唐澤経営コンサルティング事務所の唐澤です。中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定などのコンサルティングに従事してきました。
このコラムでは、私のこれまでのコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。。
近年、国内外の経営環境は想像を超えるスピードで変化しています。IT技術の革新、新たな市場の出現、そして感染症や地政学リスクなどによる予測不可能な社会情勢──これらの変化は常に、経営者に対して「迅速かつ的確な意思決定」を迫ります。こうした不確実性が高い時代に、経営者にはどのような心構えと戦略が求められるのでしょうか?
本コラムでは、私の経営コンサルタントとしての経験と実績をもとに、「コーチング×コンサルティング」という新たなアプローチを解説します。コーチングによる「人の力を引き出す技術」と、「コンサルティングによる経営戦略・仕組みづくり」の両面を使い分けることで、不確実性の高い経営環境を勝ち抜くヒントをつかんでいただければ幸いです。
なお、本コラムの内容に関する解説をYouTubeでご覧いただけますので、ぜひ以下の動画をご覧ください。
不確実な時代を生き抜くための視点

変化が「前提」となる時代へ
かつては「変化」に柔軟に対応できる企業が競争優位を築く時代でした。その前提は現在の企業経営においても同じなのですが、大きな違いは、もはや「変化そのものが常態化」してしまっている点です。過去の成功体験に固執していると、気づかないうちに周囲から取り残されるリスクが大幅に高まるのが現在の経営環境です。変化のスピードが速い時代には、従来の「過去の延長線上で考える経営戦略」では対応がしづらくなってきています。
「自己変革」の重要性
こうした環境下では、外部環境に応じて組織や人材が自ら学習し、戦略を修正していく「自己変革力」が大きなカギを握ります。経営者がトップダウンで「とりあえず新制度を導入しよう」「最新ITシステムを導入しよう」と号令をかけても、実際に使いこなす人材や組織の土壌が整っていなければ、結局は形骸化してしまうことが多いのです。
私がこれまでコンサルティングを行ってきた中堅中小企業でも、経営者が前向きな改革案を提示していても、現場で「やり方がわからない」「忙しくて新しい取り組みにかける余裕がない」といった理由で対策が進まず、頓挫するケースを何度も目にしてきました。逆に、組織全体が「自分たちの強みや課題を主体的に見つめ、問題解決の方法を自分たちで考える」ようになると、多少遠回りに見えても着実に変化できる体質が育まれます。
「コーチング×コンサルティング」のアプローチとは?

コーチングの目的:組織の自律性を高める
コーチングとは、本来クライアント自身が持っている潜在力を引き出し、自ら考えて行動を起こせるようにサポートする手法です。これはスポーツ界だけでなく、ビジネスの世界でも有効とされています。例えば、部下が単なる「指示待ち」状態になっていないか、リーダーシップを発揮するべき中間管理職が自分の役割を認識しているか──そうした問題を明確にし、本人が主体的に行動を起こすための働きかけを行うのがコーチングの特徴です。
コンサルティングの役割:具体的な戦略策定と仕組みづくり
一方でコンサルティングは、経営戦略の策定や業務プロセスの最適化など、具体的な問題解決や計画立案を担う役割があります。例えば、「新規事業を立ち上げたい」「マーケティング手法を見直したい」といった明確な課題に対して、専門知識やフレームワークを用いて具体的な方向性や実行プランを提示するのがコンサルティングの強みです。
両者の「いいとこ取り」をするメリット
コーチングとコンサルティングの両方を適切に組み合わせることで、「組織の自主性を高めつつ、経営の羅針盤となる指針・仕組みを提供できる」点が最大のメリットとなります。単なるコンサルティングだけでは「指示待ちの状態が固定化する」リスクがありますし、コーチングだけでは「抽象的な会話の先にある具体的戦略が描ききれない」可能性が否めません。両者を適切に取り入れることで、経営トップから現場までが同じゴールに向かいながら、自ら考え行動する組織へと進化していくのです。つまり、両者を組み合わせることで、「何をすべきか」という方向性を明確に示しつつ、「どのように実行すべきか」をクライアント自身が主体的に考える環境を作ることが可能になるのです。
「コーチング×コンサルティング」を活かしたアプローチ

