唐澤経営コンサルティング事務所の唐澤です。中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり、中堅中小企業の経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定などのコンサルティングに従事してきました。
このコラムでは、私のこれまでのコンサルティング経験をもとに、中堅中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。
企業が成長していくためには、優秀な人材の採用が非常に重要であることは言うまでもありません。しかし、それと同時に「雇ってはいけない人材」を採用してしまうことのリスクも、看過できません。一度の採用ミスが、後々組織に大きな問題を引き起こす可能性もあるため、採用時にしっかりと見極める必要があります。
本コラムでは、採用におけるミスマッチを防ぐための具体的な方法を解説します。雇ってはいけない人材を面接で見抜くための具体的な5つの質問も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
なお、本コラムの内容は以下の動画でも解説していますので、もしよろしければご視聴ください。
採用ミスマッチを防ぐためのポイント
採用において見極めるべき重要な要素とは何でしょうか?それは、応募者の能力、人間性、そして組織文化へのマッチ度(カルチャーフィット)の3つです。採用におけるミスマッチは、これらのいずれか、あるいは複数にマッチしなかった場合に発生します。面接では、つい業務遂行能力やスキルといった「能力」にフォーカスしがちですが、実は人間性や組織文化へのマッチ度(カルチャーフィット)を重視することを私は推奨しています。その理由は、人間性やカルチャーフィットに問題がある人材は、組織に深刻な問題を引き起こすケースが多いからです。
面接官が果たすべき3つの重要な役割

「雇ってはいけない人材」を見抜くためには、面接官自身が以下の3つの重要な役割を果たす必要があります。
- 役割1:自社の組織やカルチャー、価値観を言語化し、面接官自身が理解する
自社の組織やカルチャー、価値観を面接官自身がしっかりと理解していないと、面接での判断が感覚的になってしまいます。また、逆に候補者からも不信感を持たれる可能性もあります。面接官自身が組織やカルチャー、価値観を自分の言葉で語れるよう、事前に理解を深めておく必要があります。 - 役割2:候補者の本音を引き出し、相互理解を促す質問をする
面接は形式的な場ではなく、コミュニケーションの場と捉えるべきです。過度に形式的にし過ぎることで、候補者の能力・人物を見抜けなければ、それは本末転倒でしょう。本音を引き出しやすい雰囲気作りや、自社に関することを正直に伝え、それに対する候補者の反応を見ることもミスマッチのサインを見抜く上での重要なポイントとなります。 - 役割3:行動エピソードを深掘りすることで、嘘や矛盾を見破る
最も重要な役割です。単に質問への回答を聞くだけでなく、「なぜそう考えたのか」「どう行動したのか」「その結果どうなったのか」など、具体的な行動に基づいたエピソードを深く掘り下げて聞くことがポイントです。これにより、判断基準との整合性や言葉の一貫性をチェックできます。矛盾がある場合は、誠実性やコミュニケーションに問題がある可能性があるため、注意が必要です。
『雇ってはいけない人材』を見破るための具体的な5つの質問
前述の面接官の役割を踏まえ、「雇ってはいけない人材」を見抜くための具体的な質問を5つご紹介します。
- 質問1:過去にあなたの意見と会社や上司の方針が大きく違った経験はありますか?その時どう対応しましたか?
会社の方針に納得いかない場面で、自分の考えに固執するタイプか、あるいは建設的に意見を伝え、折り合いをつけようとする行動が取れるか人物かを見極めるための質問です。 - 質問2:自分とは異なる価値観や考え方を持つ人と仕事をした経験はありますか?そして、どのように協力して成果を出しましたか?
組織には様々な経験、価値観、考え方を持つ人がいます。価値観の違いに直面した際に、相手の意見を尊重しながらも自分の考えを伝えることで、合意形成や相互理解を適切に図る行動が取れる人物かを確認します。排他的な態度を取る人は組織風土を壊す可能性があるため注意が必要です。 - 質問3:あなたが理想とする職場の雰囲気や文化はどのようなものですか?具体的に言葉で説明できますか?
候補者の理想とする組織文化を直接確認し、自社の組織文化との間に大きなギャップがないかを判断する質問です。回答が曖昧な場合は、具体的な事例や行動ベースで深掘りして確認しましょう。 - 質問4:これまでのキャリアであなたが一番譲れなかったことは何ですか?また、その理由は何ですか?
候補者の最も大切にしている価値観が、自社の価値観やカルチャーと真逆でないかを確認する質問です。価値観がマッチしている場合でも、その価値観を具体的にどのような行動で示してきたかを深掘りすると、より深く理解できます。 - 質問5:あなたにとって成功とは何を意味しますか?具体的なエピソードを交えて説明してください。
候補者の成功の定義が、自社の価値観やカルチャーと整合するかを確認する質問です。また、本人の成長志向や課題解決能力も確認できる質問となります。
深掘りこそが真実を見抜く最大のカギ

これらの質問に対する回答は、必ず具体的なエピソードに基づいて答えてもらうように促し、さらに徹底的に深掘りすることが最も重要なポイントです。例えば、「これまでのキャリアであなたが一番譲れなかったことは何ですか?」という質問の場合、単に答えを聞くだけでなく、「なぜそう思ったのですか?」「なぜそう考えたのですか?」「いつ、どのように実行しましたか?」「誰を巻き込みましたか?」「その時にどのような困難にぶつかりましたか?」「その結果どうなりましたか?」といったように、一つのエピソードに対して多角的に、徹底的に深掘りするのです。このように深掘りして質問していくことで、候補者は嘘をつくことが難しくなります。なぜならば、すべての話を整合させようとすると、矛盾が生じやすくなるためです。多面的に質問することで、整合性や一貫性があるかをしっかりと確かめることができます。
このような面接での深掘りする質問は、候補者から見ると「圧迫面接」と感じられるかもしれませんが、決してそうではありません。その人の本当の価値観やカルチャーが、自社の内容と合致しているかを確認しているだけなのです。表面的な質問だけでは、本当にマッチしているか人物どうかを判断することは困難です。むしろ、これが本来の面接のあるべき姿だと私は考えています。
まとめ
中堅・中小企業の採用において、応募者の能力はもちろん重要ですが、人間性や組織文化へのマッチ度(カルチャーフィット)をより重視することが、ミスマッチを防ぎ、組織を成長させる上で非常に重要です。そして、それを見極めるためには、自社の価値観を明確にし、面接時に具体的な行動エピソードを徹底的に深掘りし、嘘や矛盾がないかを確認することが不可欠です。
唐澤経営コンサルティング事務所では、こうした課題に取り組む経営者を支援し、組織の多様性を強みへと変える実践的なサポートを行っています。具体的には、社員間の価値観の違いを埋める対話の場づくりや、未来志向のビジョン共有の支援、さらにはリーダーシップをさらに強化するためのプログラムなどを提供しています。これらの支援を通じて、経営者が持つ課題に寄り添い、持続可能な成長を後押しします。れからの中小企業経営における最強の武器になるはずです。長期的に見れば、顧客満足度・社員満足度・企業の収益性のすべてが高まっていくことでしょう。
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