唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。

このコラムでは、私のコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。

中小企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する際、最終的には何かしらのITツールやクラウドサービスを導入する必要が出てきます。しかし、世の中には数多くのITツールが存在しており、その中から自社に最適なものを選ぶことは容易ではありません。

では、どのようにして自社に最適なITツールを選定し、DXを成功に導くべきなのでしょうか?

よくある失敗例

まず、よくある失敗例として挙げられるのが、「なんとなく導入したITツールが社内で全く活用されず、不良資産化してしまう」というケースです。

このような状況はなぜ起こるのでしょうか?
その原因は、目的や合意形成が不十分なままITツールを導入してしまったことにあります。

DXの原理原則(経営・業務・ITの関係)

ここで、改めて「経営」「業務」「IT」の関係性を整理してみましょう。

この図が示す通り、DXを進める際にはまず以下の2つの原理原則を理解することが重要です。

■原理原則①:経営は業務の結果(成果)として成立する
企業の経営は、従業員が日々行う業務の成果として成り立っています。つまり、業務の質や効率が経営全体に直結するということです。

■原理原則②:業務とITは密接不可分な関係にある
デジタル技術の進展により、多くの業務はITと深く結びついており、密接不可分な関係にあります。したがって、業務改善や効率化を図る際には、ITツールの活用が不可欠です。

以上2つの原理原則を踏まえると、中小企業がDXを成功させるためには3つ目の原理原則が明らかになります。

■原理原則③:経営課題を設定した上で、業務・ITのあり方を検討するべきである
経営が業務の結果(成果)として成立し、その業務がITと密接不可分である以上、IT化を検討するのであればまず最初に行うべきは経営課題の把握です。その上で、その経営課題を解決する手段として業務課題を設定し、その業務課題に対してIT化を検討するという順序でなければなりません。この手順をふまえず、いきなり業務やITの詳細な話に入っていってしまうと、経営課題の解決に資するIT化にはなりません。

DXは単なるデジタル化ではなく、経営課題の解決に資するものでなければなりません。
そのためにも、この原理原則に則った取り組みが必要となるのです。

問題解決の手順

前述の3つの原理原則を踏まえると、問題解決は次の手順で進めることが重要です。

ステップ①:経営課題を把握する

ステップ②:その経営課題に紐づく業務上の課題を特定する

ステップ③:その業務上の課題を解決できるITツールを選定・導入する

この手順を無視して、単に「便利そうだから」「流行っているから」といった理由でITツールを導入すると、その効果は限定的になってしまいます。
むしろ、ITツールの不良資産化や業務効率低下といった逆効果すら招きかねません。

実際、中小企業では以下のようなケースを見ることがあります。

  • 社長が独断でITツールを導入したものの、社員はそのメリットや活用方法がわからず、結果的に誰も利用しない。
  • 発言力の大きい社員が「このツールは当社に絶対必要だ!」と主張して導入されたものの、具体的な運用方法が決まっていないためまったく活用されていない。
  • 特定部門だけで課題解決を目的に導入されたツールが、他部門との連携不足で全社的な生産性低下につながってしまう。

これらはすべて、「経営課題」を把握するからスタートせず、「業務」や「IT」だけに焦点を当ててITツールの導入をしてしまった結果として発生しています。

正しい意思決定をするために

新しいデジタル技術やITツールについて、情報収集することそのものは非常に重要です。
しかし、実際にITツールを導入する際には慎重さが求められます。
具体的には、次の問いに答えられる状態で意思決定を行うことが必要です。

  • あなたの会社の経営課題は何ですか?そしてその経営課題に紐づく具体的な業務上の課題は何ですか?
  • その業務上の課題は本当に存在していますか?現場の実務担当者にも確認しましたか?
  • 導入しようとしているITツールは、その業務課題の解決に本当に有効な手段となりますか?現場担当者との合意形成は図りましたか?

これらへの明確な答えなしにITツールを導入しても、その効果は期待できません。

Q&A

Q1: DX推進にはどれくらいの期間が必要ですか?
A: 企業の規模や業種、スコープ(範囲)によって大きく異なります。中小企業の場合は一般的に構想策定で3か月~半年間、システム導入・構築で半年〜3年程度のスパンで考えておくとよいと思います。

Q2: DX推進のための予算はどのくらい必要ですか?
A: これも企業によって大きく異なります。
参考までに日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の『企業IT動向調査報告書 2022』によると、日本企業の2021年度の売上高に占めるIT予算比率のトリム平均値は1.15%となっています。ただし、この数値は大企業も含めた平均値です。中小企業に限定すると、平均値は1%をやや下回る水準と考えられます。よって、中小企業のIT投資は売上高の1%程度を1つの目安として認識しておくとよいでしょう。
補助金等をうまく活用することにより、自社負担を軽減できる可能性がありますので、事前に調査しておくことをおすすめします。

Q3: DXを推進する上で、最も重要なことは何ですか?
A: 経営者の強いコミットメントです。
DXは単なるIT導入ではなく、経営戦略そのものです。経営者自身がDXの必要性を理解し、リーダーシップを発揮することがDX推進においては不可欠です。逆に言えば、経営者がDXの必要性を理解していない企業でDXの推進は難しいといっても過言ではないでしょう。

まとめ

最後に強調したい点ですが、ITツールはあくまで手段であり、その導入自体ですべての問題が解決するわけではありません。最終的にそれを活用する人々こそが鍵となります。したがって、正しい手順で問題解決策を検討し、現場担当者との合意形成や導入目的について十分な説明・理解共有が不可欠です。

「ITツールさえ導入すれば会社全体が変わる」

このような考え方は幻想です。

どれほど優れたツールでも、導入しただけでは経営課題は絶対に解決しません。
これは経営コンサルタントとして断言できます。

どのようなITツールを選ぶかも重要ですが、それ以上に大事なのは、「そのツールによって自社をどう変革したいか?」という明確なビジョンです。

DXを成功させるためには、経営層自身が強いビジョンと共通認識を持ち、それを組織全体で共有し、一丸となって取り組む姿勢こそが肝心なのです。

DXの具体的な進め方やツール選定、社内体制づくりなど、お悩みやご不明点がありましたらお気軽にご相談ください。唐澤経営コンサルティング事務所では、中小企業診断士・ITストラテジストとして、中堅中小企業の規模や業種に合わせた最適なアドバイスとサポートを行っています。

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この記事を書いた人

唐澤 智哉

新卒で大手金融系シンクタンクに入社し、大手企業向けのITコンサルティングに従事。その後、2社のコンサルティングファームにて、大手企業向けの業務改革・ITコンサルティングに従事。
2012年に大手IT企業に入社し、中小企業向けのコンサルティング事業の立ち上げの中心メンバーとして事業化までを経験し、10年間中小企業向けの経営コンサルティング・ITコンサルティングや研修・セミナーに従事。
その後、2022年に唐澤経営コンサルティング事務所を創業。中小企業向けの経営コンサルティング、DXコンサルティング、研修・セミナー等のサービスを提供している。
趣味は読書で、年間200冊近くの本を読む。