唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。
このコラムでは、私のコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。
今回は、業務改善の基本ともいえる「ECRS(イクルス)」についてお話しします。
ECRSは、生産性向上のためのシンプルかつ効果的なフレームワークで、製造現場だけでなく、オフィス業務など幅広い領域に活用できます。
本記事では、ECRSの基本から、実際の現場で活かせる具体的な事例まで、分かりやすく解説していきます。
「業務のムダを減らしたい」「DXを進める前にプロセスを整理したい」と考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
ECRSとは?

ECRSは、製造業での生産性の向上を目的とした業務改善手法です。
起源は生産技術の作業研究だと言われていますが、製造現場から事務作業まで、あらゆる業務改善に適用できる普遍的なフレームワークです。
Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(入れ替え)、Simplify(簡素化)の頭文字をとったもので、日本の製造業の発展にも大きく貢献してきました。
なぜECRSに注目するのか?
昨今の経営環境において、私がECRSに注目すべきと考える理由は3点です。
- 人手不足の深刻化:従来のような人海戦術による業務遂行が難しくなっています。
- デジタル化への対応:DXを推進する前に、既存の業務プロセスの整理が必要不可欠となっています。
- コスト削減ニーズ:原材料費の高騰や人件費の上昇により、業務効率化の重要性が増しています。
ECRSの4つの視点
ECRSの4つの視点を具体例で詳しく解説します。
1.排除(Eliminate)
「この業務は本当に必要か?」を徹底的に問い直します。
【具体例】
・毎週開催している進捗会議を隔週に変更(時間の削減)
・形骸化している日報の廃止(時間の削減)
・使われていない帳票類の廃止(保管スペースの削減)
・承認印の削減(時間の短縮)
2. 結合(Combine)
似たような業務を一つにまとめ、効率化を図ります。
【具体例】
・複数の申請書類を1枚に統合(時間の削減)
・部署ごとに分かれていた発注業務を購買部門に集約(発注ミスの削減、コスト削減)
・バラバラだった会議を1回にまとめる(時間の削減)
・複数システムのログインをシングルサインオンに統合(時間の削減)
3. 入れ替え(Rearrange)
業務の順序や実施場所を最適化します。
【具体例】
・朝一番の会議を昼休み後に変更(欠席者ゼロ化)
・在庫の保管場所を使用頻度に応じて変更(動線の短縮)
・承認プロセスの順序変更(日数の短縮)
・オフィスレイアウトの最適化(移動時間の削減)
4. 簡素化(Simplify)
業務をより単純で簡単にします。
【具体例】
・複雑な申請プロセスの簡略化(時間の短縮)
・チェック項目の削減(時間の削減)
・マニュアルの図解化(時間の削減)
・RPA導入による定型作業の自動化(時間の削減)
ECRSを実践する際の具体的な進め方

1. 現状分析
・業務の棚卸しを行う
・業務フローを作成して可視化する
・時間分析を実施する
2. 改善案の検討
・ECRSの順番で改善案を出す
・現場メンバーとのワークショップを実施
・改善案の優先順位付けを行う
3. 試行実施
・小規模な範囲でテスト実施
・効果測定と課題抽出
・改善案の修正
4. 本格展開
・全社展開の計画策定
・段階的な展開
・定期的なフォローアップ
Q&A
Q1: どの業務から始めるべきですか?
A: まずは、以下の条件に当てはまる業務から始めることをおすすめします。
・定型的で頻度の高い業務
・多くの人が関わっている業務
・不満や課題の声が多い業務
Q2: 現場の抵抗にはどう対応すべきですか?
A: 以下の3つのポイントを意識して進めましょう。
①目的と効果を丁寧に説明する
②現場の意見を積極的に取り入れる
③小さな成功事例を作り、横展開する
Q3: 効果の測定方法を教えてください
A: 主な測定指標としては以下の通りです。
・業務時間の削減量
・エラー率の変化
・コスト削減額
・従業員満足度
まとめ
明日から始められる具体的なアクションは以下の通りです。
- まずは1つの部門や業務プロセスを選び、ECRSの視点で分析してみましょう
- 特に「E(排除)」の視点で、不要な業務を洗い出すことから始めましょう
- 小さな成功体験を積み重ねることで、全社的な改善活動へと発展させていきましょう
最後に、業務改善は一朝一夕にはいきません。
しかし、ECRSという明確な視点を持つことで、着実かつ確実に成果を上げることができます。
会社の状況にもよりますが、私の肌感では、ECRSを活用した業務改善で10-30%程度は業務効率化が実現可能だと思います。
まずは自分の身の回りの業務から、ECRSの視点で見直してみてはいかがでしょうか?
業務改善の進め方や社内体制づくりなど、お悩みやご不明点がありましたらお気軽にご相談ください。唐澤経営コンサルティング事務所では、中小企業診断士・ITストラテジストとして、中堅中小企業の規模や業種に合わせた最適なアドバイスとサポートを行っています。
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