唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。

このコラムでは、これまでのコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。

さて、当事務所は、公益財団法人あいち産業振興機構より「中小企業等の経営層・支援担当者向け デジタル人材育成研修」を受託しており、当事務所代表の唐澤が本研修の講師を担当しております。


全5回の本研修カリキュラムの内、第3回(2024年11月6日実施)では「DXに取り組んでいる中小企業の経営者等による、事例・体験談の発表」をプログラムとして用意しており、DXセレクション2024のグランプリ企業に輝いた浜松倉庫株式会社の中山社長をお招きし、ご講演をいただきました。


本記事では、中山社長のご講演から見えたDX成功のポイントを、私なりの考えを交えてお伝えしたいと思います。

浜松倉庫株式会社様の概要

  • 社名:浜松倉庫株式会社
  • 本社所在地:静岡県浜松市中央区中央三丁目8番35号
  • 創立:明治40年(1907年)
  • 資本金:5,445万円
  • 従業員数:125名
  • 営業種目:倉庫業、通運業、一般区域貨物自動車運送業、不動産賃貸業、レストラン事業

浜松倉庫様のDXに対する取組概要

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出典:経済産業省「「DXセレクション2024」選定企業レポート 」より抜粋

浜松倉庫様のDXのポイント

出典:経済産業省「「DXセレクション2024」選定企業レポート 」より抜粋

私(唐澤)が感じたDX成功のポイント

私(唐澤)が感じた浜松倉庫様のDX成功のポイントは大きく3点ありました。

【ポイント①】先を読んで確実に実行

2005年の時点で、働き手の確保が困難になることを予測し、先手を打っていらっしゃいました。具体的には、女性を積極採用するとともに、女性が活躍できる労働環境を整備して人材の定着化を図ることで、現在も人材の確保が可能な体制となっています。
また、2015年の時点で生産性向上の必要性を感じ、DXに着手しています。日本では2018年がDX元年(経済産業省が「産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進」という施策を発表)と言われていますので、ひょっとすると他の要因(利用中の基幹システムの保守切れ等)もあったのかもしれませんが、それでも着手としては非常に早いと感じました。


【ポイント②】ボトムアップ型のプロジェクト推進

ボトムアップ型でDXプロジェクトを推進している点は特筆すべき点と感じました。まず、生産性向上の取り組みに向けた最初の一手は、若手管理職(3名)に対する課題の提示だったとのことです。具体的には、「10年後に浜松倉庫が生き残るために何をすべきか?」をこの3名に考えてもらい、その内容を基にプロジェクトがスタートしたとのことです。
以降、この若手管理職を起点に、プロジェクト段階に応じてキーマン、若手従業員、全従業員という順序で巻き込む対象を増やしながらプロジェクトを推進しています。なお、中山社長はプロジェクトオーナーではあるものの、現場で判断できない課題の意思決定とリソース(人員、時間)の用意に集中する形となっています。


【ポイント③】DXの「X」にフォーカス

中山社長の考えとして、DXの「D=デジタル」はあくまで手段であり、重要なのは「X=トランスフォーメーション(変革)」の方であるという点は一貫していました。
質疑応答の際に、私から「世の中の中小企業はDX人材が不足していることが原因でDXが進まないことが課題になっているが、なぜ浜松倉庫様はその壁を越えられたのか?」と質問したところ、「DXのDではなく、Xのプロジェクトだと思えばいいのではないでしょうか?」とのご回答をいただきました。
つまり、「D=デジタル」のプロジェクトだと思うからDX人材がいないと感じるだけであり、「X=変革」のプロジェクトだと思えば、自分の会社を変えたい、あるいは変えようとする人材であればいますよね?ということだと理解しました。

まとめ

シンプルに「さすがDXセレクションのグランプリ企業」という印象でした。

DXプロジェクトにおいて、中山社長はメッセージの発信と重大な意思決定、そして経営資源の用意こそするものの、基本的には若手従業員を中心としたボトムアップでプロジェクトを推進したことが1つの特徴だと感じました。

もちろん、中山社長のリーダーシップのスタイルや会社の置かれている状況、そして組織風土等は会社によって異なりますので、すべての中小企業が浜松倉庫様と同様のアプローチでDXに成功するとは限りません。

しかし、実際にDXの取り組みに成功している中小企業の1つの事例として、浜松倉庫様の取り組みは非常に参考になるものだと考えています。

本記事がみなさまのDX推進の参考になれば幸いです。

唐澤経営コンサルティング事務所では、中小企業診断士・ITストラテジストとして、中堅中小企業の規模や業種に合わせた最適なアドバイスとサポートを行っています。

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この記事を書いた人

唐澤 智哉

新卒で大手金融系シンクタンクに入社し、大手企業向けのITコンサルティングに従事。その後、2社のコンサルティングファームにて、大手企業向けの業務改革・ITコンサルティングに従事。
2012年に大手IT企業に入社し、中小企業向けのコンサルティング事業の立ち上げの中心メンバーとして事業化までを経験し、10年間中小企業向けの経営コンサルティング・ITコンサルティングや研修・セミナーに従事。
その後、2022年に唐澤経営コンサルティング事務所を創業。中小企業向けの経営コンサルティング、DXコンサルティング、研修・セミナー等のサービスを提供している。
趣味は読書で、年間200冊近くの本を読む。