唐澤経営コンサルティング事務所代表の唐澤です。
中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定のコンサルティングに従事してきました。

このコラムでは、私のコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。

あなたの会社では、従業員の勤怠管理にどれくらいの手間と時間をかけていますか?日々の勤怠記録のミス、タイムカードの手作業での集計、法令遵守のための複雑な確認作業に追われていませんか?これらは、特に中小企業において重要な課題です。

そんな中、近年注目されているのが「クラウド型勤怠管理システム」です。このシステムを活用することで、従来の非効率な勤怠管理が一変し、経営者や管理者の負担を大幅に軽減できるのです。

この記事では、クラウド型勤怠管理システムの基本から、導入のメリット、さらには私自身が企業への導入支援で得た経験をもとに、効果的な活用方法についてお伝えします。

読み進めていただくことで、業務効率化のヒントを得て、あなたの会社の生産性向上に繋がる行動を起こせるようになるでしょう。次の章から詳しく見ていきましょう!

クラウド型勤怠管理システムとは

クラウド型勤怠管理システムの概要

クラウド型勤怠管理システムとは、インターネットを活用して、従業員の出退勤記録や労働時間の管理を簡単かつ正確に行えるツールです。紙のタイムカードやエクセルでの手作業といった煩雑な作業をなくし、業務を円滑にするだけでなく、勤怠データを一元管理することが可能です。

このシステムでは、従業員がスマートフォンやパソコンから自分の勤務時間を入力・打刻できるため、入力の手間を大幅に削減できます。また、管理者はシステム上でデータを即時に確認し、休暇申請や承認作業をスピーディに行うことができます。

これにより、経営者や人事担当者が労働時間を正確に把握でき、法令遵守やリスク管理にもつながります。特に、紙やエクセルの管理では起こりがちな集計ミスがゼロに近づくため、労務管理が苦手な方でも安心して使用できる点が、クラウド型システムの最大の強みです。

従来の勤怠管理との違い

クラウド型勤怠管理システムと従来の勤怠管理方法を比較した場合、その利便性と効率性は一目瞭然です。

従来の方法では、タイムカードや手書きの勤怠簿を使用し、それらを集計するために膨大な時間と労力が必要でした。さらに、データ入力時のヒューマンエラーや計算ミスが発生しやすく、これが労務トラブルの原因となるケースも少なくありません。

一方、クラウド型勤怠管理システムでは、以下の点で大きな進化を遂げています。

  • 自動集計機能:打刻されたデータを基に勤務時間や残業時間を自動計算。従業員ごとに時間外手当も簡単に確認可能です。
  • リアルタイム更新:勤怠データが常に最新の状態で保存されるため、突然の確認にも即座に対応できます。
  • 場所を選ばない管理:インターネット環境さえあれば、管理者はオフィス外からでも勤怠状況を確認・修正可能です。

これらの違いによって、作業負担を軽減し、情報の正確性を高められるだけでなく、従業員の信頼感も向上します。また、これらの機能が、法令遵守のための労働時間管理をサポートする点でも非常に有用です。

例えば、36協定(時間外労働の上限規制)に適合したアラート機能を搭載したシステムであれば、時間外労働が上限を超えそうな場合に事前に通知が届き、未然にトラブルを防ぐことができます。

このように、クラウド型システムは従来型管理の弱点を的確に補完し、経営者にとって大きな味方となるのです。

導入が注目される背景

クラウド型勤怠管理システムが注目される背景には、現代の経営環境における変化や課題が深く関係しています。特に中小企業にとって、勤怠管理の正確性と効率化は、コスト削減や従業員満足度の向上に直結する重要な要素です。

以下の3つの要因が、このシステム導入の後押しをしています。

  • 働き方改革への対応
    2019年に施行された「働き方改革関連法」では、時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務化などが課され、企業はこれまで以上に厳格な労働時間管理が求められています。クラウド型システムは、法令遵守を実現するための強力なツールとなり、未払い残業代のリスクや労務トラブルを防ぐ手助けをします。
  • リモートワークの普及
    新型コロナウイルスの影響でリモートワークが広がり、従来のオフィス中心の勤怠管理方法では対応が難しい状況が増えました。クラウド型システムなら、従業員がどこにいても勤務状況を正確に記録でき、管理者は離れた場所からでも労務管理を行えます。
  • デジタル化の推進
    政府が掲げるDX(デジタルトランスフォーメーション)により、企業全体でアナログ作業をデジタル化する流れが加速しています。特に紙のタイムカードや手入力のエクセル管理は、今後競争力を維持するうえで非効率とみなされるケースが増えるでしょう。

