唐澤経営コンサルティング事務所の唐澤です。中小企業診断士・ITストラテジストの資格を持ち、20年以上にわたり経営戦略立案や業務改革、IT化構想策定などのコンサルティングに従事してきました。現在は中堅・中小企業に特化したコンサルティングをしています。

このコラムでは、私のこれまでのコンサルティング経験をもとに、中堅・中小企業の経営に役立つ情報を発信しています。

突然ですが、こんな状態になっていないでしょうか。

  • 大きな判断ほど、社内で誰にも相談できない
  • 幹部に話しても「社長がそう言うなら」で終わってしまう
  • 顧問税理士には数字の話はできるが、事業の相談はしづらい
  • 決めきれないまま、同じ議題が3か月続いている
社長から社内幹部と顧問税理士へ伸びる線がそれぞれ×で断たれ、事業が成長しても相談できる相手は増えないことを示した図

事業が大きくなるほど、相談できる相手だけが増えません。

そこで検討されるのが「経営顧問」です。ただ、この言葉はかなり曖昧に使われています。顧問税理士とも、経営コンサルタントとも違う。何をしてくれるのかが、はっきりしない。

そして、私がこの記事で一番お伝えしたいのは、次の一点です。

良い経営顧問かどうかは、どれだけ多くの答えをくれたかではなく、契約が終わった後に、社長と会社に何が残ったかで決まります。

良い経営顧問かどうかは、どれだけ多くの答えをくれたかではなく、契約が終わった後に、社長と会社に何が残ったかで決まる、という一文を大きく示した図

この記事では、経営顧問とは何をする人なのか、他の専門家と何が違うのか、機能しない顧問契約に共通する3つの理由、そして失敗しない選び方5つをお伝えします。読み終える頃には、「自社にいま必要なのか、必要ならどう選ぶか」の判断軸が手に入っているはずです。ぜひ最後までお読みください。

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経営顧問とは、社長が決められる状態をつくる人です

結論から申し上げると、経営顧問とは、社長が判断する場面に継続的に外から関わり、決められる状態をつくる人のことです。

作業を代行する人ではありません。答えを出す人でもありません。

ここが、他の専門家といちばん違うところです。

顧問税理士・顧問弁護士・経営コンサルタントとの違い

言葉が似ているので、公的な定義で整理します。

主に扱う領域関わり方根拠・出典
顧問税理士税務代理・税務書類の作成・税務相談継続日本税理士会連合会「税理士とは」
顧問弁護士訴訟事件その他一般の法律事務継続(多くは随時)弁護士法 第3条(弁護士の職務)
中小企業診断士経営の診断及び経営に関する助言案件による中小企業庁「中小企業診断士とは」
経営コンサルタント特定の経営課題プロジェクト単位
経営顧問経営判断そのもの継続

顧問税理士が扱うのは、税務代理・税務書類の作成・税務相談です(出典:日本税理士会連合会「税理士とは」)。つまり、原則として「終わった数字」を正確に整えることが仕事です。これから何を決めるかは、本来の役割ではありません。

顧問弁護士は「一般の法律事務」を職務としています(出典:弁護士法第3条)。契約や紛争は扱いますが、事業の方向を決めるのは領域の外です。

経営コンサルタントは、課題を決めて、期間を区切って解きます。だから終わりがあります。終わったあとに次の判断が来たとき、そこにはもういません。

経営顧問は、その間を埋める役割です。成果物が報告書ではなく「決まったこと」だ、というのがいちばんの特徴です。

なお、「経営」と「運営」を混同していると、この役割の必要性そのものが見えません。詳しくは以下の記事をお読みください。

そもそも、外部に相談することに意味はあるのか

ここは、公的な調査があります。

中小企業庁「2020年版 小規模企業白書」は、自社の現状把握について、社外の相談相手からアドバイスを受けているかどうかで比較しています。そこでは、いずれの項目においても、外部支援を受けている者の方が「十分」または「おおむね十分」と回答する割合が高いとされています(出典:中小企業庁「2020年版 小規模企業白書」第3部第2章第1節)。

この調査でいう「社外の相談相手」には、有償の相談先(コンサルタント等)が含まれると注記されています。つまり、経営顧問はここに含まれます。

因果関係まで言えるデータではありません。もともと把握できている会社が外部を使っている、という順序もあり得ます。ただ、外に相談相手を持っている会社のほうが、自社を見えているという傾向は出ています。

では、なぜ顧問契約が機能しないのか。理由は3つです

顧問を入れても変わらなかった、という話も同じくらい聞きます。私が見てきた範囲では、理由はほぼ次の3つに集約されます。

以下、説明していきます。

理由①:「答えをもらう関係」になっている

いちばん多いのがこれです。

社長が質問し、顧問が答える。一見うまくいっているように見えます。しかし数年経つと、社長が自分で判断する筋力が落ちます。そして顧問がいないと決められない会社になる。

