唐澤経営コンサルティング事務所の唐澤です。中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定などのコンサルティングに従事してきました。

「今月の売上目標達成のために、目の前の顧客に全力を尽くす」

「発生したクレームに対応するため、担当部署が昼夜を問わず奮闘している」

「新しいシステムを導入し、特定の業務の効率が劇的に改善した」

これらはすべて、ビジネスにおいて日常的に見られる、尊い企業努力の一場面です。日々の業務に邁進し、一つひとつの課題を懸命に乗り越えていく。特に、経営資源が限られる中堅中小企業において、現場の最前線で奮闘されている経営者や管理職の皆様には、本当に頭が下がる思いです。

しかし、ここで少し立ち止まって考えてみていただきたいのです。

「売上は上がっているのに、なぜか会社の利益は増えていかない…」

「部署ごとに頑張っているはずなのに、なぜか組織全体としての一体感がない…」

「現場は疲弊しているのに、次から次へと問題が発生する…」

もし、あなたがこのような悩みを一つでも抱えているとしたら、あなたの会社は知らず知らずのうちに「木を見て森を見ず」という状態に陥っているのかもしれません。

私はこれまで、数多くの中堅中小企業の現場に立ち会ってきました。その中で、成長を続ける企業と残念ながら停滞してしまう企業を分ける、ある重要な「違い」に気づきました。それが、今回お話しする「俯瞰力(ふかんりょく)」の有無です。俯瞰力とは、一言でいえば「物事を高い視点から、全体を捉える力」のことです。目の前の「木」に集中するだけでなく、一歩引いて「森」全体がどのような状況になっているのかを把握する能力です。

なぜ多くの企業が「木を見て森を見ず」に陥ってしまうのか?このコラムでは、その構造的な問題を解き明かし、俯瞰力がビジネスにもたらす絶大なメリットを解説します。さらに、私のコンサルティング経験で培ってきた明日から実践できる「俯瞰力の鍛え方」を具体的にお伝えします。

この記事を読み終える頃には、あなたは自社のビジネスを新たな視点で見つめ直し、より本質的な課題解決への一歩を踏み出すための、確かなヒントを手にしているはずです。

なぜ、私たちは「木を見て森を見ず」に陥ってしまうのか?

「全体を見ることの重要性など、言われなくても分かっている」

あなたはそのように感じているかもしれません。

しかし、頭では理解していても、実践することは非常に難しいものです。なぜならば、私たちを「木」に集中させてしまう、強力な要因が存在するからです。

要因①:組織構造が引き起こす「部分最適の罠」

多くの会社では、営業部、開発部、製造部、経理部といったように、機能別に組織が分かれています。これは各機能の専門性を高め、業務効率を上げるためには有効な仕組みです。しかし、この縦割り組織が時として俯瞰的な視点を奪う大きな原因となります。

各部署は、それぞれに与えられた目標を追いかけます。

  • 営業部: 「売上目標〇〇円達成!」
  • 製造部: 「生産コスト〇%削減!」
  • カスタマーサポート部: 「顧客満足度〇%以上!」

それぞれの部署が目標達成のために全力を尽くすことは、素晴らしいことです。しかし、ここに「部分最適の罠」が潜んでいます。例えば、営業部が売上目標を達成するために、顧客の無理な納期要求を安請け合いしたとしましょう。営業部の「木」は見事に育ちましたがその結果、製造部は無茶な生産スケジュールを強いられて残業が増加し、品質の低下を招いて、最終的にカスタマーサポート部へのクレームが殺到するかもしれません。

会社全体という「森」で考えれば、顧客満足度は下がり、従業員は疲弊し、利益も出ていないという最悪の事態となります。各部署が自分の「木」を育てることに必死になるあまり、「森」全体が枯れかかっていることに誰も気づかない。これが、多くの組織で見られる現実なのです。

要因②:人間の脳に潜む「心理的な壁」

私たちの思考の癖、いわゆる「認知バイアス」も視野を狭める一因です。例えば、

  • 確証バイアス: 自分の考えや仮説を肯定してくれる情報ばかりを集めてしまい、それに反する情報を無視・軽視してしまう傾向。
  • 現状維持バイアス: 未知の変化よりも、慣れ親しんだ現状を好んでしまう傾向。

一度「このやり方が正しい」と思い込んでしまうと、無意識のうちにその正しさを証明する情報ばかりを探してしまいます。「もっと良い方法があるかもしれない」「そもそも、この前提は正しいのだろうか?」と、一歩引いて考えることが難しくなるのです。