これらの背景を踏まえれば、クラウド型勤怠管理システムの導入は、単なる「便利なツール」ではなく、経営課題を解決し、将来に備える「戦略的な選択」と言えるのです。

次章では、このシステムがもたらす具体的なメリットについて深掘りしていきます。

クラウド型勤怠管理システムのメリット

業務効率化の効果

クラウド型勤怠管理システムを導入する最大のメリットは、業務効率の劇的な向上です。従来の勤怠管理では、多くの企業が以下のような問題を抱えていました。

  • 手作業による勤怠データの入力ミス。
  • 勤怠記録の確認や承認にかかる膨大な時間。
  • 書類の紛失や不備によるトラブル。

クラウド型システムを導入することで、これらの問題を一気に解決できます。具体的には、従業員がスマートフォンやタブレットを使って出退勤を記録すると、そのデータが即座にクラウドに反映され、管理者がリアルタイムで確認可能です。これにより、手動での入力作業が不要となり、ヒューマンエラーをほぼゼロに抑えることができます。

さらに、勤怠データがデジタル化されることで、給与計算との連携がスムーズになります。
例えば、労働時間や残業時間が自動計算され、給与計算ソフトと連携することで、担当者が手計算で確認する手間を削減できます。これにより、人事部門が本来取り組むべき戦略的な業務に集中できるようになるのです。

クラウド型勤怠管理システムは、煩雑な作業を自動化することで、限られた経営資源を効率的に活用できるようにする「経営の武器」と言えるでしょう。

コスト削減のポイント

クラウド型勤怠管理システムを導入することで、直接的・間接的にコスト削減が可能になります。

まず、業務効率化の側面についてです。勤怠管理を手作業で行っている場合、多くの時間と労力が必要です。これにより、実質的に他の業務に割り当てられるはずの時間やリソースが無駄になっています。クラウド型システムを導入することで、これらの作業が自動化され、管理担当者が本来集中すべき業務(採用、教育、人材育成など)に時間を割けるようになります。これにより、管理担当者が「より付加価値の高い業務」へとリソースを移行できるため、経営全体のコストパフォーマンスが向上します。これは間接的なコスト削減と言えるでしょう。

次に、直接的なコスト削減の例として、紙媒体の使用量削減があります。従来の勤怠管理では、タイムカードや出勤簿を使うため、印刷費用や文房具代、さらには記録を保管するスペースのコストが発生します。クラウド型システムでは、これらが不要となり、デジタル管理に完全移行することで運用コストを削減できます。

また、法令遵守によるリスク軽減も重要です。例えば、勤怠記録のミスが原因で未払い残業代が発生する場合、それが長期間続けば訴訟や多額の支払いが必要になるケースがあります。クラウド型システムなら、正確な記録とアラート機能でリスクを事前に防ぐことが可能です。これは、将来発生するかもしれない余分な出費を未然に防ぐという意味で「隠れたコスト削減」と言えます。

クラウド型勤怠管理システムには当然導入コストが必要となりますが、その効果を考えれば、むしろ中長期的な投資として経営全体の健全性向上につながることが明らかです。

法令遵守とリスク管理の強化

クラウド型勤怠管理システムが特に注目される理由の一つは、法令遵守を強化し、経営リスクを低減できる点にあります。

近年、労働基準法や働き方改革関連法の改正によって、企業は労働時間や有給休暇の管理をこれまで以上に厳密に行う必要があります。このような環境下で、勤怠管理のミスや不備は企業にとって大きなリスクとなり得ます。

まず、時間外労働の管理です。クラウド型システムには、労働時間の上限に達しそうな従業員をリアルタイムでアラートする機能が備わっているものがあります。これにより、36協定違反を未然に防ぎ、法的トラブルを回避できます。また、過労を防止することで、従業員の健康維持にも貢献できます。

次に、有給休暇の取得義務化への対応です。2019年の法改正により、年間10日以上の有給休暇が付与されている従業員には、少なくとも5日の取得が義務付けられました。本要件に対応するため、クラウド型システムでは、有給休暇の付与状況や取得状況を一目で確認できる機能が標準搭載されています。

