唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。

このコラムでは、私のコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。

「もっと売上を伸ばしたい」「競合に勝ちたい」と思っても、何から手を付けてよいかわからず、日々の業務に追われるばかり…。

経営者であるあなたには、そのような経験がありませんか?
そのような中で、3C分析は自社の経営課題を整理し、解決策を見つけるための強力なツールとなります。

このコラムでは、3C分析を「明日から使える実践ツール」として活用する方法を、シンプルかつ具体的に解説します。

3C分析とは?

3C分析は、ビジネス戦略を立てるうえで基本となる「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの視点を整理し、戦略を導き出すフレームワークです。

ただ、この概念を大枠として理解しただけでは現場であまり役立ちません。

たとえば「顧客ニーズを知りましょう」「競合をリサーチしましょう」「自社の強みと弱みを把握しましょう」という抽象的な言葉だけでは、いざ手を動かす際に何をどこまでやればいいのか見えにくいのです。

本コラムの主眼は、「明日からでもできる具体的アクション」を示すことにあります。
以降でわかりやすく解説していきますので、一つひとつ現場で試してみながら、自社なりのやり方を確立していきましょう。

Customer(顧客)分析

顧客リストをつくるところからスタート

まずは、既存顧客の情報を整えることが重要です。
Excelでも、ノートでも構いません。以下の項目をリストアップしてください。

  • 主要な顧客の名称(法人・個人問わず)
  • 取引金額・頻度(大口顧客、リピート率の高い顧客はどこ?)
  • 購入(利用)商品・サービスの種類

もし顧客情報をITシステムで管理していない場合でも、売上台帳や領収書、請求書の控えなどからできる限り情報を集めてみましょう。

「どのような顧客が多いか?」を視覚化することで、自社の現状が見えやすくなります。

トップ3の顧客を掘り下げる

リストアップ後、売上規模や重要度の高い顧客のトップ3を選び、その顧客が求める価値を深堀りしてみてください。

  • そのお客様は、なぜ自社を選んでくれたのか?
  • そのお客様は、他社にはない自社の魅力は何だと思っているのか?
  • そのお客様が今、困っていること(課題)は何か?

もし可能であれば、直接「ヒアリングの機会」を設けるのがおすすめです。大規模なアンケート調査をしなくても、電話や対面での打ち合わせで少し質問するだけでも貴重なヒントが得られます。顧客の声は意外と親身になって聞けば教えてくれるものです。

SNSを使った簡易リサーチ

新規顧客層のニーズを探るには、SNSが手軽です。
顧客層に近い層が使っていそうなSNS(X(旧Twitter)、Instagram、Facebookなど)を見て、どのような悩みや話題で盛り上がっているかをチェックしましょう。業界や製品名などのキーワードで検索すれば、ユーザーが発信しているリアルな声を拾うことが可能です。費用をかけずに市場の空気感をつかむのには最適な方法です。

例えば飲食業なら「#地名 + グルメ」「#テイクアウト 口コミ」など、BtoBビジネスなら「業種 + 悩み」「業種 + 困りごと」で検索してみるとよいでしょう。

「お客様が困っていることを、いち早くキャッチし、それを自社のサービスで解決する」――これが明日から取り組める最初の一歩です。

Competitor(競合)分析

競合のWeb・SNSをチェックする

競合企業のホームページやSNS、求人ページなどは無料で誰でも見られる貴重な情報源です。

具体的には下記のポイントをチェックしてみてください。

  • 商品ラインナップや価格帯
  • セールストークや強調しているメリット(品質、価格、対応力など)
  • SNSアカウントのフォロワー数、投稿内容、顧客とのやりとり

大手企業が競合の場合は、プレスリリースの内容や掲載メディアも確認することで、どのような方向に力を入れているかが読み取れます。

お客様の声から逆リサーチ

次に、自社のお客様に直接聞くのもおすすめです。

具体的には、以下の内容を聞いてみましょう。

  • 他に類似サービスを使ったことはありますか?
  • ○○社と比較して、どんな違いを感じましたか?

