唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。
このコラムでは、私のコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。
「売上を伸ばすために何をすればいいのか?」——この問いに対し、多くの中小企業が試行錯誤を重ねています。しかし、営業活動をただ闇雲に続けるだけでは、リソースを効率的に活用できず、競争激化の中で埋もれてしまう可能性があります。
そこで必要なのが、明確な「営業戦略」です。
営業戦略は、単なる売上目標の設定に留まらず、どの顧客層に、どのような価値を、どのような方法で提供するかを具体的に描く設計図のようなものです。これを基盤として活動を進めることで、限られたリソースを最大限に活かし、目標達成の確率を飛躍的に高めることが可能になります。
本記事では、中堅中小企業が直面しやすい営業の課題を解決し、持続的な成長を実現するための営業戦略の基本から実践的なポイントまでを詳しく解説します。
今すぐ取り組めるアイデアや、実際の現場で役立つヒントをもとに、貴社の営業活動を次のステージへと引き上げましょう。
営業戦略とは何か?

営業戦略とは、自社の売上や利益を持続的に伸ばすために、市場や顧客、競合を分析し、自社のリソースを最適に配分するための方針・計画のことです。
単純に「たくさん売る」といった表面的な目標だけではなく、どの顧客層に対して、どんな強みを武器に、どんな方法で接触し、どんな価値を提供するかを明確化するプロセスが重要となります。
中堅中小企業の場合、人材・資金・時間などのリソースが限られていることが多いです。だからこそ、自社の強みを的確に把握し、魅力を発揮できるターゲットに集中するという営業戦略がカギになります。
セグメンテーションとターゲティング

営業戦略を考える際、まずは「セグメンテーション(市場の細分化)」と「ターゲティング(優先順位付け)」を行いましょう。
- セグメンテーション
市場全体を年齢層、業界、地域、ニーズなどの基準で細分化し、グループ分けする。- BtoBであれば「製造業」「サービス業」「小売業」などで分ける。
- BtoCであれば「ファミリー層」「学生」「シニア」などターゲット特性で分類。
- ターゲティング
細分化した市場の中から、どのターゲット層を優先的に狙うかを決定する。- 自社の強みを最大限活かせるセグメントかどうかを見極めるのがポイント。
- 例)アフターサービスに強みがある企業なら、「サービス品質を重視する客層」を狙う。
中堅中小企業の場合、特定の業界や地域に深く根ざすことで競合と差別化が図りやすくなります。やみくもに「全方位を狙う」のではなく、「ここなら勝ち筋がある」と自信を持てるニッチなセグメントを探り当てることが重要です。
顧客ニーズの理解
次に、ターゲット顧客の抱える課題やニーズを深く理解することが欠かせません。顧客がどのような苦労をしていて、何を解決したいのかを把握することで、提供価値の方向性が明確になります。
- ヒアリングと観察
- アンケートや個別インタビューなどで生の声を聞く。
- 実際の現場を訪れ、顧客の行動や使い方を観察する。
- 既存顧客のデータ分析
- 既存顧客の購買履歴や問い合わせ内容から、よくある課題や不満点をリストアップ。
- 同じような課題を抱えていそうな見込み客へアプローチする。
このように顧客のニーズを把握することで、「どんな提案をすれば自社の強みと合致し、より魅力的に映るのか」が見えてきます。価格だけでなく、品質やアフターサービス、納期など、顧客が求めるポイントを整理しましょう。
自社ならではの価値提案(USP)の確立
営業戦略においては、自社ならではの価値(USP:Unique Selling Proposition)を明確に示すことが重要です。USPとは、競合他社にはない、または他社より優れている点のことです。
例としては以下のようなものが挙げられます。
- アフターサポートの徹底
- 商品・サービスの独自性
- 地域密着のきめ細やかな対応
- 創業以来の実績やノウハウ
USPが曖昧だと、顧客にとっては「どこの会社でも似たようなもの」と判断されやすく、価格競争に巻き込まれがちです。逆にUSPがしっかり打ち出されていれば、価格だけに依存しない営業活動が可能となります。
営業プロセスの設計

営業活動を効率化し、成果を最大化するためには、営業プロセスを設計し、それを「型」として運用することが大切です。
代表的なプロセスは以下のようになります。
- リード獲得(見込み客リストの入手)
- セミナーや展示会への出展、Webサイト経由の問い合わせ、紹介など、多角的なチャネルを活用。
- アプローチ(接触)
- メール、電話、SNS、訪問などで見込み客と初回接触し、興味や関心を喚起。
- ニーズのヒアリング・提案
- 顧客の課題を深く探り、具体的な提案を行う。
- 提案内容は顧客の状況や予算に合わせて最適化する。
- フォローアップ
- 提案後の質問や要望に速やかに応え、信頼関係を築く。
- クロージング・受注
- 最終的に価格や納期などの条件を調整しながら契約へ導く。
- アフターサポート
- 契約後も継続的にフォローし、追加受注や口コミ紹介につなげる。
以上のプロセスを「見える化」し、チーム全体で共有することで、誰がどの段階で、何をすべきかが明確になります。属人的な営業から脱却し、組織として成果を出すための基盤づくりとして極めて重要です。
KPI管理とPDCAサイクル

