唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。

このコラムでは、私のコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。

企業の経営方針をまとめる際や、提案書・商品紹介・広報資料などを書く場面で、「文章をどのようにまとめるか」に苦労される経営者や管理職の方は多いのではないでしょうか?実際、書き上げた文章を後から見直すと「あれ、やけにわかりにくいかもしれない」「もっとスッキリ伝えたいんだけど、これでいいのか?」などと感じることがあると思います。

こうした文章の推敲・修正を、素早く・効率的に行えるのがChatGPTの魅力です。

ChatGPTはAIが入力された文章を分析し、指定したスタイルやトーン、用途に合わせて書き換えの提案をしてくれます。もちろん、完全にAIに丸投げするのではなく、最終チェックや事実関係の確認は人間が行う必要がありますが、それでも「短時間で文章のクオリティを大幅に高められる」点は、経営者や管理職にとって心強い助っ人になるはずです。

本コラムでは、長年にわたって経営支援の現場で培ってきたノウハウを踏まえつつ、ChatGPTを使った文章書き換えの具体的なテクニックを解説します。「文章をもっとわかりやすくしたい」「社内報や社外向け資料を簡潔にまとめたい」という方にとって、すぐに使える実践的な内容をまとめましたので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

ChatGPTがもたらす「書き換え革命」

AI技術が切り拓く新たな文章推敲の方法

近年、AI技術の急速な進化によって、ビジネス現場での文章作成やコミュニケーション手段が大きく変わりつつあります。ChatGPTは、アメリカのOpenAIが開発した対話型AIであり、文章生成だけでなく、既存の文章の書き換えや要約、トーン調整などを得意としています。

ChatGPTを活用することで、

  • 時間のかかる推敲作業の効率化
  • 誤字脱字やわかりにくい表現の補正
  • トーンやスタイルの自動変換による“雰囲気の大きな変更”

といった大幅な作業時間短縮と品質向上が期待できます。

中堅中小企業がChatGPTを活用するメリット

中小企業庁「令和4年版中小企業白書」によれば、デジタル技術を活用して生産性向上を図る中小企業が年々増加しているという調査結果があります。とりわけ文章作成に時間を割く余裕がない企業にとっては、ChatGPTの導入が大きな強みとなるでしょう。

具体的には、以下のメリットがあります。

  1. 経営者や管理職の時間節約:提案書やプレゼン資料を効率よく仕上げられる。
  2. クオリティアップ:文章がわかりやすくなることで、社内外への説得力や信頼感が向上。
  3. コミュニケーション円滑化:社員向けの指示文やお知らせ、マニュアルがより伝わりやすくなる。

ChatGPTを使う前に押さえておきたい文章の書き換え基本ステップ

ChatGPTは非常に便利ですが、闇雲に使うだけでは効果を最大化できません。まずはビジネス文書の「書き換え基本ステップ」を押さえておきましょう。

目的と読み手の再確認

  • 誰に向けた文章か(顧客・取引先・自社社員・メディアなど)
  • 何を伝えたいか(製品・サービスの優位性、プロジェクトの進捗、会社の理念など)
  • どんな印象を与えたいか(フォーマル、カジュアル、感情に訴える、データ重視など)

以上を明確にしておかないと、ChatGPTに指示を出す際に「求めるトーンや内容」が定まりません。

文章を構造的に分解する

提案書なら「背景」「課題」「提案内容」「費用対効果」「導入スケジュール」「締めくくり」といった要素に分割し、一つずつを推敲していくイメージです。文章全体が「どの部分に何を書いているか」が把握できていれば、ChatGPTに指示を与える時も「このセクションだけ口調を変えて」といった使い方がしやすくなります。

冗長表現や曖昧表現の削除

  • 「〜していただくことが可能であると思われます」→「〜できます」
  • 「昨今の社会情勢においてどのように活用されるか、今後検討していく予定です」→「社会情勢を考慮しながら、今後の活用を検討していきます」

このように、不要な語句や回りくどいフレーズは削除、短縮した方が読みやすくなるケースが多々あります。

ChatGPTを活用した書き換えテクニック・具体例

ここからは、実際にChatGPTを活用してどのように文章を変えられるか、より多様な事例を示します。経営者や管理職の方が直面しそうなシチュエーションを想定していますので、自社に合わせて応用してみてください。

ビジネスメールをフォーマルに整える

■社内のフランクな文面→上司に提出する報告メール

  • 元文章
    「お疲れさまです。昨日の打合せの件なんですが、ちょっとトラブル発生したのであした詳しく報告します。ご迷惑かけてスミマセン。」
  • ChatGPTへの指示(例)
    「以下の文章を、上司へ報告するフォーマルな文面に書き換えてください。簡潔かつ敬語を適切に用いてください。」
  • 出力イメージ
    「お疲れ様です。昨日の打ち合わせに関しまして、トラブルが発生いたしました。詳細は明日、改めてご報告いたします。この度はご迷惑をおかけし、申し訳ございません。」

