唐澤経営コンサルティング事務所の唐澤です。中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定などのコンサルティングに従事してきました。
このコラムでは、私のこれまでのコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。
中小企業の経営者のみなさま、日々の営業活動でこんな課題を抱えていませんか?
- 「もっと売上を増やしたい」
- 「新規のお客さまを獲得したい」
- 「利益率をもう少し改善したい」
大企業であれば豊富な資金力や人材を投下できますが、中小企業ではどうしても限られた経営資源(資金・人材・時間など)で勝負しなければなりません。だからこそ、「最も効果が高い営業戦略を見極め、そこに経営資源を集中する」ことが重要です。しかし、「営業戦略」というと何やら難しく聞こえるかもしれません。専門用語や大企業向けのノウハウが多く、「うちのような小さな会社で本当に実行できるの?」と不安になる方もいらっしゃるでしょう。
本コラムでは、そのような不安をもつあなたに向けて、中小企業でもすぐに実践しやすく、成果が出やすい「営業戦略トップ5」をご紹介します。実際に成果を上げた成功事例とともに、なぜうまくいったのか、どんなポイントがカギだったのかを分かりやすく解説いたします。最後には、すぐに取り組めるシンプルなアクションプランやチェックリストもまとめていますので、ぜひ自社に取り入れてみてください。
なぜ中小企業で「営業戦略」が重要なのか?

「営業戦略」とは、「自社の商品やサービスを、どの顧客層に、どのように売り込んでいくかを設計し、実行するための仕組み」を指します。これを明確にすることで、以下の大きなメリットが得られます。
- 限られた資源の最大活用
中小企業は資金や人材が十分ではないからこそ、集中すべきターゲットを明確にすることが必須です。戦略的に取り組めば、小さなリソースでも大きな成果が期待できます。 - 自社の強みを正しく打ち出せる
自社の強み・弱みを整理した上で、市場のニーズとマッチさせることで、競合との差別化が図りやすくなります。 - 将来に向けた方向性が定まりやすい
「長期的にどう成長するのか?」という視点を取り入れることで、売上拡大だけでなく経営基盤の強化にもつながります。
営業戦略トップ5:概要と成功事例

ここからは、中小企業でも取り組みやすく、効果が期待できる代表的な営業戦略を5つ紹介します。それぞれ具体的な成功事例を交えながら、「なぜうまくいったのか?」「成功のカギは?」を解説します。
戦略①:ニッチ市場への集中戦略
- 概要
競合が激しい巨大市場に参入するよりも、需要はあるのに競合が少ない「ニッチ市場」に狙いを定め、徹底的に攻める方法です。ブルーオーシャン戦略の一種とも言えます。自社の特化領域が明確なほど、高単価でも購入してくれる可能性が高まります。- 活用フレームワーク:SWOT分析
- S (Strength):強み
- W (Weakness):弱み
- O (Opportunity):機会
- T (Threat):脅威
- 活用フレームワーク:SWOT分析
- 成功事例:A社(塗料メーカー)
- 企業概要:従業員約20名。大手塗料メーカー出身の社長が経営。
- 課題:家庭用塗料に参入したものの、大手との価格競争で利益率が低迷。
- 戦略実行
①自社独自の強みを洗い出す(特殊塗料や工場向け塗料のノウハウ)
②競合が少ない特定業界の工場向けをターゲットに「ニッチ市場」を設定
③営業リソースをターゲット企業の開拓に集中
- 成果:価格競争から離脱し、1年後の営業利益が前年比約+15%を達成。
- 成功のカギ
- 大手が狙わないニッチ分野で勝負し、価格競争を回避
- 自社の強み(特殊塗料の知見)を最大限に活用
- ターゲットを絞り込むことで営業労力が分散しない
- シンプルアクションプラン
①自社の強みを整理(特殊技術、知見など)
②ニッチ市場の候補をリストアップし、市場規模と利益性を試算
③実際にアプローチする企業リストを作成
④一気通貫で営業をかける(展示会出展、DM、訪問など)
戦略②:既存顧客への深耕営業戦略
- 概要