営業活動の成果を上げるためには、定量的な指標(KPI)の設定と定期的なモニタリングが不可欠です。
代表的なKPIには以下のようなものがあります。
- アポイント数
- 提案数
- 受注率
- 平均受注単価
- 顧客満足度
これらの数値を定期的に確認し、営業活動全体の改善を図ることがポイントです。営業担当者ごとの数値も把握し、PDCA(Plan→Do→Check→Action)サイクルをまわしましょう。
- Plan(計画):受注率向上のために、提案内容やアプローチ方法を変更する計画を立案。
- Do(実行):計画を実際の営業活動で試し、実行する。
- Check(検証):アポイント数や受注率が改善したかどうかをデータで検証。
- Action(改善):結果に応じて次のアクションを決定し、再度Planを練る。
特に中小企業はリソースが限られるため、できるだけ早いサイクルで少しずつ改善を積み上げることが重要です。
PDCAサイクルについては以下の記事でも解説していますので、もしよろしければお読みください。
チームマネジメントとモチベーション
営業戦略をいくら立派に作り上げても、それを実行する人材の意欲と能力が伴わなければ成果は出ません。以下の点に留意してチーム全体を活性化させましょう。
- 目標の共有
- 「なぜこの売上目標を追うのか」「どんな意義があるのか」をチーム全員に共有し、納得感を高める。
- メンバーの強みを活かす配置
- 得意分野や人脈が活きる担当先をアサインし、成果を上げやすくする。
- 定期的なフィードバックと評価
- 営業活動の進捗や成果を定期的にレビューし、具体的なフィードバックを行う。
- 成果だけでなく、行動を正しく評価し、モチベーションを維持する。
また、チーム内の連携がとれている企業は、個別の担当者が難しい案件に直面した際にサポートし合える体制があります。人材育成とチーム連携を同時に進めることが、営業戦略の実行力を高めるカギです。
Q&A
Q1. 営業戦略を作るのに、まず何から手をつければよいですか?
A. まずは自社の現状分析と目標設定から始めてください。現状分析では、自社の強み・弱み、市場の状況、競合の動向などを洗い出し、自社がどこで戦うべきかを明確にします。そのうえで、「売上」や「新規顧客数」「既存顧客のリピート率」など、具体的な目標を設定しましょう。
Q2. セグメンテーションがうまくいかない場合の対処法は?
A. 分類が大雑把すぎたり、一方で細かすぎたりする場合が多いです。まずは顧客がどんな基準で商品やサービスを選んでいるのかをリサーチし、それをベースに分類項目を考えるとスムーズです。既存顧客へのヒアリングや、競合のターゲット選定方法を参考にするとよいでしょう。
Q3. 営業担当者が足りず、個別対応に手が回りません。
A. 中小企業ではよくある課題です。プロセスの標準化や、テンプレート化できる部分は徹底的にテンプレートを作成し、担当者がコア業務に集中できるようにしましょう。また、外注や業務委託、デジタルツールの活用(メール自動送信システム、CRMなど)も検討してください。
Q4. 価格競争に巻き込まれやすいのですが、どうすれば回避できますか?
A. 価格以外の価値要素を前面に打ち出すことが大切です。自社のUSP(独自の強み)を明確化し、品質・アフターサポート・コンサルティングなど、顧客にとってのメリットを提示しましょう。すべてが「安さ」重視の顧客だけを相手にするのではなく、別の価値を重視する顧客層を見極めるのも手です。
Q5. KPIをどう設定すればよいかわかりません。
A. まずは営業プロセスの各段階に着目し、ボトルネックを明らかにすると設定しやすくなります。リード獲得→商談→受注までのプロセスで、どこに課題があるのかを確認しましょう。たとえば「商談数が少ない」ならアポイント件数、「受注率が低い」なら提案内容の質やクロージング率など、各ステップに合わせたKPIを設定します。
Q6. 営業組織が属人的で、ノウハウが継承されません。
A. 営業プロセスのマニュアル化と、顧客情報のデータベース化が重要です。トップ営業マンのトークスクリプトやプレゼン資料、FAQなどをドキュメントとして蓄積し、誰でもアクセスできるようにしましょう。定期的な勉強会やロールプレイも効果的です。
まとめ
中堅中小企業が営業戦略を成功させるためには、「どの顧客層に何を提供するのか?」という軸を明確にし、プロセスと数字をしっかり管理しながら、チーム全体で改善に取り組む必要があります。
限られたリソースを最大限活かすためにも、セグメンテーションとターゲティングの徹底、USPの強化、KPI管理とPDCAサイクルの運用、そしてチーム連携がポイントとなります。日々の営業活動を“思い付き”で行うのではなく、あらかじめ決めた戦略・計画に基づいて実行し、定期的に修正を加えていく姿勢が大切です。
本コラムの内容を参考に、自社の営業活動を見直し、着実な成果を上げる土台を築いていただければ幸いです。ビジネスの成長をサポートする営業戦略を構築し、中小企業ならではの強みを活かしながら、あなたの事業を次のステージへと引き上げていってください。
それが、会社をさらに強くし、未来に向けて成長するための最善の方法です。
私たち唐澤経営コンサルティング事務所では、「コーチング」と「コンサルティング」を組み合わせ、中堅中小企業の営業戦略の立案を強力にサポートいたします。
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