唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。
このコラムでは、私のコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。
電子取引データの保存義務化は2022年1月1日から開始されましたが、企業の対応準備期間として、2023年12月31日までの2年間、電子保存が困難な事業者に対して書面での保存を認める「宥恕(ゆうじょ)措置」が設けられていました。
しかし、2024年1月1日以降、電子取引データの電子保存が義務化され、対応が遅れると罰則リスクが高まります。
本日はすでに2025年1月を迎えていますが、もし適切な対応を行っていない場合は、適切な対応を行っていない場合、以下のような罰則が科される可能性があります。
- 青色申告の承認取り消し:電子取引データを適切に保存していない場合、青色申告の承認が取り消される可能性があります。
- 追徴課税:電子データの改ざんや隠蔽が発覚した場合、重加算税が課される可能性があります。
- 会社法違反による過料:帳簿や書類の保存義務違反は、会社法第976条により100万円以下の過料が科される可能性があります。
一方で、請求書電子化は単なる法対応の手段としてだけでなく、業務効率化を進める有力な方法としても注目されています。紙の請求書にかかる印刷・郵送・保管の手間を削減し、電子化によって迅速かつ簡潔な取引を実現できるのです。また、環境負荷の軽減や企業イメージの向上といった副次的なメリットも享受できます。
本記事では、請求書電子化の基本的な仕組みや具体的なメリット、電子帳簿保存法への対応方法、そしてスムーズな移行を進めるためのステップまでを詳しく解説します。
2025年現在、業務効率化と法令遵守の両立を目指す企業にとって、今からでも遅くはありません。ぜひ本記事の内容を参考に、最適な対策を検討してみてください。
請求書電子化の基本
請求書電子化とは、紙の請求書を電子データとして作成・保存・管理する仕組みです。これは単なるデジタル化ではなく、業務効率化や法令対応を進めるうえで重要なステップとして、多くの企業に注目されています。
特に2024年以降、電子帳簿保存法への完全対応が必須となっており、業務改善と法令遵守の両方を実現するために請求書電子化の導入が強く求められています。
請求書電子化の定義と背景
請求書電子化とは、従来の紙ベースの請求書をPDFなどの電子データとして作成・送付・保存するプロセスを指します。印刷や郵送、保管にかかる手間とコストを削減できるのはもちろん、取引先とのやり取りを迅速化し、業務全体の効率を向上させるメリットがあります。
近年は電子帳簿保存法やインボイス制度の導入を背景に、多くの企業が請求書電子化に移行しています。特に、法的要件を満たした形で電子データを保存することで税務調査におけるリスクを回避できる点が、今なお注目されています。
なぜ請求書電子化が注目されるのか?
先述のとおり、2024年から電子帳簿保存法への完全対応が義務化されたことが大きな理由です。電子取引データを保存しない、あるいは紙媒体だけで保管しようとする場合は法令に違反するリスクが高くなります。
また、社会全体のデジタル化や働き方改革の進展に伴い、請求書電子化は「効率化」と「環境配慮」の両面からも評価されています。ペーパーレス化を進めることで紙資源の使用を抑制し、企業の持続可能性の向上に寄与する姿勢を示せるため、企業価値の向上にもつながります。
電子帳簿保存法との関係性
電子帳簿保存法は、電子取引データを法的に有効な形で保存するための基準を定めた法律です。この法律に基づき請求書を電子化する場合、以下の要件を満たす必要があります。
- 改ざん防止措置:タイムスタンプの付与やシステムログの保存など、データの改ざんを防止する仕組みを整備すること
- 検索機能の確保:取引年月日や金額、取引先名で迅速にデータを検索できる機能を備えること
- システムの信頼性:適切なセキュリティ対策と運用ルールを導入し、税務調査にも対応可能な体制を構築すること
これらの要件を満たさない場合、電子データ保存が無効とされる可能性があります。
