWOT分析の具体的な進め方

内部環境の分析(強みと弱み)

内部環境の分析では、自社の「強み」と「弱み」を客観的に洗い出します。
この過程では、以下のような点に注目します。

■強み(Strengths)の例

  • 独自の技術やノウハウ
  • 優れた顧客サービス
  • 効率的な生産システム
  • 強固な財務基盤
  • 優秀な人材

■弱み(Weaknesses)の例

  • 資金力の不足
  • 人材の不足
  • 設備の老朽化や技術の遅れ
  • 知名度の低さ

ポイントは、自社の内部環境を客観的に見ることです。
経営者の思い込みだけでなく、お客様や従業員声も参考にしながら、真の強みと弱みを特定しましょう。

外部環境の分析(機会と脅威)

外部環境の分析では、市場動向や競合状況など、自社を取り巻く環境から「機会」と「脅威」を特定します

■機会(Opportunities)の例

  • 新たな市場ニーズの出現
  • 技術革新による新規事業の可能性
  • 規制緩和
  • 競合他社の撤退

■脅威(Threats)の例

  • 新規参入者の増加
  • 代替品の出現
  • 景気後退
  • 法規制の強化

外部環境の分析では、業界動向や経済情勢など、幅広い視点で情報を収集することが重要です。
また、中長期的な視点で変化を予測することも忘れないようにしましょう。

SWOTクロス分析による経営課題の設定

SWOTクロス分析は、内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)の要素を掛け合わせ、具体的な経営課題や戦略を導き出すフレームワークです。

以下の4つの組み合わせが主な分析軸となります。

強み×機会(積極的戦略課題):強みを機会に活かすための経営課題
例)
・強み: 独自技術
・機会: 環境志向市場の拡大
・戦略課題: 独自技術を活かし、環境対応型製品を新市場に投入。

弱み×機会(改善戦略課題):機会を活かすために、弱みを克服する経営課題
例)
・弱み: 資金不足
・機会: クラウドファンディングの普及
・戦略課題: 資金不足を克服するためにクラウドファンディングを活用し、新製品開発資金を調達。

強み×脅威(差別化戦略):強みを活かして脅威をと乗り越えるための経営課題
例)
・強み: 顧客対応力
・脅威: 激しい価格競争
・戦略課題: 高い顧客対応力を活かし、サービスの質で差別化を図る。

弱み×脅威(縮小回避課題):弱みを踏まえ、脅威の影響を抑える経営課題
例)
・弱み: 老朽化した設備
・脅威: 新規参入企業の台頭
・戦略課題: 設備を更新し、競争力を維持する。

SWOTクロス分析を実施する際には、以下のポイントを踏まえて柔軟に活用することが重要です。

  1. 掛け合わせる要素は複数でもOK
    • 強み・弱み・機会・脅威を1つずつ選ぶ必要はなく、複数の要素を掛け合わせることで、戦略の幅を広げることができます。
      例)「独自技術」と「優れた顧客対応力」という2つの強みを、「環境対応市場の成長」という1つの機会に活かす。
  2. すべての要素を必ず使う必要はない
    • SWOTのすべての要素を無理に使う必要はありません。課題や状況に応じて、重要度の高い要素を優先的に活用しましょう。
      例) 資金不足が深刻な場合、「弱み × 機会」に集中して課題を設定。
  3. 具体性を重視する
    • 抽象的な戦略にとどまらず、実行可能な具体的課題や行動計画を設定することが成功の鍵です。
      例) 「クラウドファンディングを利用」ではなく、「6カ月以内にクラウドファンディングで500万円を調達」と具体化。

私のSWOT分析活用法

経営コンサルタントとしてクライアントの経営課題を抽出する際に、私自身が実務としてSWOT分析を使うことはありません。
※補助金申請の事業計画書で説明責任を果たすための手段として使うことはあります。

しかし、SWOT分析はシンプルで直感的であり、チームディスカッションを促進しやすいメリットがあります。

そのため、フレームワークを使った整理の型を体感してもらうワークショップや研修等で、クライアント自身に分析を行っていただく形で私はSWOT分析を利用しています。

SWOT分析の価値は、中小企業経営者のみなさまがはじめて経営課題を整理する際に、シンプルでわかりやすい点です。

中小企業経営者のみなさまが「自社の経営課題を言葉にする」「外部環境・内部環境を意識する」ためのきっかけとなる導入ツールとして、SWOT分析は有用なフレームワークだと考えています。

