唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。

このコラムでは、私のコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。

2025年度の新補助金「新事業進出補助金」に関して、概要資料が公開されました。

本記事では公表された資料を抜粋しながら、速報で一足早くお知らせします。

なお、本記事はあくまで2024年12月20日現在の公開されている情報を元にした内容となります。今後新たに出てくる情報次第では、大きく変わる可能性がありますので、ご注意ください。

新事業進出補助金とは?

「新事業進出補助金」は、企業の成長・拡大を通した生産性向上や賃上げを促すために、中小企業等が行う、既存事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を支援する補助金です。

事業再構築補助金(事務局ホームページはこちら)の後継として位置づけられる補助金であり、その中でも「成長枠」に近い制度設計となっています。

なお、公表されている「事務局公募要領(案)」によると、令和8年度末までに公募回数は4回程度採択予定件数は6,000件(1,500件/公募回)程度を見込んでいるようです。

基本要件

  • 企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦 ※事業者にとって新製品(又は新サービス)を新規顧客に提供する新たな挑戦であること
    事業再構築補助金の事業再構築指針で示された「新市場進出」に類似した内容となっています。製品と市場双方の新規性要件を満たす必要があるものと推測されます。また、事業目的には「新市場・高付加価値事業への進出を後押し」との記載があるため、新事業の要件として「高付加価値」は1つのキーワードになるものと思われます。
  • 付加価値額の年平均成長率+4.0%以上増加
    前身である事業再構築補助金「成長分野進出枠」と同様の付加価値額要件となっています。
  • 事業所内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上水準
    こちらはものづくり補助金と同様の要件となっています。
  • 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等 ※その他、賃上げ要件を規定する予定
    こちらも2025年実施のものづくり補助金に新たに追加された要件と同一となっています。前回までは、従業員数100人以下の事業者について一般事業主行動計画は加点要件でした。しかし、ものづくり補助金同様、今回からは従業員21名上の場合は必須となるものと思われます。
    一般事業主行動計画の詳細は、厚生労働省のサイトをご確認ください。

なお、賃上げ要件が別途規定される見込みです。

補助上限、補助率、対象経費

  • 補助上限
    • 従業員数20人以下:2,500万円(3,000万円)
    • 従業員数21~50人:4,000万円(5,000万円)
    • 従業員数51~100人:5,500万円(7,000万円)
    • 従業員数101人以上:7,000万円(9,000万円)
      ※補助下限750万円
      ※大幅賃上げ特例適用事業者(事業終了時点で①事業場内最低賃金+50円、②給与支給総額+6%を達成)の場合、補助上限額を上乗せ(上記カッコ内の金額は特例適用後の上限額)。
  • 補助率
    1/2
  • 対象経費
    建物費、構築物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費

注目点は2点です。

1点目は、補助下限として750万円が設定されていることです。補助率は1/2なので、この補助金を活用するためには最低でも税抜き1,500万円以上の設備投資が必要となります。

2点目は、事業再構築補助金では補助対象外だった「構築物」が対象経費に含まれている点です。構築物とは、土地の上に定着する建物以外の建造物、工作物、土木設備などです。具体的には、門や塀などの外構工事、フェンス等です。

事業の流れ

現時点で発表はありませんが、前回までとは大きく変わらないものと予想されます。

補助金申請における主なポイントを以下に記載します。

  • 補助金は、申請したらすべての会社がもらえるわけではなく、審査を通じて採択される必要があります。なお、本補助金の前身と位置付けられている事業再構築補助金の前回(第12次公募)の採択率は26.5%でした。
    なお、本補助金の関連情報としてシステム要件定義書(案)が公開されていますが、応募事業者数約10,000者/公募回、交付採択事業者数約1,500者/公募回との記載があります。よって、計画時点では交付採択率約15%程度を想定しているものと推測されます(下図)。
  • 提出した事業計画書を基に審査が行われて採択者が決定しますので、事業計画書の作成が必要となります。
  • 補助金は原則清算払となりますので、採択されたからといってすぐに補助金が入金されるわけではありません。事業計画に則って補助事業を遂行し、事業に必要な支払いをすべて完了して必要な報告を行った後で、補助金は入金されます。
  • 申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。取得未了の方は、あらかじめGビズIDプライムアカウント取得手続きを行ってください。

公開されたチラシを基に、新事業進出補助金の続報を以下の記事で解説していますので、よろしければお読みください。

今後詳細な要件やスケジュール等が公表され次第、本コラムでも情報発信していきます。

当事務所は認定経営革新等支援機関として、補助金申請サポートを行っています。
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この記事を書いた人

唐澤 智哉

新卒で大手金融系シンクタンクに入社し、大手企業向けのITコンサルティングに従事。その後、2社のコンサルティングファームにて、大手企業向けの業務改革・ITコンサルティングに従事。
2012年に大手IT企業に入社し、中小企業向けのコンサルティング事業の立ち上げの中心メンバーとして事業化までを経験し、10年間中小企業向けの経営コンサルティング・ITコンサルティングや研修・セミナーに従事。
その後、2022年に唐澤経営コンサルティング事務所を創業。中小企業向けの経営コンサルティング、DXコンサルティング、研修・セミナー等のサービスを提供している。
趣味は読書で、年間200冊近くの本を読む。