唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。
このコラムでは、私のコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。
中小企業の事業承継において、後継者が直面する大きな課題の一つが古参社員との関係構築です。
古参社員の持つ豊富な経験や知識は企業の成長に欠かせないものですが、一方で、後継者と古参社員の間にコミュニケーションの壁が生じ、摩擦が起こるケースも少なくありません。
私たち唐澤経営コンサルティング事務所では、「コーチング」と「コンサルティング」を組み合わせた独自のアプローチで、後継者が古参社員と信頼関係を築き、スムーズな事業承継を実現するお手伝いをしています。
本記事では、古参社員との関係を円滑にし、企業文化を継承しながら新たな価値を創出するための具体的なポイントをご紹介します。
事業承継にお悩みの経営者や後継者の方々に、この記事がヒントとなれば幸いです。
古参社員との関係構築が重要な理由

古参社員の役割と影響力
- 豊富なノウハウの蓄積
製造業なら製品品質や生産工程、営業部門なら顧客との強固な信頼関係など、古参社員は長年にわたって培った経験を持っています。 - 社内文化への深い理解
非公式なルールや社内コミュニケーションの方法など、企業の“文化”を熟知しているため、組織内で大きな影響力を発揮します。 - 周囲への波及効果
古参社員の理解と支持を得ることで、新人や中堅社員にもポジティブな影響を与え、承継プロセスを円滑に進められます。
信頼関係の築き方
古参社員と良好な関係を構築するためには、まずは相手の話にしっかり耳を傾ける姿勢が重要です。
- 定期的なコミュニケーションを重視する
古参社員との関係を強化する第一歩は、対話の場を増やすことです。- ミーティングや個別面談:業務上の課題や改善提案について意見交換を行います。
- プロジェクトへの参加:新たなプロジェクトに古参社員を積極的に巻き込み、その知見を活かします。
- 情報共有の透明性を高める
- 定例会議の実施:施策や方針を共有し、社員が理解・納得できる環境を整えます。
- フィードバック制度:社員の意見を聞くアンケート調査などを実施し、定期的に声を拾い上げます。
- フィードバックを建設的に行う
- 成果を認める:古参社員の貢献を公に称賛し、敬意を示します。
- 改善点を前向きに提案する:組織全体の成長を目指し、建設的な意見交換を行います。
効果的なコミュニケーションのポイント
- 情報共有の透明性を高める
- 週次や月次の定例会議で、施策や方針をしっかりと説明し、質疑応答の時間を設ける。
- フィードバック制度を整え、アンケート調査などを通じて社員の声を定期的に拾い上げる。
- 多様なツール・方法を活用する
- メール・チャットツールで迅速に情報共有
- 対面ミーティングで直接意見を交わし、不安や疑問点を解消
- フィードバックを建設的に行う
- 改善点を提案する:組織全体の向上を目指し、前向きなフィードバックを行う。
- 成果を認める:古参社員の実績や貢献に対し、素直に感謝と敬意を示す。
後継者に求められる3つの心構え

経営理念の継承
後継者としてまず重要なのは、企業の経営理念をしっかりと理解し、それを継承することです。
経営理念は企業の指針であり、社員全員が共通の目標に向かうための基盤となります。
例えば、創業者が大切にしてきた「顧客第一主義」や「品質へのこだわり」といった価値観を、後継者自身が体現することが求められます。古参社員と共に経営理念を再確認し、その意味や背景を深く理解することで、次世代に向けた新たなビジョンを共有することができます。具体的には、経営理念を社内で浸透させるための社内研修の実施や、経営理念に基づいた行動指針の策定などが有効でしょう。
また、後継者自身が経営理念に基づいた行動を自ら率先して行うことにより、社員の模範となることができます。例えば、顧客満足度向上のために、後継者自らが営業に同行して顧客との対話の機会を設け、ニーズを把握してサービス改善に取り組むといった姿勢が重要です。
こうした取り組みを通じて、経営理念が組織全体に浸透し、社員一人ひとりの行動指針となることで、企業文化の継承と発展が可能となります。
柔軟なリーダーシップ
現代のビジネス環境は急速に変化しています。そのため、後継者には柔軟なリーダーシップが求められます。
固定観念にとらわれず、新しいアイデアや技術を取り入れつつ、古参社員の知識や経験を活かすことで、バランスの取れた経営が可能になります。例えば、AIやIoTなどの新しいデジタル技術を導入する際には、その必要性や効果を古参社員に丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。
同時に、新技術の導入に伴う社員への教育や研修を行うことも欠かせません。
一方で、これまでの業務プロセスを見直し、自動化・効率化を図ることも必要でしょう。
後継者は、古参社員との対話を通じて、変化に対する不安や抵抗を和らげながら、組織全体を新しい方向へと導いていく役割を担う必要があります。
また、リーダーシップを発揮する上では、社員とのコミュニケーションが極めて重要となります。後継者は、社員の意見に耳を傾け、多様な視点を取り入れながら、意思決定を行う必要があります。定期的な面談や、アンケートの実施などを通じて、社員の声に耳を傾ける姿勢を示すことで、信頼関係を築くことができるでしょう。
持続可能な成長戦略
企業の持続的な成長を実現するためには、長期的な視点での成長戦略が必要です。
市場動向や競争環境を分析し、古参社員と共に新たなビジネスチャンスを模索しましょう。
例えば、新しい分野に参入するために、古参社員の持つ顧客ネットワークを活用しながら、新たなサービスを開発することが考えられます。
さらに、企業文化や価値観を守りながらも、新しい時代に適応した戦略を構築することが求められます。具体的には、多様な人材の活用や、環境に配慮した事業運営など、社会的責任を果たしつつ、企業価値を高めていくことが重要です。
後継者は、長期的な視点を持ち、古参社員の知恵を借りながら、持続可能な成長戦略を描いていく必要があります。そのためには、社内外のステークホルダーとの対話を重ね、多様な意見を取り入れながら、柔軟かつ大胆な意思決定を行うことが重要です。
また、自社の強みを活かしつつ、社会の変化に適応し、新たな価値を創造し続けることが、後継者に課せられた使命といえるでしょう。
私の体験談

