唐澤経営コンサルティング事務所の唐澤です。中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定などのコンサルティングに従事してきました。
このコラムでは、私のこれまでのコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。。
中堅中小企業を経営者するあなたにとって、日々の経営判断は決して容易なものではありません。会社を率いていると、限られたリソースの中で「どの市場を攻めるべきか」「競合優位をどう築くか」といった重大な決断を下す場面に直面するでしょう。「競合に遅れを取りたくない」「収益をもっと伸ばしたい」と考えていても、日常業務に忙殺されるうちに経営の大きな方向性を見失ってしまうケースは少なくありません。
そこで重要になるのが、企業を導く「戦略」という羅針盤です。戦略は単なる目標リストではなく、市場や顧客を的確に見極めながら、競争で勝つための明確な方針を示すもの。明確な戦略があれば、経営判断のプレッシャーを軽減しつつ、組織全体をひとつの方向に統率できます。
本記事では、戦略の本質を「幹」と「枝」に分けて解説し、中小企業がすぐに活かせる実践的な構築方法をお伝えします。この記事を読み終えた後には、自社の未来を切り開くための戦略フレームワークがしっかりとイメージできるようになるはずです。ぜひ、これを機に戦略的な経営へと一歩を踏み出しましょう。
戦略の幹:核となる3つの要素

戦略は企業の「幹」であり、戦略は「方向性の決定」「競合優位の設計」「資源配分の決定」の3要素から構成されます。

要素①:方向性の決定(Where to play)
最初のステップは、「どこで勝負するか?」を明確にすることです。これは市場・顧客層・地域・製品やサービス領域などを見極め、自社のリソースを集中させるための重要な決断となります。方向性が定まっていないと、企業の軸がブレてしまい、競合他社に差をつけることが難しくなります。
■具体例
- 市場の選定: 「国内の中小製造業向けソリューションに特化」「欧州の高級車市場への参入」
- 顧客層の選定: 「30代のミレニアル世代のオンライン購買層を重点顧客に設定」
- 製品の絞り込み: 「手頃な価格帯のサブスクリプション型ソフトウェアに注力」
明確な方向性を打ち出すことで、限られたリソースを最大限に活用できるようになります。
要素②:価値創造・競合優位の設計(How to win)
次に「どのように勝つか?」を具体化します。競合との価格競争に巻き込まれないよう、技術力・ブランド・顧客体験など独自の競争優位を設計することがカギです。
■具体例
- 差別化: 「独自デザインを武器にブランドロイヤルティを向上」
- 技術力: 「先端技術の活用で他社を圧倒する性能を実現」
- ブランド力: 「サステナビリティを全面的に打ち出し、社会的信用を高める」
自社の強みを活かし、顧客が「選ばずにはいられない価値」を提供できるかどうかが勝負の分かれ目となります。
要素③:資源配分の決定(Allocation of resources)
最後に、「どのリソースをどこに投入するか?」を決めましょう。企業のリソースであるヒト・モノ・カネ・時間を有効に活用するためには、メリハリある配分が不可欠です。
■具体例
- 研究開発に注力: 「新製品・新サービス開発に年間予算の30%を投入」
- チャネル強化: 「デジタルマーケティングに人的リソースを集中」
- 時間の使い方: 「経営陣の会議時間の半分を戦略検討に充当」
過度な分散は競争力を弱める原因になります。選択と集中の視点で、リソースを最適に配分することが重要です。
戦略の枝:幹を支える補助要素

「戦略の幹」が定まったら、これを現場に落とし込んで成果を出すための「枝」(補助要素)が必要です。
「枝」は、「環境分析」「組織デザイン」「業務プロセス」「リスクマネジメント」「継続的フィードバック」の5つから構成されます。これらがしっかり機能してこそ、戦略の効果を最大限に引き出せます。