このように、ChatGPTに依頼するだけで口語的なフレーズがかしこまった言い回しに変わり、ビジネスの場に適したメールになります。

顧客に送る提案書の文章をより“攻め”のニュアンスにする

相手の購買意欲を高める文章

  • 元文章
    「弊社の新サービスは、導入が簡単で使いやすいです。興味があればぜひ検討してみてください。」
  • ChatGPTへの指示(例)
    「以下の文章を、顧客の購買意欲を高める説得力あるトーンに書き換えてください。ビジネス文書らしいフォーマルさも維持してください。」
  • 出力イメージ
    「弊社の新サービスは、導入が非常に簡単で、操作性にも優れております。貴社の業務効率化に大きく貢献できると確信しておりますので、ぜひ前向きにご検討いただければ幸いです。」

「前向きにご検討いただければ幸いです」といった表現を追加することで、相手に“検討しよう”と思わせるニュアンスが強まります。

社内研修用資料をわかりやすく簡潔にする

■専門用語を砕き、理解しやすい表現に

  • 元文章
    「我が社のDX(Digital Transformation)は、ITインフラの整備とデータドリブンな意思決定を組み合わせることによって新たな価値創造を目指すものであり、競合他社との差別化要因となり得る。」
  • ChatGPTへの指示(例)
    「以下の文章を、専門用語を噛み砕いて、経営知識が乏しい人にもわかりやすい表現に書き換えてください。砕きすぎずビジネス文書の基調は保ってください。」
  • 出力イメージ
    「弊社が取り組んでいるDX(デジタル技術を活用した業務変革)は、IT環境を整備し、データにもとづいた判断を行うことで新たな価値を生み出す取り組みです。これにより、競合他社との差別化が期待できます。」

DXを(デジタル技術を活用した業務変革)と簡単な注釈を入れるなど、ChatGPTに「専門用語をわかりやすくして」と伝えるだけでも、随分印象が変わります。

カジュアルなSNS投稿文→広報・PR向けの文章にアップグレード

■InstagramやFacebookの投稿文からプレスリリース風に

  • 元文章
    「みんな、いつもありがとう!新しいスイーツを開発したんで、ぜひ食べてほしいです。めっちゃオススメ!」
  • ChatGPTへの指示(例)
    「以下の文章を、企業のプレスリリースとして掲載できるような文面に書き換えてください。ビジネス向けの客観的トーンを意識してください。」
  • 出力イメージ
    「日頃より皆様のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。この度、新作スイーツを開発いたしましたので、ぜひ皆様にお試しいただきたく存じます。素材の風味を最大限に活かした自信作となっておりますので、どうぞご期待ください。」

文章を長く深堀りして説明したい場合

ChatGPTは「短くまとめる」だけでなく、あえて「より詳しく説明する」書き換えにも対応できます。

■簡潔な表現を丁寧に補足

  • 元文章
    「このソフトウェアを使えば業務効率が上がります。ご検討ください。」
  • ChatGPTへの指示(例)
    「以下の文章に、具体的な導入効果や期待されるメリット、使用方法の概要などを加えて、より詳細に説明する文章に書き換えてください。」
  • 出力イメージ
    「このソフトウェアを導入することで、作業手順の自動化やデータの一元管理が可能となり、業務全体の効率を大幅に向上させる効果が期待できます。具体的には、日常的なデータ入力が容易になるほか、必要な情報をワンクリックで検索できる機能を備えております。短期間でのセットアップが可能なため、スムーズに運用を開始していただけます。ぜひ貴社の業務改善に向け、ご検討いただければ幸いです。」

複数のリライト指示をまとめて出す

実務では「語調を丁寧に」「文量を減らす」「箇条書きを増やす」といった複数の要望を同時に出すケースもあるでしょう。

  • 元文章
    「うちのサービスは、幅広い業界で使われてるんですよ。それでみんな満足してるって言ってくれてるんですよね。」
  • ChatGPTへの指示(例)
    「以下の文章について、
  1. 全体を敬語にする
  2. 主張が伝わるようにややフォーマルな口調にする
  3. 誤字脱字を補正する
  4. 箇条書きを用いて具体的なメリットを示す
    という4点を同時に実施した書き換えを行ってください。」
  • 出力イメージ
    「弊社のサービスは、さまざまな業界で導入され、多くのお客様から高い評価をいただいております。主なメリットは以下の通りです。
    • 幅広い分野に対応可能な柔軟性
    • 操作しやすい設計と充実したサポート体制
    • 導入後のアフターケアの充実による顧客満足度の向上
      今後とも、より多くの企業のニーズに応えられるよう努めてまいります。」