このような管理をシステム化することで、複雑な計算や手作業を伴うミスを防ぎつつ、法的要件を確実に満たすことができます。

さらに、記録の透明性と保管も重要なポイントです。従来の紙やエクセルによる管理では、記録の改ざんや紛失がリスクとして挙げられます。一方で、クラウド型システムはデータを安全に保管し、必要に応じて迅速に提供できます。これにより、万が一の監査や労働基準監督署からの指導に対しても適切に対応できる準備が整います。

法令遵守とリスク管理は、単に「やらなければならない」課題ではなく、企業の信頼性や従業員満足度を高める重要な要素です。クラウド型勤怠管理システムは、経営者の手間を省きながらこれらの課題を確実にクリアできる、頼れるツールと言えるでしょう。

私の体験談

私が支援したある製造業の中小企業は、複数の拠点で事業を展開していましたが、勤怠管理は非常にアナログな方法に頼っていました。各拠点で従業員が勤怠表をエクセルで作成し、それを紙に印刷して本人が押印。その後、管理者が内容を確認し、承認印を押してから本社人事部に郵送するという流れでした。

本社では届いた原本を再度チェックしますが、記入ミスや不備が多く、何度も差し戻しが発生していました。この結果、勤怠の締め作業に毎月5~10日を要していたのです。

さらに、タイムリーな勤怠記録が徹底されておらず、各拠点の管理者の裁量に任されていました。これにより、残業時間の把握が遅れ、36協定の遵守や正確な残業代の計算に支障をきたすこともありました。たとえば、ある従業員が申請し忘れていた残業時間が後日判明し、給与計算が二度手間になったこともありました。

このような状況では、管理者も従業員も疲弊し、労務トラブルの温床になるリスクがありました。

こうした状況を改善するため、クラウド型勤怠管理システムの導入を提案しました。
特に以下の機能がカギとなりました。

  • リアルタイム記録と自動集計:従業員はスマートフォンやPCを使い、その場で勤怠を入力。データはクラウド上で即時に集計されます。
  • ワークフローのデジタル化:勤怠データは管理者に即座に共有され、システム上で承認が完結。本社への郵送や紙の管理が不要となりました。
  • アラート機能:36協定の上限や長時間労働が発生する場合、システムが自動で通知する仕組みを導入。これにより、残業時間の把握遅れを解消しました。

システム導入後、以下のような成果が見られました。

  • 勤怠締め作業の所要時間が10日から2日に短縮
  • 記入ミスや承認漏れがほぼゼロになり、差し戻し件数が90%以上削減
  • 残業時間の把握がリアルタイムで可能となり、36協定違反のリスクを完全に回避
  • 従業員の満足度調査では、勤怠手続きが簡素化されたことで「満足」と回答した割合が20%向上

さらに、システム導入により得られた勤怠データを分析することで、拠点間での業務負荷の偏りが明らかになり、シフト配置の最適化にもつながりました。これにより、従業員一人ひとりの負担が軽減され、結果的に生産性が向上しました。

このように、クラウド型勤怠管理システムの導入は、単なる業務効率化を超え、企業全体の働き方改革を進める重要なカギとなります。

この事例から、経営課題の解決に向けた一歩を踏み出していただけることを願っています。

Q&A

Q1. クラウド型勤怠管理システムの導入コストが心配です。中小企業でも導入可能ですか?
A. 導入コストは確かに初期投資として発生しますが、多くのシステムは利用規模に応じた柔軟なプランを提供しており、中小企業向けの低コストプランも充実しています。さらに、紙や郵送にかかる経費、人件費の効率化、労務トラブル回避によるコスト削減効果を考慮すれば、中長期的には投資以上のメリットを得ることができます。

Q2. ITに詳しくない従業員でも使いこなせますか?
A. はい、多くのクラウド型システムはユーザーフレンドリーな設計がされています。スマートフォンやタブレットから簡単に操作できるインターフェースが採用されており、操作がシンプルで分かりやすいです。また、システム提供企業がトレーニングやサポートを提供する場合も多いので、ITスキルに不安がある場合でも問題ありません。