補助要素①:環境分析
戦略を正しく打ち立てるうえで欠かせないのが、外部環境の的確な把握です。PEST分析(政治・経済・社会・技術)や5フォース分析等のフレームを活用して、業界動向、競合状況、顧客インサイトなどを多角的に調査しましょう。
■具体例
- 技術革新が業界に与えるインパクトの予測
- 顧客の嗜好変化をデータで分析し、新製品開発に反映
- 競合他社の強み・弱みをリストアップし、差別化要素を明確化
このプロセスを経ることで、戦略の幹を育てる「土壌」が整います
補助要素②:組織デザイン
素晴らしい戦略があっても、組織が機能しなければ実行は困難です。戦略の方向性や資源配分に沿って、組織構造、人材配置、報酬制度、企業文化などを調整し、全社員が一丸となって動ける体制を作ります。
■具体例
- 戦略に合わせた新規部門・プロジェクトチームの編成
- 社員の目標を会社の戦略と連動する制度設計
- 改革を妨げる古い慣習の廃止や、風土改革
組織全体が同じベクトルに向かうように整えることが、戦略実行を成功させる肝です。
補助要素③:業務プロセス
戦略は具体的な行動計画に落とし込み、日々の業務の中で実行されてこそ成果につながります。サプライチェーンの再構築、デジタル化による効率化など、オペレーション面の最適化を検討しましょう。
■具体例
- サプライチェーン改革でコスト削減と納期短縮を同時に実現
- オンライン販売チャネルを強化し、顧客接点を拡大
- デジタルツール導入による生産性向上と人件費の最適化
オペレーションと戦略をしっかりと連動させることで、目に見える成果が生まれます。
補助要素④:リスクマネジメント
経営環境は常に変化しています。外部要因(景気変動・技術革新など)や内部要因(人材不足・組織の抵抗など)によるリスクを見越し、ガバナンスを強化する取り組みが必要です。
■具体例
- 市場変動に応じて迅速に戦略を修正できる意思決定プロセス
- 内部監査やコンプライアンス体制の強化による不正リスクの低減
- BCP(事業継続計画)策定で災害や緊急事態への備え
リスクを最小化しつつ、柔軟性のあるガバナンス体制を構築することで、戦略の“幹”を長期的に支えられます。
補助要素⑤:継続的フィードバック
最後に欠かせないのが、PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回していくプロセスです。市場や競合環境は変化が激しいため、定期的にKPIをモニタリングし、必要に応じて戦略をアップデートする習慣を持ちましょう。
■具体例
- 月次・四半期ごとのKPIレビューで戦略の進捗をチェック
- 顧客アンケートやデータ分析から新たな戦略ヒントを獲得
- 経営会議で柔軟に軌道修正を図り、次のアクションを決定
こうした継続的なフィードバックループこそが、戦略を時流に合った形で進化させ、成果を最大化する原動力となります。
戦略策定を成功させるには:5つのポイント
戦略を策定し、実行で成果を出すためには、以下のポイントを押さえると効果が高まります。
- 経営者の強いリーダーシップ
- 経営者が自らビジョンを掲げ、組織全体に共有する。
- 中長期視点の重要性を社内で徹底する。
- 客観的視点の活用
- 外部コンサルタントや専門家の知見を取り入れる。
- 社内だけでは見えにくい課題やトレンドを把握できる。
- 実行可能性を重視した計画
- 達成可能な短期・中期・長期目標を設定。
- リソースや組織力を踏まえ、無理のないスケジュールを組む。
- 進捗管理と柔軟な修正
- 定期的にモニタリングを行い、KPIをチェック。
- 環境変化や組織の声を踏まえて素早く修正する仕組みを整備。
- 社員の巻き込みと一体感
- 戦略の意義やゴールを全員が理解し、共有できる場を設ける。
- 成果に応じた評価や報酬制度を取り入れ、モチベーションを高める。

Q&A
Q1: 戦略と計画の違いは何ですか?
A: 戦略は「どの方向に進むか?」「どのように勝つか?」を示す大きな指針です。一方、計画は戦略を実行するための具体的なアクションプランを指します。戦略がなければ、計画は単なる作業リストに過ぎません。
Q2: 中小企業でも戦略が必要ですか?
A: 必要です。特に中小企業では、経営資源が限られているため、適切な戦略がなければ成果を最大化できません。戦略は、限られた資源を最も効果的に活用するための道標となります。
Q3: 戦略策定にどれくらいの時間をかけるべきですか?
A: 時間のかけ方は企業の状況によりますが、短期的な成果を追い求めるだけでなく、長期的な視点で戦略を策定することが重要です。専門家の支援を受けられれば、効率的かつ効果的に進めることができます。
Q4: 戦略を実行に移す際に重要なポイントは何ですか?
A: 実行可能性を考慮した現実的な計画作りと、社員を巻き込むことが重要です。また、進捗を定期的に管理し、柔軟に修正する仕組みを持つことで、戦略の成功率が上がります。
Q5: 戦略策定において外部の専門家を活用すべき理由は?
A: 外部の専門家は、企業内では気づきにくい課題を発見し、客観的な視点から解決策を提案できます。また、業界全体の動向を踏まえたアドバイスを提供し、実行まで伴走してくれる点がメリットです。
まとめ
戦略は企業の「幹」であり、そこには「方向性の決定」「競合優位の設計」「資源配分の決定」の3要素が凝縮されています。そしてこの幹を支える「枝」である「環境分析」「組織デザイン」「業務プロセス」「リスクマネジメント」「継続的フィードバック」が機能してこそ、戦略の真価が発揮されます。
- 方向性(Where to play)
→ どの市場・顧客に注力するかを明確化 - 競合優位の設計(How to win)
→ 自社が選ばれる理由を徹底的に磨く - 資源配分(Allocation of resources)
→ ヒト・モノ・カネ・時間を最適に振り分け、成果を最大化
戦略を策定したら終わりではありません。実行の過程で検証を行い、状況に応じて修正を加えていくことで、環境変化の激しい時代に対応できます。
唐澤経営コンサルティング事務所では、中小企業が抱える経営課題を解決すべく、「コーチング」と「コンサルティング」を組み合わせたアプローチで、戦略策定から実行支援まで一貫してサポートしております。初回のご相談は無料ですので、次の一歩を踏み出したいと思われたら、ぜひお気軽にご連絡ください。
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