Q&A

Q1. SWOT分析は本当に効果がありますか?
A: はい、特に初めて経営課題を整理する際に効果的です。SWOT分析は「強み」「弱み」「機会」「脅威」をシンプルに整理することで、頭の中でぼんやりしていた経営課題を具体化できます。これにより、次に何をすべきかの方向性が見えてきます。

Q2. SWOT分析をすると、具体的にどんな成果が得られますか?
A: SWOT分析を行うことで、次のような成果が期待できます。

  • 自社の強みや弱みを明確化: 「どこが優れているか」「どこを改善すべきか」を整理できます。
  • 外部環境への対応策を考えられる: 新しいビジネスチャンスや潜在的なリスクを事前に把握できます。
  • 具体的な行動のきっかけが得られる: 分析結果をもとに、強みを活かす方法や弱みを補う戦略を議論するきっかけとなります。

Q3. SWOT分析の進め方がわからないのですが、簡単に教えてください。
A: 以下の手順で進めるとスムーズです。

  • テーマを設定: 「新商品の販売戦略」や「経営課題の整理」など、具体的なテーマを決めます。
  • 書き出す: 自社の「強み」「弱み」「機会」「脅威」を箇条書きで記入します。
  • 優先度を決める: 書き出した項目を、どれが最も重要か考えながら整理します。
  • クロス分析: 「強み×機会」で新しいアイデアを考えたり、「弱み×脅威」をどのように回避するかを話し合います。

Q4. SWOT分析だけで経営の意思決定をしてもいいのでしょうか?
A: SWOT分析はあくまでも「整理の入り口」と考えてください。重要な投資判断や具体的な戦略を立てる際には、売上データや市場動向、競合情報などの詳細な分析も必要です。ただし、SWOT分析を起点にすることで、次にどのような分析が必要かを見極める手助けになるでしょう。

Q5. 初めてでもスムーズに進めるにはどうしたら良いですか?
A: 初心者でも成功しやすいポイントは以下の通りです。

  • 小さなテーマから始める: 例えば「特定の製品の強みと課題」など、絞ったテーマに取り組むとやりやすくなります。
  • 個人で考える時間を確保する: いきなりグループで話し合うと意見が偏ることがあるため、まずは個人で考える時間を作りましょう。
  • 例を示す: 初めての方には具体的な例を示し、「こういう視点で考える」といった方向性を共有すると進行がスムーズです。

まとめ

SWOT分析は、中小企業経営者が自社の経営課題を初めて整理する際に非常に有効なツールです。そのシンプルさと直感的な使いやすさから、「経営の現状を把握するための入り口」として最適です。

SWOT分析を通じて、自社の「強み」「弱み」「機会」「脅威」を冷静に整理することで、経営課題を客観的に把握できます。この分析は、社内やステークホルダー間の意見交換を活性化し、次に検討すべき課題や具体的な戦略立案への橋渡し役を果たします。

ただし、SWOT分析はあくまで「整理のツール」であり、それ自体で具体的な行動計画を導くものではありません。得られた気づきをもとに、さらに深掘りした分析や詳細な検討を行うことが必要です。

経営環境が急速に変化する現代において、戦略的な方向性を見極める第一歩として、SWOT分析をぜひ活用してください。得られた洞察をもとに、次のステップを踏み出し、貴社の成長につなげていきましょう。

私たち唐澤経営コンサルティング事務所では、「コーチング」と「コンサルティング」を組み合わせ、中堅中小企業の経営課題解決と成長戦略の策定を強力にサポートいたします。

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この記事を書いた人

唐澤 智哉

新卒で大手金融系シンクタンクに入社し、大手企業向けのITコンサルティングに従事。その後、2社のコンサルティングファームにて、大手企業向けの業務改革・ITコンサルティングに従事。
2012年に大手IT企業に入社し、中小企業向けのコンサルティング事業の立ち上げの中心メンバーとして事業化までを経験し、10年間中小企業向けの経営コンサルティング・ITコンサルティングや研修・セミナーに従事。
その後、2022年に唐澤経営コンサルティング事務所を創業。中小企業向けの経営コンサルティング、DXコンサルティング、研修・セミナー等のサービスを提供している。
趣味は読書で、年間200冊近くの本を読む。