唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。
このコラムでは、これまでのコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。
現代は「VUCA時代」と呼ばれ、不確実性と複雑性が一層高まる環境にあります。
こうした時代において、企業経営者に求められるのは、「答えのないゲーム」に挑み続ける姿勢です。従来のように唯一の答えを求めるのではなく、仮説を立て、それを実行しながら最適解を見つけていく力が不可欠となっています。
こうした経営環境の変化に対応するため、私たちは「コーチング」と「コンサルティング」を組み合わせた独自のコンサルティングアプローチを採用しています。このアプローチを通じて、経営者自身が主体的に考え、行動し、成果を生み出せるよう全力でサポートしています。
本記事では、VUCA時代における経営の基本的な考え方や具体的なアプローチについて解説します。
不確実な時代を生き抜くためのヒントとして、ぜひお役立てください。
VUCA時代におけるビジネス環境の変化

現代はVUCA(ブーカ)時代と言われます。VUCAとは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語で、未来予測が難しい現代の不確実で複雑な社会を表す言葉です。
かつての昭和時代の日本は、右肩上がりに人口が増え続けていることから需要が常に拡大しており、消費者のニーズも比較的わかりやすい状況にありました。そのため、顕在化したニーズを充たす製品を企業が市場に投入し、「モーレツ社員」の長時間・休日返上労働によって、企業は効果的に売上を伸ばしやすい環境でした。
つまり、この時代は「需要>供給」の状態であり、企業は製品を大量生産し、大量の営業部隊による売り込みと広告を展開しながら製品を市場投入することで、認知の向上に比例して売上が拡大しやすかったと言えるでしょう。
しかし、現代のビジネス環境は全く異なります。
VUCA時代においては、かつてのように、明確なニーズを満たす製品を投入すれば売れるという単純な構図はもはや存在しません。市場や技術の変化は急速で、消費者のニーズも刻々と変わり続けています。さらに、グローバル化やデジタル化が進み、競争相手も国内だけでなく世界中に広がっています。
現代の経営に明確な答えはありません。
このような時代に会社を経営する経営者のあなたは、「答えのないゲームを戦っている」という意識を持つ必要があります。
当事務所では、「コーチング」と「コンサルティング」を組み合わせた独自の手法を通じて、こうした環境下での経営を支援しています。私たちのアプローチは、経営者自身が不確実性を乗り越えるための「仮説検証力」を高めることを1つの目的としています。
仮説検証型の戦略思考が求められる時代

では、このような「答えのないゲーム」を戦って生き残るためにはどうすればよいでしょうか?
それは、「答えがある前提のもとで全力で行動する」という考え方ではなく、「答えを見つけるために全力で行動する」という考え方に頭を切り替えることです。
かつての日本のように「需要>供給」の状態であれば、需要を満たすための答えは比較的わかりやすいため、そこに対して経営資源を集中化して全力で行動していけば、比較的成果につながりやすかった。つまり、答えをみんなが知っている状態でスタートするため、あとは精神論・根性論の世界で押し込んでいけば勝てる可能性が高かったと言えます。
しかし、VUCA時代である現代では、私たちは「答えのないゲーム」を戦っています。
つまり、答えをだれも知らない状態でスタートするゲームなので、まずは自社にとっての最適解を見つけるために行動しながらその答えを見つけていく必要があります。そのためには、「このように行動を起こせばよい成果が出るだろう」という仮の結論、すなわち「仮説」を持ち、その仮説が正しいかどうかを検証するために全力で行動して検証する必要があるということです。
ただし、行動することではじめて仮説が間違いであるとわかることがあります。
というより、むしろ仮説が外れるケースの方が圧倒的に多いと思っていた方がよいです。
仮説が外れたら、「仮説→行動」のプロセスを自分なりに分析・検証し、「なぜ思うような成果が出なかったのか?」その原因を特定することです。そして、その原因に対する打ち手を考えて、それを踏まえた新しい仮説を立てる。そしてその新しい仮説を検証するためにまた全力で行動する。自社にとって最適な答えが出るまで、この仮説→検証のプロセスをひらすら繰り返す。これこそがVUCA時代の企業の戦い方になります。
当事務所の「コーチ型コンサルティング」では、経営者がこのプロセスを自律的に回せるようサポートしています。具体的には、コーチングを活用して仮説を引き出し、コンサルティングで具体的な実行計画に落とし込む形で支援をしています。
なお、仮説思考については、以下の記事でも解説していますので、もしよろしければお読みください。
「運」と「実力」を見極める重要性
「答えのないゲーム」を戦っていく上で重要なポイントが1つあります。
それは「運と実力を区別する」ことです。
ビジネスに限らず、あらゆることの成否は「運」と「実力」という2つの要因の組み合わせによって決まるものと私は考えています。つまり、物事は運だけでも決まらなければ、実力だけでも決まらないということです。そうだとすれば、何かしらの結果に対して「運が悪かった」、「自分の実力不足だった」というどちらかの要因だけに寄せてものごとを片付けてしまってはいけないということです。
以上を踏まえると、仮説に対する検証プロセスで必ずやってほしいことは、下記の2点です。
- プロセスを「運の範囲」と「実力の範囲」に分解する
- 打ち手を実行する
- 「実力の範囲」の内容 → 経営資源を投入して実力を高める
- 「運の範囲」の内容 → 最小限の時間・コストを投じて試行回数を増やすことで成功確率を高める
私たちは時に、コントロール不能なことに労力を費やして、時間とお金を無駄にしてしまうことがあります。VUCAを生きる私たちに求められているのは、「コントロール可能なことを識別して、そこに注力すること」なのです。
中小企業に有利な時代
VUCA時代には、答えのないゲームの戦い方、すなわち仮説検証型の経営が求めれるということをお伝えしてきました。このように言うと、中小企業を経営者されているあなたは不安に感じるかもしれません。
しかし、安心してください。
VUCA時代に有利なのは、大手企業ではなく中小企業です。
なぜならば、このような時代には、機敏で、かゆい所に手が届き、市場の声に耳を傾けながら即座に対応できるビジネスが有利になるからです。その意味で、持ち前の意思決定の早さと組織の機動力を十分に生かすことができれば、中小企業にとっては有利な時代だと言えるでしょう。
当事務所では、「コーチング」と「コンサルティング」を通じて、こうした中小企業の強みをさらに引き出すお手伝いをしています。不確実な時代だからこそ、中小企業の機動力を最大限に活かした経営戦略を共に描きます。
コンサルタントも共に仮説を探るパートナー