また、短期的なプレッシャーも大敵となります。「今月の目標をどう達成するか?」という目先の課題に追われていると、どうしても思考は短絡的になり、「3年後、5年後の会社のあるべき姿」といった長期的な視点を持つ余裕がなくなってしまいます。

要因③:中堅中小企業特有の「構造的課題」

特に中堅中小企業においては、「経営者自身が最大のプレイングマネージャー」であることが少なくありません。限られた人材の中で、経営者が現場の第一線に立ち、営業や採用、資金繰りまでこなす。そして会社の問題が立ちはだかったら、自らトラブルシューティングをする。これは企業の強みである一方、俯瞰的な視点を失うリスクと隣り合わせです。

中小企業庁が公表している『2024年版 中小企業白書』によると、多くの中小企業が「人材の確保・育成」を優先的な経営課題として認識しているとともに、小規模事業者においては「販路開拓・マーケティング」も重要な経営課題となっていることが明らかです。このような日々の課題解決に忙殺される中で、経営者が「森」全体を眺めるための時間と心の余裕を確保することは、極めて困難であるのが中堅中小企業における実情です。結果として、本来であれば経営者が担うべき「会社全体の舵取り」がおろそかになり、場当たり的な意思決定の繰り返しに陥ってしまうのです。

「俯瞰力」がもたらす絶大なメリット

では、もし経営者やリーダーが「俯瞰力」を身につけたら、会社はどう変わるのでしょうか?それは単に「視野が広がる」というだけにとどまりません。企業の成長を加速させる、具体的かつ強力なメリットがもたらされます。

メリット1:「全体最適」な意思決定が可能になる

俯瞰力があれば、先ほどの例のような「部署間の対立」や「部分最適の弊害」を防ぐことができます。

例えば、「新製品Aの開発」というテーマがあったとします。俯瞰力のないリーダーは、「開発部の目標は、とにかく良い製品を期日までに作ることだ」と指示するかもしれません。しかし、俯瞰力のあるリーダーは、こう考えます。

「この新製品Aは、会社のどの顧客層に、どのような価値を提供するものなのか?(マーケティング視点)」

「その価値を顧客に届けるために、営業部にはどのような準備やトレーニングが必要か?(営業視点)」

「安定的に供給できる生産体制は組めるのか?コストは?(生産・採算視点)」

「販売後のサポート体制はどうする?(カスタマーサポート視点)」

このように、開発、営業、生産、サポートといった各機能(木)が、どのように連携すれば会社全体の利益という「森」が最も豊かになるのかを考える。これが「全体最適」の視点です。この視点に立つことで、一時的な売上やコスト削減に惑わされず、持続的な成長につながる、質の高い意思決定が可能になるのです。

メリット2:問題の「真因」を発見し、根本から解決できる

日々の業務では、様々な問題が発生します。「売上が落ちた」「クレームが増えた」「社員の離職が相次いでいる」。これらはすべて、何らかの結果として現れた「症状(木)」に過ぎません。

多くの人は、この症状を抑えるための対症療法に走りがちです。

  • 売上が落ちた → 慌ててセールを行う
  • クレームが増えた → サポート担当者を増員する
  • 離職が相次いだ → 採用を強化する

これでは、モグラ叩きのように次から次へと問題が発生するだけです。

俯瞰力があれば、これらの症状の裏に隠された、もっと根深い「問題の真因(森の土壌の問題)」に気づくことができます。

「なぜ、売上が落ちたのか?」
→「主力商品の魅力が、競合製品に比べて低下しているからではないか?」
→「なぜ、魅力が低下したのか?」
→「市場のニーズの変化を捉えきれず、製品のアップデートを怠っていたからではないか?」
→「なぜ、怠っていたのか?」
→「市場調査や研究開発への投資を、短期的な利益確保のために削減していたからだ」

ここまで掘り下げて初めて、打つべき真の対策が見えてきます。それは「セール」ではなく、「顧客ニーズの再調査と、それに基づいた研究開発への再投資」かもしれません。俯瞰力は、私たちを表面的な問題解決から解放し、企業の体質そのものを改善する「根本治療」へと導いてくれるのです。

メリット3:未来を予測し、変化の波に乗ることができる

現代は「VUCA(ブーカ)」の時代と言われます。

  • Volatility(変動性)
  • Uncertainty(不確実性)
  • Complexity(複雑性)
  • Ambiguity(曖昧性)