実は、既存顧客の多くは過去に他社を利用していたり、並行して他社の利用も検討しているケースがあります。そこから得られる情報は、競合分析に非常に有用です。

口コミを吸い上げるだけでなく、「他社にはない魅力や不便」をお客様視点で明確にすることができます。

展示会や店舗へ足を運ぶ

オフラインでも、例えば業界の展示会や商談会があれば、競合が出展しているブースを回ってみるのは貴重な機会となります。

BtoCの小売・サービス業なら、競合店舗を実際に訪れてみるのも大きな収穫が期待できます。店内の雰囲気、従業員の接客姿勢、商品の陳列方法、導線はどうなっているか。そこから自社に取り入れられるヒントを探すのです。

単純に「他社はすごいな」と見て終わるのではなく、「自社ならどのように活かすか?」と逆算しながら目を凝らすと、小さな発見が次々に生まれます。

Company(自社)分析

経営資源の棚卸し

Company(自社)の分析をするためには、自社の経営資源がどれだけあるかを洗い出す必要があります。大企業のように膨大な部署や予算があるわけではありませんが、中小企業には中小企業ならではの強みがあります。

まずは、以下の観点でリスト化してみてください。

  • 人材:社長や従業員の得意分野、資格、実務経験、顧客との関係性
  • 設備・技術:製造ライン、ITツール、特許・ライセンス、専門知識など
  • ブランド・歴史:創業年数、地域での知名度、リピーターの存在
  • ネットワーク:既存顧客、人脈、行政や商工会との連携、取引先との関係

「うちの会社は小さいから」と思うかもしれませんが、強みの種はどんな企業にも必ず存在します。社長一人が長年培ってきたスキルや、従業員のコミュニケーション力など、意外と他社には真似できないものがあるはずです。

 改善すべき課題を率直に書き出す

強みが見えたら、次は弱みや課題も書き出しましょう。

  • SNS運用が苦手
  • 知名度が低い
  • 人手が足りない
  • 売掛金の回収が滞りがち
  • 担当者の引き継ぎが曖昧 など

経営者としては“弱み”を認めるのは億劫かもしれませんが、ここをあいまいにしていると、いくら戦略を立てても実行段階で壁にぶつかります。
むしろ、早い段階で弱みを自覚していれば、他社や外注、補助金、クラウドソーシングなどの外部リソースの活用でカバーする等の打ち手を講じることができます。

対策の優先順位をつける

自社課題が洗い出せたら、すべて同時に直そうとせず、優先順位を決定しましょう。現状、最も売上や顧客満足度に影響が大きいものから片づけていくのが定石です。

例えば

  • 「人材不足」が深刻なら、アルバイトやパートの採用枠をすぐ増やす、外注を検討する
  • 「SNSに力を入れたいが担当者がいない」なら、既存社員に担当を割り振って研修するか、外部のSNS代行と連携する

等です。

限られた経営資源を最適に配分するためにも、「最優先で取り組む課題は何か?」を明確にしておくと迷いが少なくなります。

3C分析を“明日から”実践するための小さなToDoリスト

ここまでの内容を踏まえたうえで、明日からできることをToDoリスト形式でまとめます。
すべてを一気にやる必要はありません。自分の会社の状況に合わせて選択し、少しずつ取り組むことがポイントです。