新規顧客の獲得には広告・営業費用がかかりますが、すでに取引のある既存顧客への追加提案やアップセル、クロスセルは費用対効果が高いのが特徴です。顧客あたりの生涯価値(LTV)を高めることで、長期安定に繋がります。 - 成功事例:B社(農家・直販事業)
- 企業概要:米や野菜を生産し、直売所や道の駅で販売。代表は若い世代。
- 課題:直売の売上が伸び悩み、リピーターがいるものの購入点数が少ない。
- 戦略実行:
①アンケートや顧客ヒアリングを実施し、普段の食生活や購入タイミングを把握。
②「旬の野菜セット」「特別栽培セット」などの定期購入コースを導入(アップセル)
③野菜に合う調味料も同梱できるクロスセル商品を企画。
- 成果:1人あたりの購入金額が1.3倍に増加し、リピーターも拡大。安定的な売上基盤を築くことに成功。
- 成功のカギ
- 顧客ニーズを直接吸い上げる(アンケートやヒアリング)
- アップセル・クロスセルによる客単価アップ
- 定期購入の仕組みでリピート率を高めた
- シンプルアクションプラン
①既存顧客リストを整理し、上位顧客をランク付け
②アンケート調査で「次に欲しいもの」「不便を感じている点」を特定
③上位プラン(アップセル)や関連商品(クロスセル)**のアイデアを考案
④定期購入プランを試作し、営業トークを用意
戦略③:デジタルマーケティング活用戦略
- 概要
SNS広告や検索連動型広告など、少額から始められてターゲティング精度が高いのがデジタルマーケティングの強みです。特に中小企業にとっては、地域や特定のニーズに絞った集客がしやすいメリットがあります。 - 活用フレームワーク:AIDA(アイダ)モデル
- A (Attention):注意を引く
- I (Interest):興味を持たせる
- D (Desire):欲求を喚起
- A (Action):購買や問い合わせにつなげる
- 成功事例:C社(整骨院)
- 企業概要:開業3年で法人化、スタッフ4名。
- 課題:周辺に似た業態が増え、チラシや看板を出しても効果が薄い。
- 戦略実行:
①地域限定のFacebook広告を活用。「肩こりでお困りの方へ」と悩みに訴求。
②広告からLP(ランディングページ)へ誘導し、院内紹介や利用者の声を掲載
③初回限定クーポンを提示(Desireを喚起)。
④オンライン予約で即時行動を促す。
- 成果:広告費月数万円でも新規患者が毎月20~30人増加し、売上前年比+25%を達成。
- 成功のカギ
- ターゲット地域・悩みを細かく設定して広告配信
- AIDAモデルに沿ったLPデザイン
- オンライン予約システム導入でアクションハードルを下げる
- シンプルアクションプラン
①狙うターゲット層・地域を明確化
②SNS広告や検索広告を少額からテスト配信
③ホームページや予約導線を整備(スマホ最適化必須)
④広告反応をみながらPDCAを回し、改善を続ける
戦略④:提案型営業戦略
- 概要
「モノを売る」のではなく、顧客の課題を深くヒアリングし、「解決策」を提示する営業手法です。価格競争から脱却し、付加価値で勝負できるメリットがあります。中小企業ならではの柔軟性やきめ細やかな対応が強みになるはずです。 - 成功事例:D社(システム開発)
- 企業概要:設立5年、従業員10名。社長は大手SIer出身。
- 課題:受託開発の価格競争が激化し、利益率が下がっていた。
- 戦略実行:
①顧客の事業モデルや課題を徹底ヒアリング。
②「予約の先行受付機能」「ポイント管理機能」など、顧客の売上増につながる仕組みを提案。
③運用サポートや定期レポートをセットにし、継続課金モデルを確立。
- 成果:顧客は売上アップを実感し、高めの開発費+保守費用で契約を獲得。社員待遇も改善。
- 成功のカギ
- 顧客のビジネス全体を理解し、課題解決を優先
- 開発後の運用サポートまで含めた長期契約
- 価格ではなく成果・価値を前面に出す
- シンプルアクションプラン
①ヒアリングシートを作成し、顧客の課題とゴールを定義
②顧客視点で売上向上・コスト削減の具体策を複数検討
③単発ではなく保守・コンサル込みの提案プランを作る
④実績事例や数字を提示し、提案の説得力をアップ
戦略⑤:戦略的アライアンス(提携)営業戦略
- 概要