これらの頭文字を取った言葉で、「あらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増し、将来の予測が困難な状態」を意味します。このような時代において、自社や自分の業界という「一本の木」だけを見ていては、あっという間に時代遅れになってしまいます。

俯瞰力を持つことで、

  • 市場や顧客ニーズの変化
  • 競合の新たな動き
  • テクノロジーの進化(AI、DXなど)
  • 社会情勢や法規制の変更

といった、自社を取り巻く「森」全体の大きな変化の潮流を捉えることができます。

例えば、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表した『DX白書2023』によると、日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みは、2022年度時点で約69.3%と前年から着実に増加しているものの、ビジネスモデルの変革や顧客価値の創出といった“トランスフォーメーション”領域で「成果が出ている」と回答した企業の割合は日本で58.0%にとどまり、米国の約89.0%と比べて大きなギャップがあることが明らかになっています。

この情報を「単なるデータ」として見るのではなく、「自社が今、DXにどう向き合うべきか?競合に先んじるチャンスはないか?あるいは、乗り遅れるリスクはないか?」と、自社の戦略と結びつけて考えることが俯瞰力です。 変化の兆候をいち早く察知し、脅威を避けるだけでなく、それをチャンスとして捉え、先手を打つ。俯瞰力は、変化の激しい時代を生き抜くための「羅針盤」となるのです。

【実践編】明日からできる!ビジネスで「俯瞰力」を鍛える5つの習慣

「俯瞰力の重要性はわかった。でも、どのようにすれば俯瞰力を鍛えられるのか?」

ご安心ください。俯瞰力は、一部の天才だけが持つ特殊能力ではありません。日々の少しの意識とトレーニングで、誰でも後天的に鍛えることができるスキルです。ここでは、実践的な5つの習慣をご紹介します。

習慣1:意図的に「視点」を切り替える

私たちは普段、無意識に「自分の視点」で物事を見ています。この凝り固まった視点を、意識的に切り替える訓練をしてみましょう。

  • 立場を変える
    「もし私がお客様だったら、この商品やサービスをどう感じるだろうか?」「もし私が競合の社長だったら、自社をどう攻めるだろうか?」「もし私が入社3年目の若手社員だったら、今の会社の状況をどう思うだろうか?」と、様々な登場人物になりきって考えてみます。
  • 時間軸を変える
    今の課題を「1週間後」「1年後」「5年後」の視点から見つめ直します。「5年後の会社にとって、この意思決定は本当にプラスになるだろうか?」と自問することで、短期的な思考から抜け出すことができます。
  • 物理的に視点を変える
    これは比喩的な意味だけでなく、文字通り「高い場所」に立つことも有効です。オフィスの上の階から街を眺める、地図や航空写真アプリで自社の周辺地域を眺めてみる。こうした物理的な行為が、心理的な視野を広げるきっかけになることは少なくありません。

習慣2:時間軸を「未来から現在」へ逆算する

多くの人は、「今日できること」を積み重ねて未来を作ろうとします(フォアキャスティング思考)。しかし、俯瞰力を鍛えるには、その逆のアプローチ、「バックキャスティング思考(逆算思考)」が極めて有効です。

これは、まず「3年後(あるいは5年後)、会社は(自分は)どうなっていたいか?」という理想の未来像を具体的に描き、そこから逆算して「では、その未来を実現するために、2年後、1年後、そして“今”、何をすべきか?」を考える方法です。

例えば、「3年後に地域No.1の顧客満足度を誇る企業になる」という未来像を設定したとします。
→そのためには、1年後には新しい顧客管理システムを導入し、全社員が使いこなせている必要がある。
→そのためには、半年後にはシステムを選定し、導入計画を立てる必要がある。
→そのためには、今月中に、プロジェクトチームを発足させ、現状の課題を洗い出す必要がある。