書き手独自の表現を活かしつつ補足する

ChatGPTを使うと、どうしても無難な表現にまとまりがちと感じる方もいます。その際には「○○という表現は残してほしい」「表現の個性を維持しつつ、フォーマルさを追加してほしい」といった具体的な指示をすると良いでしょう。

  • 元文章
    「この新製品、言葉にできないくらい凄いんですよ!もっと多くの人に使ってもらいたいなぁ、なんて思います。」
  • ChatGPTへの指示(例)
    「以下の文章について、書き手の個性的な表現はできるだけ残しつつ、社外向けに失礼のないトーンに書き換えてください。『言葉にできないくらい凄い』という表現は必ず使ってください。」
  • 出力イメージ
    「この新製品は、言葉にできないくらい凄い性能を備えております。ぜひ多くの方にその魅力を実感していただきたいと考えております。今後さらなる改良も予定しておりますので、どうぞご期待ください。」

書き手が「残したいフレーズ」を指示することで、個性を損なわずにブラッシュアップできます。

中堅中小企業が文章を書き換えることの意義

  1. 社内コミュニケーションの円滑化
    経営者や管理職がまとめた文章は、社内通達やマニュアルとして使われることも多いでしょう。ここで曖昧な表現や冗長表現が多いと、現場が混乱してしまう原因になります。ChatGPTを使って短時間で書き換え、何が言いたいかを明確にするだけで、業務のスピードも上がります。
  2. 社外向け資料の質向上による信頼獲得
    提案書や契約書、カタログなど、外部とやり取りする文書の質が高いと、それだけで「この会社はきちんとしている」「信頼がおけそうだ」という印象を与えます。一度作った資料をChatGPTで推敲し、より緻密かつ説得力のある表現にすることで、商談の成約率アップやブランドイメージ向上が期待できます。
  3. 時間の有効活用
    多忙な経営者や管理職にとって、文章の推敲にかける時間はできるだけ短縮したいところ。ChatGPTの力を借りれば、書き直し作業の大半を自動化し、最終チェックに集中できます。これは経営判断を素早く行う上でも大きなアドバンテージとなります。

まとめ

ChatGPTを活用した文章の書き換えは、これまで時間と労力をかけていた推敲作業を劇的に効率化し、クオリティを向上させる手段として大いに注目されています。とりわけ中堅中小企業がビジネスを展開していくうえで、

  • 文章によるコミュニケーションの質が高まる
  • 資料作成のスピードアップによる生産性向上
  • よりプロフェッショナルな印象を社内外に与えられる

といった具体的なメリットが見込めます。

ただし、AIが作成した文章をそのまま信用するのではなく、人間が最終的な内容チェックをすることは忘れてはいけません。誤字脱字や事実誤認はAIにも起こり得ますし、表現の微調整は読み手の背景をよく知る人間でなければ行いづらい部分があります。

特に経営者や管理職の方は、自社の理念や製品の強み、ビジョンなどをよく理解しています。ChatGPTの出力をうまく取り込みながら、最後の「ひと手間」を加えることで、文章の魅力と説得力は格段に高まるでしょう。

20年のコンサル経験を通じて私が実感してきたのは、「文章がわかりやすい会社は業績が伸びやすい」ということです。提案書にせよ、ホームページの説明文にせよ、伝わりやすい表現を使える会社ほど、ビジネスチャンスを逃しにくい傾向があります。ぜひChatGPTを味方につけて、「わかりやすく、伝わりやすい文章作り」を実現していただきたいと思います。

なお、生成AIについては以下の記事でも解説していますので、もしよろしればお読みください。

DXの具体的な進め方やChatGPTの活用方法など、お悩みやご不明点がありましたらお気軽にご相談ください。唐澤経営コンサルティング事務所では、中小企業診断士・ITストラテジストとして、中堅中小企業の規模や業種に合わせた最適なアドバイスとサポートを行っています。

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この記事を書いた人

唐澤 智哉

新卒で大手金融系シンクタンクに入社し、大手企業向けのITコンサルティングに従事。その後、2社のコンサルティングファームにて、大手企業向けの業務改革・ITコンサルティングに従事。
2012年に大手IT企業に入社し、中小企業向けのコンサルティング事業の立ち上げの中心メンバーとして事業化までを経験し、10年間中小企業向けの経営コンサルティング・ITコンサルティングや研修・セミナーに従事。
その後、2022年に唐澤経営コンサルティング事務所を創業。中小企業向けの経営コンサルティング、DXコンサルティング、研修・セミナー等のサービスを提供している。
趣味は読書で、年間200冊近くの本を読む。