  1. 【Customer】顧客情報の整理とトップ3顧客へのヒアリング準備
    • 顧客リストを作成し、購入頻度や金額の把握をする
    • トップ3顧客をピックアップし、次回の打ち合わせや電話で「なぜうちを選んでくれたか?」を聞いてみる
  2. 【Customer】SNSキーワード検索で市場の声を拾う
    • 業界関連のハッシュタグやキーワードでSNSを検索
    • 顧客がどんなことで困っているかをリストアップ
  3. 【Competitor】競合のWebやSNSをチェック
    • 競合2~3社を決め、ホームページ・SNS・プレスリリースなどを眺める
    • 価格設定、訴求ポイント、顧客とのコミュニケーションを確認
  4. 【Competitor】既存顧客に「他社利用経験」「比較点」を聞く
    • 顧客との会話の中で「実は他にも○○サービスを検討した」などの情報を逃さずメモする
    • 顧客が何に価値を感じているかを再確認
  5. 【Company】自社のリソースをリストアップ
    • 「人(従業員スキル・社長の経験)」「モノ(設備・店舗)」「ブランド・歴史」「ネットワーク」などを書き出す
    • 客観的に見て強みになりそうな部分に印をつける
  6. 【Company】弱みや課題を洗い出し、優先順位をつける
    • SNS運用が苦手、人手不足、売掛金管理など気になる点をすべて挙げる
    • 明らかに売上や顧客対応に影響する“上位3つ”を決めて、来週までに何ができるか考える

PDCAサイクルとの組み合わせで持続的に改善

3C分析は一度やって終わりではありません。むしろ、日々変化する顧客ニーズや競合戦略に合わせて定期的に見直すべきです。

そのために有効なのが、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルとの組み合わせです。

  • Plan(計画)
    3C分析の結果を踏まえ、「どの顧客層に、どんな施策を打つか」を計画
  • Do(実行)
    広告キャンペーン、SNS強化、スタッフ教育など計画した施策を実行
  • Check(検証)
    売上や問い合わせ数、顧客の反応などを計測し、施策の効果を評価
  • Act(改善)
    実行結果をもとに再度3Cを見直し、新たな計画につなげる

「数カ月に一回は、顧客の反応や競合の動向、自社リソースの状況を見直す」というサイクルを作ってしまえば、常に今の自社にとって最適な戦略をアップデートし続けることが可能となります。

まとめ

3C分析は、決して大げさな戦略論ではありません。
顧客の声を聞き、競合をリサーチし、そこから見えてくる自社の強みを活かす――そのための一連の作業をシンプルに整理したのが3Cのフレームワークです。

  • Customer(顧客):明日からでも顧客リストを作ってみる。トップ顧客の声を聞く。SNSで潜在顧客の課題を探る。
  • Competitor(競合):競合企業のWebやSNSをチェック。既存顧客から得られる他社比較の情報を大切に。
  • Company(自社):人材・技術・ブランド・ネットワークなどの強みを棚卸し。弱みは外部リソースで補う。

特に中小企業は経営資源が限られている分、「どこで勝負するか?」の絞り込みがといても重要になります。

3C分析を活用すれば、自社に合う戦い方・成長の仕方が見つけやすくなります。そしてそれを実行していく中で、常に検証・改善を繰り返すことで「生きた戦略」となっていくのです。

「3C分析って、何をやればいいかピンとこない…」という方は、本コラムで挙げた小さなToDoリストのいずれか一つでもいいので試してみましょう。

すぐには大きな成果が出なくとも、顧客の本音や競合の意外な弱点、自社の強み再発見など、少しずつ変化が見えてきます。その積み重ねが、持続的な成長を生む戦略づくりの土台となるはずです。

私たち唐澤経営コンサルティング事務所では、「コーチング」と「コンサルティング」を組み合わせ、中小企業の経営課題解決と成長戦略の策定を強力にサポートいたします。

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この記事を書いた人

唐澤 智哉

新卒で大手金融系シンクタンクに入社し、大手企業向けのITコンサルティングに従事。その後、2社のコンサルティングファームにて、大手企業向けの業務改革・ITコンサルティングに従事。
2012年に大手IT企業に入社し、中小企業向けのコンサルティング事業の立ち上げの中心メンバーとして事業化までを経験し、10年間中小企業向けの経営コンサルティング・ITコンサルティングや研修・セミナーに従事。
その後、2022年に唐澤経営コンサルティング事務所を創業。中小企業向けの経営コンサルティング、DXコンサルティング、研修・セミナー等のサービスを提供している。
趣味は読書で、年間200冊近くの本を読む。