請求書電子化は、業務効率化だけでなく法令遵守と企業価値向上を実現するためにも、電子帳簿保存法の要件を確実に満たす形で導入することが不可欠です。
請求書電子化のメリット

請求書の電子化は、コスト削減や業務効率化、さらには環境への配慮や法令対応など、さまざまなメリットをもたらします。
以下では代表的な利点を解説します。
業務効率化とコスト削減
請求書を電子化することで、印刷、郵送、保管など従来の紙ベースで発生していた手間を大幅に削減できます。
保管スペースの有効活用
紙書類を保管する場所が不要になるため、オフィススペースを圧迫せずに済みます。また、データの一元管理により、検索や修正、再発行といった対応が迅速に行えるのも大きなメリットです。
印刷費や郵送費の削減
紙の請求書を発行するための用紙やインク、郵送費用が不要になります。特に近年の郵便料金の値上げは企業にとって大きな負担となっていますが、電子化によりこのコストを削減できます。
紙請求書のデメリットを解消
紙の請求書は紛失や破損といったリスクがあり、探し出すにも時間がかかります。
電子化によりデータのバックアップを行うことで、紛失・破損リスクを大幅に低減できます。また、税務調査や内部監査の際にも、必要なデータをすぐに抽出できるため、対応がスムーズになります。
環境への配慮と企業イメージ向上
ペーパーレス化によって、印刷用紙やインクの削減、郵送時のCO2排出削減にもつながります。
環境配慮が注目される今、エコへの取り組みを積極的に行う企業は、取引先や顧客からの評価が高まる傾向があります。社会的責任(CSR)の観点からも、請求書電子化は企業価値の向上に寄与するといえるでしょう。
電子帳簿保存法の対応方法

2024年1月から電子帳簿保存法への完全対応が求められるようになり、すべての企業が電子取引データを適切に保存しなければならなくなりました。猶予措置が2023年末で終了したことに伴い、2025年の今、未対応で放置していると大きなリスクを抱えることになります。
電子帳簿保存法の経緯
電子帳簿保存法は1998年に導入され、デジタル化の進展に合わせて改正が繰り返されてきました。2022年に電子取引データの保存が義務化されましたが、中小企業を含む事業者への配慮として2023年末までは猶予措置が取られていました。
これが終了した2024年1月以降は、データを法的要件に基づいて保存しない場合、税務調査で指摘されるリスクが一気に高まります。
具体的な影響
- 請求書の管理が変わる
紙での保管だけでは法令上認められず、電子データとして保存する必要があります。PDF請求書やクラウド上の請求書データを紙に出力して保管するだけでは不十分です。 - 領収書の電子化が必須に
オンラインで発行されたりメールで受け取ったりした領収書も、電子取引データとして扱われるため、電子データのまま保存しなければなりません。 - 紙と電子のハイブリッド対応が必要になる
紙の請求書を発行し続ける取引先がある場合、紙と電子の両方を管理する体制が必要です。スキャン保存を行う場合でも、改ざん防止措置など法的要件を満たす仕組みづくりが求められます。 - データ保存の仕組みが変わる
タイムスタンプの付与、システムログの記録、検索機能の確保など、電子データ特有の要件への対応が必要になります。
対応を進めるための具体的ステップ
- 現状の保存方法を確認
請求書や領収書をどのように管理しているのか洗い出し、紙保存が中心の場合は早急に電子保存への移行準備を進めます。 - 法的要件を満たした保存体制を構築
クラウド型の電子保存サービスや専用ソフトを導入して、改ざん防止や検索機能を満たす仕組みを整備します。 - 社員教育を実施
請求書や領収書を取り扱う部署を中心に、電子データ保存のルールや操作方法について周知徹底します。 - 定期的な監査と改善
保存体制が法的に適正かを随時確認し、改善やシステム更新を行います。
電子帳簿保存法対応を進めるメリット
電子帳簿保存法への対応は、罰則リスクを避けるだけでなく、業務効率化やコスト削減、取引先・顧客からの信頼向上といった二次的効果も期待できます。未対応が続くと税務リスクのみならず、競争力の低下や企業イメージの悪化につながりかねませんので、早めの対策が重要です。
