唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。

このコラムでは、私のコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。

中小企業の経営者の方々からよく耳にするのが、「せっかく経営計画を立てても、日々の業務に追われて気づけば放置してしまう」というお悩みです。とくに近年は、市場の変化が激しく、人材不足や経済環境の不透明さが続くなど、多くの経営者にとって厳しい状況が当たり前になりつつあります。

しかし、経営計画を「形だけ」立てて終わらせるのではなく、「実行に移し、着実に結果を出す」ことこそが企業の成長に直結します。

そこで本記事では、経営計画を前に進める進捗管理のポイントを5つ、実務目線でお伝えします。

ツールや仕組みは高価なものだけが選択肢ではありません。シンプルな工夫で、明日からでもすぐに始められる方法をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

ポイント1:数値でわかる目標設定とシンプルな見える化

まず重要なのは、「計画の達成状況が数字でわかる状態」をつくることです。

「売上を伸ばす」「顧客満足度を上げる」などの抽象的な目標は方向性としては正しい一方、どこまで達成できたかが曖昧になりやすいというデメリットがあります。

そこで、次のように「誰が見ても一目で判断できる数字」に落とし込んでみましょう。

  • 「月末までに売上〇万円を達成する」
  • 「新規顧客を月〇社増やす」
  • 「在庫の滞留期間を〇日短縮する」

数字で目標を示すことで、社内の共通認識が得やすくなります。

いま自分たちが「あとどれだけ頑張ればいいのか」を客観的に確認できるため、個々の行動にも具体性が生まれます。

■シンプルな見える化のポイント

  • Excelやスプレッドシートを利用して、目標と実績を時系列で整理する
  • 色分けや簡単なグラフを使って、達成状況を視覚的に把握できるようにする

高機能なITツールが必須というわけではありません。まずは自前の資料を整え、「目標に対してどこにギャップがあるのか」を確認できる状態をつくることが最優先です。

ポイント2:経験や勘に頼りすぎない!データ活用で客観性を確保

経営判断の際、「長年の勘や経験」による洞察は大事です。しかし、勘だけに頼りすぎると、社内での進捗確認や改善の方向性が属人的になりがち。

そこで注目されているのが、データを補助ツールとして活用する方法です。

中小企業でも、以下のような取り組みはすぐに始められます。

  • 売上やコスト、顧客数などの基本的な数字を定期的に集計する
  • 手頃な会計ソフトや顧客管理ソフトを導入し、必要なデータをすぐ取り出せるようにする

「今月は計画より〇%遅れている」「在庫が目標より〇個多い」などの差を客観的に把握できれば、改善すべきポイントが自然と見えてきます。

経験とデータの両輪で考えることで、ブレの少ない進捗管理が可能になります。

ポイント3:必要なら外部の力をうまく借りる

限られた人材や時間であらゆる課題に対応しようとすると、どうしても手が回らなくなることがあります。そんなときは、外部リソースを活用する柔軟な発想を持ちましょう。

  • 公的支援策の活用
    国や自治体では、中小企業向けに補助金・助成金の支給や無料相談など、さまざまな支援制度を用意しています。こうした制度を利用すれば、進捗管理に役立つツール導入やコンサルタントの協力を、比較的安価に始められます。
  • 中小企業向けの専門家に相談
    経営コンサルタントや税理士、社労士といった専門家が、第三者の視点で状況を客観的に分析してくれます。何がボトルネックになっているのかをはっきりさせることで、施策の優先順位も明確になります。

自社だけで抱え込まず、必要な部分だけ外部に任せるという選択肢を上手に使うことで、限られた経営資源を最大限に活かすことができます。

ポイント4:「報告のための会議」から卒業!短くて有意義なコミュニケーション

進捗管理は、「経営者が一方的に数字を詰める場」になってしまうと、社内全体のモチベーションを下げる要因にもなります。大切なのは、チームで問題点を共有し、改善策を探るための機会として活用することです。

ただし、会議が長引きすぎたり、結局報告だけで終わってしまったりすると逆効果です。
以下のように、短時間でも意味のあるコミュニケーションに変えてみましょう。

  • 定例ミーティングはあらかじめ情報を共有
    「今週・今月の進捗状況」をExcelやホワイトボードにまとめ、事前に参加者が確認できるようにしておく
  • ポイントを絞った話し合い
    「どこで計画が遅れているのか?」「原因は何か?」「解決策は?」といった議題を20分〜30分程度で集中して議論し、次のアクションを決める

ポイント5:「できなかった」を次の改善につなげるPDCAサイクル

どれだけ綿密に立てた計画でも、100%思い通りに進むことはほとんどありません。そこで役立つのが、PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回して、うまくいかなかった部分を次に活かすアプローチです。

  • Plan(計画)
    目標を数字化すると同時に、失敗した場合の判断基準も設定します。
    例:「売上が〇%に届かなかったら販売戦略を見直す」など。
  • Do(実行)
    いきなり全社導入ではなく、まずは一部部署や限定的な範囲で試してみる。小さく始めることで、想定外の問題を事前に発見しやすくなります。
  • Check(評価)
    数字だけでなく、「なぜ想定通りにいかなかったのか?」を事実ベースで確認し、具体的な原因を洗い出します。
  • Act(改善)
    すぐに改善策を実行し、次の計画(Plan)に反映させます。「在庫管理シートの作り直し」「仕入れ先との納期調整」など、具体的な行動を明確にします。

PDCAは難しい理論や特別なツールがなくても、「問題を見つける→試す→評価する→直す」を繰り返すだけのシンプルな枠組みです。日々の業務に小さく取り入れる習慣が身につくと、失敗すら貴重な学びに変わっていきます。

まとめ

経営計画を立てるだけで満足してしまい、結果的に「やりっぱなし」で終わってしまう。

多くの中小企業にとって、これは避けたいシナリオではないでしょうか?

しかし今回ご紹介した5つのポイントを押さえるだけで、計画は絵に描いた餅ではなく、着実に前進する実践プランへと変貌します。

  1. 数値でわかる目標設定と見える化
  2. データ活用による客観性の確保
  3. 必要に応じた外部リソースの活用
  4. 短くて有意義なミーティングによるチーム巻き込み
  5. PDCAサイクルで失敗を次のアクションへ反映

これらは、大企業だけの話ではありません。特別なシステムを導入しなくても、「いまある環境」で少しずつ実践できるポイントばかりです。

「うちには人もお金も足りない」と諦める前に、まずは一つずつ試してみてください。漠然としていた計画が、具体的な行動につながり、手応えと成果をともなって前進しはじめるはずです。ぜひ明日からの経営に活かしていただければ幸いです。てみてください。

これまで漠然としていた計画が、確実に前進し始めるのを感じられるはずです。

私たち唐澤経営コンサルティング事務所では、「コーチング」と「コンサルティング」を組み合わせ、中堅中小企業の経営課題解決と成長戦略の策定を強力にサポートいたします。

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この記事を書いた人

唐澤 智哉

新卒で大手金融系シンクタンクに入社し、大手企業向けのITコンサルティングに従事。その後、2社のコンサルティングファームにて、大手企業向けの業務改革・ITコンサルティングに従事。
2012年に大手IT企業に入社し、中小企業向けのコンサルティング事業の立ち上げの中心メンバーとして事業化までを経験し、10年間中小企業向けの経営コンサルティング・ITコンサルティングや研修・セミナーに従事。
その後、2022年に唐澤経営コンサルティング事務所を創業。中小企業向けの経営コンサルティング、DXコンサルティング、研修・セミナー等のサービスを提供している。
趣味は読書で、年間200冊近くの本を読む。