唐澤経営コンサルティング事務所の唐澤です。中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定などのコンサルティングに従事してきました。

このコラムでは、私のこれまでのコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。

2025年度新補助金の「新事業進出補助金」について、2024年12月20日に以下の記事にて概要をお伝えしました。

2024年12月25日チラシが公開されましたので、本記事では公表されたチラシを抜粋しながら、続報を一足早くお知らせします。

なお、本記事はあくまで2024年12月25日現在の公開されている情報を元にした内容となります。今後新たに出てくる情報次第では、大きく変わる可能性がありますので、ご注意ください。

新事業進出補助金とは?

「新事業進出補助金」は、企業の成長・拡大向けた新規事業への挑戦を目指す中小企業を支援する補助金です。

事業再構築補助金(事務局ホームページはこちら)の後継として位置づけられる補助金であり、その中でも「成長枠」に近い制度設計となっています。

なお、公表されている「事務局公募要領(案)」によると、令和8年度末までに公募回数は4回程度採択予定件数は6,000件(1,500件/公募回)程度を見込んでいるようです。

■活用イメージ

  • 機械加工業でのノウハウを活かして、新たに半導体製造装置部品の製造に挑戦
  • 医療機器製造の技術を活かして蒸留所を建設し、ウイスキー製造業に進出

補助事業概要

  • 補助対象者
    企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行う中小企業等
  • 補助上限額
    • 従業員数20人以下:2,500万円(3,000万円)
    • 従業員数21~50人:4,000万円(5,000万円)
    • 従業員数51~100人:5,500万円(7,000万円)
    • 従業員数101人以上:7,000万円(9,000万円)
      ※補助下限750万円
      ※大幅賃上げ特例適用事業者(事業終了時点で①事業場内最低賃金+50円、②給与支給総額+6%を達成)の場合、補助上限額を上乗せ。(上記カッコ内の金額は特例適用後の上限額。)
  • 補助率
    1/2
  • 基本要件
    中小企業等が、企業の成長・拡大に向けた新規事業(※)への挑戦を行い、(※事業者にとって新製品(又は新サービス)を新規顧客に提供する新たな挑戦であること)
    1. 付加価値額の年平均成長率が+4.0%以上増加
    2. 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、又は給与支給総額の年平均成長率+2.5%以上増加
    3. 事業所内最低賃金が事業実施都道府県における地域別最低賃金+30円以上の水準
    4. 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等
      の基本要件を全て満たす3~5年の事業計画に取り組むこと。
  • 補助対象経費
    建物費 構築物費 機械装置・システム構築費 技術導入費 専門家経費 運搬費 クラウドサービス利用費 外注費 知的財産権等関連経費 広告宣伝・販売促進費
  • その他
    • 収益納付は求めません。
    • 基本要件2、3が未達の場合、未達成率に応じて補助金返還を求めます。ただし、付加価値が増加してないかつ企業全体として営業利益が赤字の場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は返還を免除します。

概要資料をベースにした速報をお伝えした際から新たに判明した内容は、以下の3点です。

  1. 賃上げ要件の明示
    概要資料では「その他、賃上げ要件を規定する予定」との記載にとどまっていましたが、明示されました。「1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施等道府県における最賃の直近5年間の年平均成長率以上、又は、給与支給総額の年平均成長率+2.5%以上増加」となっています。この水準の賃上げを実行できる事業計画の策定が求められます。
  2. 収益納付は求めない
    ものづくり補助金同様、収益納付は求めないことが明示されました。収益納付とは、補助事業で一定の利益(収益から経費等を引いた額)が出た場合に、交付された補助金額の一部または全額を国に返納していく制度のことです。
  3. 未達成率に応じた補助金返還
    賃上げ要件の未達成率に応じた補助金返還が求められるようです。これまではこのような規定はなかったため、柔軟化が図られたことになります。

ポイント

  • 新製品(又は新サービス)を新規顧客に提供する新たな挑戦であること
    新規事業の定義は、「事業者にとって新製品(又は新サービス)を新規顧客に提供する新たな挑戦であること」となっています。事業再構築補助金の事業再構築指針で示された「新市場進出」に類似した内容となっています。製品と市場双方の新規性要件を満たす必要があるものと推測されます。
  • 補助下限がある
    補助下限として750万円が設定されています。補助率は1/2なので、この補助金を活用するためには最低でも税抜き1,500万円以上の設備投資が必要となります。
  • 構築物は対象経費
    事業再構築補助金では補助対象外だった「構築物」が対象経費に含まれています。構築物とは、土地の上に定着する建物以外の建造物、工作物、土木設備などです。具体的には、門や塀などの外構工事、フェンス等です。
  • 一般事業主行動計画の公表が必要
    前回までは、従業員数100人以下の事業者について一般事業主行動計画は加点要件でした。しかし、今回からは従業員21名上の場合は必須となりますので、注意が必要です。
    一般事業主行動計画の詳細は、厚生労働省のサイトをご確認ください。
  • 収益納付は求めない
    前述の通り、収益納付は求められません

事業の流れ

大きな事業の流れは上記の通りで、事業再構築補助金と変わらないものと思われます。

主なポイントを以下に記載します。

  • 補助金は、申請したらすべての会社がもらえるわけではなく、審査を通じて採択される必要があります。なお、本補助金の前身と位置付けられている事業再構築補助金の前回(第12次公募)の採択率は26.5%でした。
  • 提出した事業計画書を基に審査が行われて採択者が決定しますので、事業計画書の作成が必要となります。
  • 補助金は原則清算払となりますので、採択されたからといってすぐに補助金が入金されるわけではありません。事業計画に則って補助事業を遂行し、事業に必要な支払いをすべて完了して必要な報告を行った後で、補助金は入金されます。
  • 申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。取得未了の方は、あらかじめGビズIDプライムアカウント取得手続きを行ってください。

今後詳細な要件やスケジュール等が公表され次第、本コラムでも情報発信していきます。

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この記事を書いた人

唐澤 智哉

新卒で大手金融系シンクタンクに入社し、大手企業向けのITコンサルティングに従事。その後、2社のコンサルティングファームにて、大手企業向けの業務改革・ITコンサルティングに従事。
2012年に大手IT企業に入社し、中小企業向けのコンサルティング事業の立ち上げの中心メンバーとして事業化までを経験し、10年間中小企業向けの経営コンサルティング・ITコンサルティングや研修・セミナーに従事。
その後、2022年に唐澤経営コンサルティング事務所を創業。中小企業向けの経営コンサルティング、DXコンサルティング、研修・セミナー等のサービスを提供している。
趣味は読書で、年間200冊近くの本を読む。