詳細な要件や最新情報は、国税庁の公式ページを必ず確認しましょう。
請求書電子化を進めるためのステップ
請求書の電子化は、効率的かつ確実に実行することで、業務負担の軽減と法令遵守を同時に達成できます。
以下では、スムーズに移行するための具体的な段階を示します。
電子化のための社内準備と体制構築
請求書電子化を成功させるためには、まず社内の準備を整える必要があります。
- 現状プロセスの洗い出し
紙の請求書がどのように発行・受領・保管されているかを確認し、非効率な部分を特定します。 - 電子化の目的を明確化
「コスト削減」「法令遵守」「業務効率化」など、電子化の狙いを明確にし、全社的に周知します。 - プロジェクトチームの編成
経理やIT担当者など、部署横断的なチームをつくり、電子化プロジェクトを進めます。
電子請求書発行ツールの選び方と活用法
- 必要な機能を整理
タイムスタンプや検索機能など、電子帳簿保存法に対応した機能があるかを確認します。 - クラウド型ツールの検討
クラウド型は初期導入コストが低く、リモートワークにも対応しやすいという利点があります。 - 主要ツールの比較検討
無料トライアルを活用し、自社業務に最適なツールを選定します。
移行期間中に注意すべきポイント
- 必要な機能を整理
タイムスタンプや検索機能など、電子帳簿保存法に対応した機能があるかを確認します。 - クラウド型ツールの検討
クラウド型は初期導入コストが低く、リモートワークにも対応しやすいという利点があります。 - 主要ツールの比較検討
無料トライアルを活用し、自社業務に最適なツールを選定します。
Q&A
Q1. 紙請求書との併用は可能ですか?
A. 可能です。ただし、電子帳簿保存法を遵守するためには、紙の請求書をスキャンしてタイムスタンプ付与などの改ざん防止措置を講じ、検索機能を確保した上で電子データとして保存する必要があります。
Q2. 取引先が電子請求書に対応していない場合、どうすれば良いですか?
A. まずはコスト削減や効率化など、電子請求書のメリットを丁寧に説明し、合意形成を図りましょう。どうしても難しい場合は、一定期間紙と電子を併用し、段階的に移行を進めるのが現実的です。
Q3. 請求書データのセキュリティはどう確保すれば良いですか?
A. 改ざん防止のための仕組みやアクセス権限管理、定期的なバックアップなどが必要です。また、社員へのセキュリティ教育(パスワード管理やフィッシング対策の周知など)も重要になります。
Q4. 法対応が遅れるとどうなりますか?
A. 2024年以降は法令違反として税務調査の指摘や罰則の対象となる可能性が高まります。また、取引先からの信頼失墜につながる恐れもあり、早めの対応が求められます。
Q5. 中小企業でも電子請求書を導入できますか?
A. はい、クラウド型サービスなどを活用すれば、比較的低コストかつ簡単に導入可能です。操作性が高く、電子帳簿保存法の要件を満たすツールも多く提供されています。
まとめ
請求書の電子化と電子帳簿保存法への完全対応は、2024年以降すべての企業に求められる重要な課題です。
2025年を迎えた今、その対応が不十分な状態を放置すると、税務調査での指摘や罰則リスクに加え、取引先や顧客からの信頼低下を招く可能性もあります。
一方で、請求書の電子化を適切に進めれば、法令遵守のみならず、コスト削減、業務効率化、環境負荷の軽減、企業イメージの向上など、多方面のメリットが得られます。これを「やらなければならない法対応」だけでなく、「会社を成長させるチャンス」と位置づけ、ぜひ前向きに取り組んでみてください。
今後も法改正や運用ガイドラインの更新が進む可能性があるため、国税庁の公式ホームページを随時チェックし、最新の要件にあわせて社内ルールやシステムをアップデートしていきましょう。
DXの具体的な進め方やツール選定、社内体制づくりなど、お悩みやご不明点がありましたらお気軽にご相談ください。唐澤経営コンサルティング事務所では、中小企業診断士・ITストラテジストとして、中小企業の規模や業種に合わせた最適なアドバイスとサポートを行っています。
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