私が経営コンサルタントとして初めて中小企業の事業承継に関わったとき、後継者と古参社員との関係構築に苦労した経験があります。
後継者は新しいビジョンを持っていましたが、古参社員は先代の築いてきたこれまでのやり方に強い愛着を持っており、変化に対する抵抗が見られました。
そこで私は、まず古参社員との対話を重視することにしました。
具体的には、コミュニケーションミーティングを開催し、古参社員のこれまでの実績や経験をヒアリングしながら、過去の成功体験を共有してもらいました。
同席した後継者は、まとまった時間を確保して彼らの経験や実績を聞く機会がこれまでなかったようで、純粋に尊敬の念を持って話を聞いていました。
またその中で、後継者に対しては柔軟な姿勢を持つよう助言させていただきました。
さらに、新しいアイデアを導入する際には、必ず古参社員とのコミュニケーションの機会を設け、彼らの知識を有効に活用することをその場で合意しました。
これらの取り組みを通じて、後継者の謙虚かつ素直な姿勢に対しては古参社員も新しいだったようで、後継者に対する信頼感が増したようでした。
同じ社内にいたとしても、しっかりと時間を確保して相互理解を踏まえる機会というものは意外とないものなのです。
このプロセスを通じて、後継者と古参社員の間に信頼関係が築かれ、企業全体が一丸となって新しい目標に向かうことができました。
この経験から、コミュニケーションの重要性と柔軟なリーダーシップの必要性を強く実感しています。
人の問題を解決するためには、コミュニケーションは常に重要なカギとなります。
Q&A
Q1: 古参社員との関係構築で最も重要なポイントは何ですか?
A: 最も重要なのは、古参社員の意見や経験を尊重し、信頼関係を築くことです。
具体的には、彼らが過去に直面した課題や成功体験についてしっかりと聞き出し、その知識を活用することで、企業の歴史と文化を深く理解することです。
例えば、定期的なコミュニケーションミーティングを開催し、彼らの意見を聞く場を設けることで、彼らの実績に敬意を示しつつ、相互理解を深めることが可能となります。
Q2: 後継者としてどのようにリーダーシップを発揮すれば良いのでしょうか?
A: 柔軟なリーダーシップが求められます。
具体的には、変化するビジネス環境に対応するために、新しいアイデアや技術を積極的に取り入れつつ、古参社員の豊富な経験を活かすことが重要です。
例えば、新しいプロジェクトを立ち上げる際には、古参社員の知見を活用してリスク管理を行い、新人社員と共に新しい技術導入を進めることで、バランスの取れたアプローチで企業全体を導くことが求められます。
Q3: 事業承継において避けるべき誤りは何ですか?
A: 一方的に変革を押し進めることは回避すべきです。
具体的には、古参社員の意見を無視したり、十分な合意形成なく急激な組織変更を行ったりすると、抵抗や不満が生じる可能性が高まります。
そのため、慎重に計画し、関係者とコミュニケーションを図りながら、納得感のある形で進めることが重要です。
まとめ
中小企業の事中小企業の事業承継を成功させるには、古参社員との信頼関係を築き、企業の歴史と文化を尊重しながら新しい価値を創出することが重要です。
- コミュニケーションを密に取り、相互理解を深める。
- 経営理念を継承し、新しいビジョンを共有する。
- 柔軟なリーダーシップで変化に対応しつつ、持続可能な成長戦略を描く。
唐澤経営コンサルティング事務所では、「コーチング」と「コンサルティング」を融合させたアプローチで、後継者と古参社員の関係構築を支援しています。
企業の未来を共に描き、新たな成長へと導くお手伝いをさせていただきます。
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