- 課題目標設定
自社の本質的な課題に気づくサポートを行います。「あなたが感じている問題の本質は何でしょうか?」「理想の状態とはどのようなものですか?」といった問いかけを通じて、課題を深掘りします。 - 課題解決策の立案
一方的な提案ではなく、クライアントと協働して解決策を模索します。「市場トレンドを考えると、このような方向性はどうでしょうか?」「この施策を実行する上でどんな不安がありますか?」といった対話を通じ、具体的かつ納得感のある解決策を共創します。 - 計画の実行
実行段階では、「うまくいった要因は何でしょうか?」「課題が発生した場合、どのような改善策が考えられますか?」といった問いかけを行い、クライアント自身が継続的に改善を実践できるよう支援します。
実践事例
事例1:老舗製造業の事業承継を支援 – 社長の使命感と幹部の共感を醸成
創業50年以上の歴史を持つ製造業のA社(仮名)の事例です。
二代目の社長である60歳手前のB社長は、業績の停滞と社員のモチベーション低下に悩んでいました。娘婿を社員として迎え、10年後の事業承継を視野に入れていましたが、現状のままでは次世代に盤石な基盤を残せないと感じており、当事務所への相談に至りました。様々な対話(コーチングやヒアリングを含む)を通じて、問題の本質は経営理念の形骸化にあると考えました。先代が作った経営理念が社員に浸透しておらず、社長の考えが明確に伝わっていない状況だったのです。
そこで、B社長の幼少期の原体験から現在までの経験を遡りながら、会社の使命(ミッション)を明確化するためのコーチングを実施しました。社長の根源的な思いや価値観を深く掘り下げることで、会社の存在意義を改めて見つめ直したのです。次に、明確化されたミッションを基に、幹部社員を交えたディスカッションを行いました。娘婿も参加する中で、社長の思いを共有し、会社の進むべき方向性について議論を重ねました。その結果、幹部社員たちは社長のミッションに深く共感し、責任感が高まったと言います。
この変革や当事務所のコンサルティングプロセスを経て、A社では新たなサービスが立ち上がり、現在展開中です。B社長からは、「会社全体の士気が向上した」という報告を受けています。過去の原体験まで遡るコーチングは、表面的なコンサルティングでは見つけられない、組織の深い部分からの変革を促す可能性があります。
事例2:自信の欠如に悩む管理職女性の主体性を開花
当事務所のサービス「パートナー型経営コンサルティング」をご契約いただいているC社(仮名)では、サービス内で社員向けのコーチングの申し込みを受け付けています。その過程で、ある管理職の女性がコーチングを申し込んできました。内容は「自分で意思決定ができず、上司に頼ってしまう」という悩みでした。彼女は自信のなさをその理由として挙げていました。
彼女にコーチングを行う中で、彼女自身も気づいていなかった根本的な原因が明らかになりました。それは、「学生時代まで進路の全てを親に決められてきた経験」だったのです。しかし、話を聞いていくと、社会人になってからは転職も経験し、資格取得にも挑戦するなど、自らキャリアを切り開いてきた事実がありました。私は彼女に、「これまでのキャリアは主体的な選択の連続であり、素晴らしい実績である」と伝えました。また、「物事は10回やって9回失敗するのが当たり前。1回の成功で大成功だ」という話をしました。」
この言葉は彼女にとって大きな気づきとなり、「目から鱗だった」と語っていました。それ以来、彼女は予算達成に向けて積極的に行動するようになり、多少の失敗を恐れずに挑戦する姿勢が身につきました。その後、彼女から「自分の強みに気づき、一歩踏み出せるようになった」という報告を受けています。彼女は、自身では無意識だった主体的な行動を認識し、自信を取り戻したのです。
これらの事例は、答えのない現代において、企業や個人が自ら考え、行動する力を引き出すために、コーチングとコンサルティングの組み合わせが有効であることを示唆しています。もし、貴社においても経営上の課題や人材育成に関するお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。
コーチング×コンサルティングが最適な方
- 現状打破を望む経営者やリーダー 「何をすべきか分からない」「道筋は見えるが進め方が不明」といった方に最適です。
- 社員の主体性や組織の一体感を高めたい経営者 トップダウン型組織に限界を感じている方に、社員が主体的に動く文化づくりを支援します。
- 事業承継に悩む家族経営者 後継者や関係者とのコミュニケーションを改善し、自身の経営方針を明確にしたい方に有効です。
まとめ
不確実性が常態化した現代の経営環境では、変化に柔軟かつ迅速に対応できる組織づくりが不可欠です。そのためには、単なるトップダウンの戦略導入ではなく、組織全体が自律的に変化を起こす「自己変革力」を養う必要があります。
本コラムで紹介した「コーチング×コンサルティング」のアプローチは、組織の自主性を引き出しつつ、具体的な経営戦略と実行の仕組みを同時に提供する画期的な手法です。実際の事例でも見られたように、この組み合わせは組織の本質的な課題に深く切り込み、社員の主体性や組織の一体感を高め、持続的な変革を可能にします。経営者やリーダーの方々が自ら変化を主体的に捉え、組織の未来を積極的に切り拓いていくために、「コーチング×コンサルティング」が最強の武器となることを確信しています。
私たちが提供するこの新しいアプローチは、まさに中堅中小企業が不確実な時代を勝ち抜くためのカギとなります。本コラムの冒頭でもご紹介しましたが、詳しい解説をYouTubeでご覧いただけます。変化を主体的に捉え、組織の未来を自ら切り拓きたいとお考えのみなさまは、ぜひ以下の動画をご覧ください。
私たち唐澤経営コンサルティング事務所では、「コーチング」と「コンサルティング」を組み合わせ、中堅中小企業の経営課題解決と成長戦略の策定を強力にサポートいたします。経営に関するご相談や無料相談をご希望の方は、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。

経営者が抱える経営課題に関する
分からないこと、困っていること、まずはお気軽にご相談ください。
ご相談・ご質問・ご意見・事業提携・取材なども承ります。
初回のご相談は1時間無料です。
LINE・メールフォームはお好みの方でどうぞ(24時間受付中)