このように未来から逆算することで、日々の業務が「未来の理想を実現するための一歩」として意味づけられ、戦略的な行動につながります。

習慣3:積極的に「横」と「外」の情報を取りに行く

自分の部署や業界の中だけで情報を集めていると、視野はどんどん狭くなります。意図的に、普段接することのない情報に触れる機会を作りましょう。

  • 社内の「横」とつながる
    他部署のキーパーソンとランチに行く、雑談するなど、意識的にコミュニケーションの機会を持ちましょう。「営業部では今、何が一番の課題?」「開発部では、どんな新しい技術に注目している?」といった情報交換が、思わぬところで自部署の課題解決のヒントになったり、新たな連携のアイデアを生んだりします。
  • 業界の「外」に飛び出す
    異業種交流会や、全く専門外のセミナー、イベントに顔を出してみましょう。自分たちの業界の「常識」が、他の業界では「非常識」であることに気づかされるはずです。この「カルチャーショック」こそが、凝り固まった思考をほぐす最高のストレッチになります。
  • インプットを多様化する
    いつも経済新聞だけを読んでいるなら、たまには歴史書や哲学書、サイエンス系の雑誌を手に取ってみてください。一見、ビジネスと無関係に見える情報が、点と点として頭の中にストックされ、ある日突然線として結びつき、革新的なアイデアの源泉となることがあります。

習慣4:思考を整理する「フレームワーク」を味方につける

複雑な物事を全体的に捉えようとするとき、頭の中だけでは混乱してしまいます。そんな時、「フレームワーク」という思考の「型」が、あなたの思考を整理し、俯瞰的な視点を与えてくれます。難しく考える必要はありません。まずは代表的なものをいくつか、道具として使ってみましょう。

  • 3C分析: 市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの視点から、自社の置かれている環境を分析する最も基本的なフレームワークです。「顧客は何を求めているのか?」「競合は何をしているのか?」「それに対して、自社の強み・弱みは何か?」を整理することで、事業の成功要因(KSF: Key Success Factor)が見えてきます。
  • SWOT分析: 自社の内部環境である「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」と、外部環境である「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」を整理します。自社の現状を客観的に把握し、今後の戦略を立てる上で非常に有効です。
  • PEST分析: 政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)という、自社ではコントロールできないマクロな外部環境が、自社にどのような影響を与えるかを分析します。長期的な視点を持つ上で役立ちます。

大切なのは、これらのフレームワークを埋めること自体が目的ではない、ということです。あくまで思考を整理し、多角的な視点を持つための「補助輪」として活用することが重要です。

以下の記事で3C、SWOT分析について解説していますので、もしよろしければお読みください。

習慣5:「他人に説明する」ことで思考を客観視する

人に教えることが、一番の学びになる」とよく言われます。これは俯瞰力を鍛える上でも真実です。

自分の考えていること、会社の現状、今後の戦略などを、部下や同僚、あるいは家族など、「他人に分かりやすく説明する」ことを試みてください。説明しようとすると、「あれ、ここの理屈がつながらないな」「この前提は、説明するには根拠が弱いな」といった、自分の中の思考の曖訪さや矛盾点に気づくことができます。

これが、自分の思考を客観視し、一段高い視点から見直すことにつながります。もし可能であれば、私のような外部のコンサルタントを「壁打ち」相手として使うのも非常に有効です。第三者の客観的な視点や質問は、自分一人では決して気づけなかった「盲点」を教えてくれます。私もクライアントの経営者や管理職の壁打ち相手になることは多いですが、壁打ちを通じて何かしらの気づきや着想を得て、次のアクションにつながることは多いです。

Q&A

Q1. 俯瞰的に見ようとすると、かえって現場の細かい部分が見えなくなりそうで不安です。どうバランスを取れば良いですか?
A. これは多くのリーダーが抱えるジレンマだと思います。重要なのは、「鳥の目」と「虫の目」を意識的に行き来することです。

  • 鳥の目: 高い視点から全体像(森)を把握する俯瞰的な視点。
  • 虫の目: 地面を這うように、現場の具体的な状況(木)を詳細に把握する視点。

経営者やリーダーは、「鳥の目」で会社の進むべき方向性や全体戦略を定め、次はその戦略が現場でどのように実行されているかを「虫の目」で確認し、課題があれば吸い上げる。そして再び「鳥の目」に戻り、現場からの情報をもとに戦略を微修正する。この繰り返しが重要です。俯瞰力とは、現場を無視することではありません。むしろ、現場で起きていることの意味を、全体像の中で正しく位置づけるための力なのです。
さらに言えば、市場や時代の「流れ」を読む「魚の目」という視点も加えた、3つの目を使い分けることが理想です。