コンサルティングに入ると、クライアント企業の経営者や幹部は「私が答えを知っている」と思っているかのような振る舞い・言動をする場面に遭遇することがあります。
はっきり言います。
コンサルティングに入る段階では私も答えはわかりませんし、知りません。
経営コンサルタントである私も、みなさんと一緒に仮説の設定と検証を行い、脳みそに汗をかきながら必死に答えを見つけるのです。ここは勘違いしていただきたくない点です。
ただし、私も50社以上の企業のコンサルティング、300社以上の企業の相談に乗っています。その経験から、「仮説」の精度はそれなりに高いと自負しています。つまり、クライアント企業が置かれている外部環境の中で、強み・弱みや収益構造を踏まえると、これがこの企業の勝ち筋になるだろうという仮説設定までの速度はそこそこ早いと思っています。
あとは、各クライアント企業固有の文化や組織体制等の変数があり、それにより仮説が外れたり微妙にズレることがあるため、そこは検証をしながらチューニングして成果に結びつけていく支援をする形になります。
Q&A
Q1: VUCA時代において、中小企業はどのように競争力を維持できますか
A: 中小企業の強みは、大企業に比べて意思決定が速く、変化に柔軟に対応できる機動力です。この機動力を活かし、市場の変化を素早く察知し、迅速に対応することが重要です。また、ニッチ市場に特化して経営資源を集中化させたり、顧客との接近戦に持ち込んで密接な関係を構築したりすることで、独自の価値を提供し続けることが可能となります。その意味では、VUCA時代は中小企業にとって有利な時代であるとポジティブにとらえ、持ち前の機動力を生かした経営を行っていくべきでしょう。
Q2: 仮説検証型の思考を組織全体に浸透させるには、どうすればよいでしょうか?
A: まず、経営層が率先して仮説検証型の思考を実践し、その重要性を社内に伝えることが大切です。また、小さな成功事例を作り、社内で共有することで、その有効性を実感させることができます。さらに、失敗を恐れない文化を醸成することが大切です。仮説が外れた場合でも、それが普通であることをきちんと伝え、そのプロセスから学びを得ることを評価する仕組みを作ることが効果的です。
Q3: VUCA時代において、長期的な戦略立案は意味がないのでしょうか?
A: 長期的な戦略立案は重要ではありますが、アプローチについては若干変える必要があると思います。具体的には、緻密で詳細な計画を立てるのではなく、大きな方向性や企業のビジョンを示し、それに向かって柔軟に対応していく経営スタイルが有効だと考えます。定期的に戦略を見直し、必要に応じて修正を加えることで、変化の激しい環境にも柔軟に対応できます。ただし、環境変化に合わせて柔軟に戦略の見直し・修正をする経営スタイルを採用することは、従業員にもきちんと説明をして理解を得ておかねばなりません。そうでないと、「社長の言うことはコロコロ変わる」と思われ、従業員の不満が高まる可能性があります。
Q4: 「運」と「実力」を見極める具体的な方法はありますか?
A: 「運」と「実力」を見極めるには、結果だけでなくプロセスを丁寧に分析することが重要です。例えば、同じような条件下で複数回試行し、結果に大きなばらつきがある場合は「運」の要素が大きいと考えられます。一方、一貫して良い(または悪い)結果が出る場合は「実力」の影響が大きいと判断できます。また、ある本では「わざと負けられるかどうか?」で判断すると書かれていました。つまり、わざと負けられるものは実力だが、そうでないものは運と見なすということです。いずれにせよ、すぐに区別できないものも多いと思いますので、運か実力かについても自分の頭で考えて仮説を持ち、それを検証していく姿勢が大事だと思います。
まとめ
VUCA時代における経営は、「答えのないゲーム」を戦う姿勢が求められます。この不確実性の高い環境で成功を収めるには、以下のポイントが重要です。
- 仮説検証型の思考:仮説を立て、行動で検証し、修正を重ねるプロセスを徹底する
- 中小企業の強みを活かす:機動力と柔軟性を活かし、変化に迅速に対応する
- 「コーチング×コンサルティング」:経営者の主体性を引き出し、具体的な成果につなげるアプローチ
当事務所のコンサルティングアプローチは、経営者がこのプロセスを自ら回し、組織全体を前進させるためのパートナーとして機能します。不確実な時代において、経営者が一人で悩む必要はありません。
「共に最適解を探し、不確実な未来に立ち向かう準備を始めましょう。」
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