Q3. 複数拠点で運用している場合、管理が複雑になりませんか?
A. むしろ複数拠点での運用にこそ、クラウド型勤怠管理システムがその威力を発揮します。各拠点から入力されたデータがリアルタイムで本社や管理者に共有されるため、個別のデータ収集や確認作業が不要になります。また、拠点ごとの勤務状況や時間外労働を一目で確認できるダッシュボード機能も多くのシステムに搭載されています。

Q4. 法令遵守や労務トラブルへの効果はどれほどありますか?
A. 法令遵守に関しては、時間外労働の上限を超えそうな場合にアラートを出す機能や、有給休暇取得の進捗を管理する機能などが標準装備されています。これにより、トラブルの元となる勤怠記録ミスや対応漏れを大幅に減らせます。また、過去の勤怠記録を迅速に確認できるため、労働基準監督署からの指導や監査にも迅速に対応できます。

Q5. データのセキュリティは大丈夫ですか?
A. 多くのクラウド型勤怠管理システムは、金融機関レベルの暗号化や安全なサーバー環境を採用しており、データの漏洩リスクを最小限に抑えています。また、システム提供企業はセキュリティ監査を定期的に実施しており、データ保護に万全を期しています。不安がある場合は、提供企業に具体的なセキュリティ対策を確認すると良いでしょう。

まとめ

クラウド型勤怠管理システムは、業務効率化、コスト削減、法令遵守、リスク管理といった多くの課題を解決する強力なツールです。しかし、その真価を発揮させるためには、適切な「運用」が欠かせません。

どれだけ高機能なシステムを導入しても、従業員が入力を怠ればリアルタイムでの情報把握は不可能です。このため、システム導入後には以下のような運用の工夫が重要となります。

  1. 運用ルールの明確化
    システム導入前に、出退勤の入力タイミングや方法を明確にし、全従業員に周知徹底することが不可欠です。例えば、「出勤時と退勤時には必ずスマートフォンで打刻を行う」といった具体的なルールを設定します。
  2. 管理者の役割強化
    運用初期は特に、管理者が積極的に従業員の入力状況を確認することが求められます。入力漏れやミスを早期に指摘し、改善を促すことで、正しい運用習慣を根付かせることができます。また、システムの管理画面を活用し、入力が遅れている従業員へのリマインダーを送るなどの機能も有効です。
  3. 動機付けの仕組み
    従業員が勤怠入力を「面倒な作業」だと感じるのではなく、必要性を理解し、積極的に協力するための動機付けが重要です。例えば、システムを使うことで給与計算が迅速かつ正確に行われることや、有給休暇申請が簡単にできる利点を説明し、従業員にもメリットを実感してもらいます。
  4. 導入後のフィードバックと改善
    システムを導入しただけで完了とせず、定期的に運用状況を振り返り、課題を改善するプロセスを設けることが重要です。従業員や管理者から意見を集め、入力画面の使いやすさや運用フローの改善を継続的に行うことで、運用の定着度を高めることができます。

クラウド型勤怠管理システムの導入は、経営者や管理者にとって、業務の効率化と経営課題の解決への道を切り開く重要なステップです。しかし、どのシステムを選ぶか以上に、導入後の運用が成功のカギを握っています。

この記事でご紹介した内容を参考に、システムを最大限に活用し、経営課題解決に向けた一歩を踏み出していただければ幸いです。

DXの具体的な進め方やツール選定、社内体制づくりなど、お悩みやご不明点がありましたらお気軽にご相談ください。唐澤経営コンサルティング事務所では、中小企業診断士・ITストラテジストとして、中堅中小企業の規模や業種に合わせた最適なアドバイスとサポートを行っています。

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この記事を書いた人

唐澤 智哉

新卒で大手金融系シンクタンクに入社し、大手企業向けのITコンサルティングに従事。その後、2社のコンサルティングファームにて、大手企業向けの業務改革・ITコンサルティングに従事。
2012年に大手IT企業に入社し、中小企業向けのコンサルティング事業の立ち上げの中心メンバーとして事業化までを経験し、10年間中小企業向けの経営コンサルティング・ITコンサルティングや研修・セミナーに従事。
その後、2022年に唐澤経営コンサルティング事務所を創業。中小企業向けの経営コンサルティング、DXコンサルティング、研修・セミナー等のサービスを提供している。
趣味は読書で、年間200冊近くの本を読む。