自社と補完関係にある企業や、異業種の会社と手を組み、お互いの顧客層やサービスを共有・拡大する戦略です。単独では届かなかった市場にアプローチでき、双方にメリットをもたらします。 - 成功事例:E社(工務店)× F社(家具店)
- 企業概要:
- E社:地元密着の工務店、従業員8名。フットワークが軽い。
- F社:地域商店街で人気の家具店。社長はPR上手。
- 企業概要:
- 課題:
- E社:大手ハウスメーカーに流れがちでリフォーム受注が伸びない。
- F社:競合チェーン店の台頭で価格競争が激化。
- 戦略実行:
①「リフォーム+家具一式」のオールインワンプランを共同開発。
②折込チラシやSNSで共同キャンペーンを周知。
③紹介制度を整備し、E社がリフォーム見積りを取る際にF社のパンフを同封。F社の店頭でもリフォーム相談を受付。 - 成果:リフォーム依頼の約3割が家具セットを同時購入。相乗効果で売上拡大。メディアにも取り上げられて認知度が向上。
- 成功のカギ
- 補完し合える関係を構築(建築×家具の相性)
- 共同キャンペーンで費用とメリットをシェア
- 顧客導線を一元化し、お客さまに“ワンストップ”の利便性を提供
- シンプルアクションプラン
①提携候補リストを作り、相性の良い業種を洗い出す
②提携プランの大枠を作り、双方にメリットがあるか検討
③収益配分や費用負担を明確化
④共同PRでSNSや地元メディアを積極活用
Q&A
Q1. ニッチ市場を攻める際の市場調査はどうすればいいですか?
A. まずは業界紙や統計データ、業界団体のレポートを参照しましょう。可能であれば実際にその市場にいる顧客や競合を観察し、現場の声を聞くことが重要です。小規模なアンケートやヒアリングでも有益な情報が得られます。
Q2. 既存顧客への深耕営業をしたいが、顧客リストが整備されていません…
A. まずはExcelや顧客管理ツールなど、今すぐ使える方法で構いませんので、顧客情報を体系的に整理してください。取引履歴や購入頻度が分かるだけでも、アップセルやクロスセルのヒントを得られます。
Q3. デジタル広告に踏み出したいけれど、予算が限られています。何から始めるべきでしょうか?
A. 最初は少額での検索連動型広告(Google Ads など)やSNS広告から始めましょう。月数万円規模で小さく運用し、結果を見て調整することで、無駄なコストを抑えられます。
Q4. 提案型営業に興味はあるが、人員が足りません…
A. 提案型営業ではヒアリング力が鍵です。まずは既存スタッフの提案スキルを磨くことを優先し、定型ヒアリングシートを作成するなど、業務を仕組み化すると効率が上がります。必要に応じて部分的に外部コンサルや専門家を活用するのも手です。
Q5. アライアンスを組む相手にどう声をかければいいかわかりません…
A. まずは軽いコラボ企画や、紹介から始めるのも良い方法です。お互いの顧客を少しずつシェアできないか、SNSでの相互告知など小さな施策から提案してみましょう。小さく成果を出せれば、本格的な提携話もスムーズに進みます。
まとめ:まずは一歩踏み出そう
本コラムでご紹介した「営業戦略トップ5」は、いずれも限られたリソースで成果を上げやすい方法です。一気に全部を導入する必要はありません。まずは「自社に合いそう」と感じるものから取り組んでみてください。
- 行動→検証→改善というサイクルを回しながら、自社にフィットした形へアレンジしていく
- デジタルマーケティングや提案型営業は慣れが必要だが、継続すれば必ず効果が見えてくる
- 外部の専門家やコンサルタント、行政機関の無料相談なども積極的に活用し、スピード感を持って取り組む
中小企業の強みは、大企業と比べて「意思決定から実行までのスピードが速い」ことです。経営者がその気になれば即日スタートできる施策も多くあります。ぜひ本稿のアイデアをヒントに、自社ならではの独自戦略を進めてみてください。
もし「もっと詳しくサポートしてほしい」「自社に合ったプランを一緒に考えてほしい」といったご要望があれば、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの会社が、さらに大きく躍進することを心から応援しています!
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