Q2. プレイングマネージャーとして日々多忙で、俯瞰的に考える時間を確保できません。どうすれば良いですか?
A. これも、特に中堅中小企業の経営者様から切実な声としてよくお聞きします。結論から言えば、「俯瞰的に考える時間」を、他の業務と同じように、あるいはそれ以上に重要な「アポイントメント」として、強制的にスケジュールに組み込んでください。
最初は、週に1時間でも構いません。「戦略立案タイム」「未来を考える時間」などと名付けて、手帳やカレンダーに書き込み、その時間は電話もメールも見ない、誰にも邪魔されない環境を確保します。
「そんな時間はない」と思われるかもしれません。しかし、目先の業務に10時間費やすよりも、俯瞰的に考えた1時間から生まれた質の高い意思決定の方が、会社の未来にとって何倍も価値があるのです。また、俯瞰的に考える中で、「この業務は本当に自分がやるべきか?」という問いが生まれ、部下への権限移譲が進むきっかけにもなります。時間を生み出すために、まず時間投資をすることが不可欠です。

プレイングマネージャー、タイムマネジメントについては以下の記事でも解説していますので、もしよろしければお読みください。

Q3. 俯瞰力は、持って生まれたセンスや才能なのではないでしょうか?
A. もちろん、もともと物事を大局で捉えるのが得意な方はいらっしゃいます。しかし、断言できるのは、俯瞰力はセンスではなく、後天的に習得できる「スキル」であるということです。
自転車の乗り方を思い出してください。最初は誰もが、バランスを取れずに何度も転びます。しかし、転びながらも練習を続けるうちに、無意識にバランスが取れるようになります。俯瞰力もこれと全く同じです。 今回ご紹介した5つの習慣を、最初は意識的に、ぎこちなくても構わないので、繰り返し実践してみてください。続けるうちに、それはあなたの思考の「癖」となり、やがては無意識に全体像を捉えられる「スキル」へと昇華していくはずです。才能のせいにせず、まずは一歩を踏み出すことが何よりも大切です。

まとめ

今回は、ビジネスにおける「俯瞰力」の重要性とその具体的な鍛え方についてお伝えしてきました。日々の業務に追われる中で、私たちはどうしても目の前の「木」に集中しがちです。しかし、それだけでは会社という「森」全体の健康状態を見失い、気づかぬうちに道に迷ってしまう危険性があります。

俯瞰力とは、

  • 部分最適に陥らず、全体最適の意思決定を可能にし、
  • 表面的な問題ではなく、その根本原因を発見させ、
  • 変化の激しい時代を乗りこなし、未来を切り拓くための羅針盤となる、

まさに、これからの時代を生きるすべての経営者・リーダーにとって必須のスキルです。

今回ご紹介した5つの習慣は、どれも特別なものではなく、明日から、いえ、今日からでも意識できることばかりです。

  1. 視点を切り替える
  2. 未来から逆算する
  3. 横と外の情報を取りに行く
  4. フレームワークを味方につける
  5. 他人に説明する

まずは一つでも構いません。ご自身の仕事の中に、これらの習慣を取り入れてみてください。最初は小さな変化かもしれません。しかし、その小さな視点の変化が、やがてあなたの意思決定の質を大きく変え、会社の未来をより良い方向へと導く、大きな一歩となることを私は確信しています。

「木を見て森を見ず」から脱却し、「森全体を見渡し、その上で一本一本の木を力強く育てる」。そんな経営を実現するために、さあ、今日からあなたも一歩引いて、ご自身のビジネスの全体像を、新たな視点で眺めてみませんか? もし、自社だけでは客観的な視点を持つことが難しい、壁打ち相手が欲しいと感じた際には、いつでもお声がけください。数々の企業の「森」を見てきた経験が、きっとあなたのお役に立てるはずです。

私たち唐澤経営コンサルティング事務所では、「コーチング」と「コンサルティング」を組み合わせ、中堅中小企業の経営課題解決と成長戦略の策定を強力にサポートいたします。経営に関するご相談や無料相談をご希望の方は、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

唐澤 智哉

新卒で大手金融系シンクタンクに入社し、大手企業向けのITコンサルティングに従事。その後、2社のコンサルティングファームにて、大手企業向けの業務改革・ITコンサルティングに従事。
2012年に大手IT企業に入社し、中小企業向けのコンサルティング事業の立ち上げの中心メンバーとして事業化までを経験し、10年間中小企業向けの経営コンサルティング・ITコンサルティングや研修・セミナーに従事。
その後、2022年に唐澤経営コンサルティング事務所を創業。中小企業向けの経営コンサルティング、DXコンサルティング、研修・セミナー等のサービスを提供している。
趣味は読書で、年間200冊近くの本を読む。