社長が質問し顧問が答え、社長の判断力が低下し、顧問がいないと決められない会社になるという循環を示した図

これは顧問側にとって、実は都合がいい状態です。契約が続くからです。

私は、ここを逆に置いています。目指すのは、契約が終わったときに、社長が一人で決められるようになっていることです。

経営判断は、正解を当てるクイズではありません。動きながら勝ち筋に寄せていく修正ゲームです。だから必要なのは正解を持っている人ではなく、決め方を一緒に組み立てる相手です。

私はこの決め方を「納得解」と呼んでいます。自社の制約と目的に照らして合理的で、社内外に論理的に説明でき、実行可能で、振り返りが残る結論のことです。「なんとなくこれが良さそう」は、反対意見が出た瞬間に崩れます。

理由②:相談する材料が、社内にない

2脚の椅子が向かい合う打ち合わせ用のテーブル。置かれているのはマグカップが1つだけで、資料は何も出ていない

月に1回、顧問と会う。しかし話せるのは「なんとなく調子が悪い」「現場が回っていない気がする」という感覚だけ。判断の材料になる事実が、社内に用意されていません。

材料がなければ、相談は雑談になります。そして雑談は、次の会議でも同じ議題を生みます。

ここで必要なのは、顧問を替えることではありません。自社の業務と数字を、見える形にすることです。

理由③:問題を並べただけで、絞っていない

会議室のホワイトボード一面に、色の違う付箋が整理されないまま数十枚貼られている

たとえば、こんな状態です。

「売上を伸ばしたい」「人が育たない」「社長に仕事が集中している」「ITも進めたい」——問題はいくつも見えている。それなのに、何から手を付けるかが決まらない。会議のたびに全部が議題に出て、全部が持ち帰りになる。

現場に入ると、問題はたくさん出てきます。出ること自体は悪くありません。よく見えている証拠です。

止まるのは、そのあとです。並べただけで満足して、その後動かない。

原因は、出てきた問題を全部同じ重さで扱っていることにあります。問題は同じ重さではありません。そして中堅・中小企業には、人・金・時間の限りがあります。全部はできない。だから必ず絞る。

ここで、言葉を2つに分けておきます。

  • 問題=現状と、ありたい姿とのギャップそのもの。「何が足りないのか?」
  • 課題=そのギャップの原因のうち、①自社が手を打てて ②効果がいちばん大きいところ。「どこに注力するか?」
現状とありたい姿のギャップが問題であり、そのうちどこに注力するかが課題であることを示した図

課題を決めるとは、絞るということです。だからこれは経営判断です。顧問の仕事は、この絞り込みに付き合うことであって、問題のリストを長くすることではありません。

なお、こうした「課題が明確でない」段階から相談できる公的な窓口もあります。中小企業庁のよろず支援拠点は、経営課題が明確でない事業者に対しても、経営課題の分析や、適切な支援機関の紹介を行うとしています(出典:中小企業庁「経営支援体制」)。無料です。まず外の視点に触れてみたい、という段階なら、ここから始めるのも十分ありです。

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失敗しない経営顧問の選び方、5つ

では、どう選べばよいのか。私が経営者の方にお伝えしている観点は5つです。

失敗しない経営顧問の選び方として、要件定義・問いを返すか・自社の数字・契約後に何が残るか・費用の見方の5つを並べた図

① 「何を決めるために使うか」を先に決める

顧問を入れてから考える、では順番が逆です。いま決めきれていないことを3つ書き出してから探してください。それが要件定義になります。

② 答えではなく、問いを返す人か

初回の面談で分かります。あなたの話を聞いて、すぐ結論を言う人か。それとも「なぜそう思われたのですか」「その判断で、どこまでの損失なら許容できますか」と聞いてくる人か。

後者を選んでください。前者は、あなたの会社の制約を知らないまま答えを出しています。

③ 自社の数字を見て話せるか

一般論は、いまや誰でも出せます。あなたの会社の数字を見て、そのうえで話せるかどうかが分かれ目です。決算書を持参して反応を見るのが、いちばん早い確認方法です。

④ 契約が終わったとき、社内に何が残るか

これを最初に聞いてください。「終わったあと、うちには何が残りますか」と。

答えられない相手は、依存を前提にしています。

残るべきものは2つです。決め方の型と、決めた記録。この2つが社内に残っていれば、顧問がいなくなっても次の判断ができます。逆に、残ったのが「良いアドバイスをもらった記憶」だけなら、それは顧問の成果ではありません。

社内に「決め方の型」と「決めた記録」の2つが残っている状態を、建物にたとえて示した図

⑤ 費用は「時間」ではなく「何が決まるか」で見る

経営顧問の費用は、支援の範囲、面談の頻度、実行支援を含むかどうかによって大きく異なります。一律の相場と呼べるものはありません。

比較するときに、面談時間の長さで割り算をしないでください。1時間で1つ決まる相手と、3時間かけて何も決まらない相手では、前者のほうが安いからです。

なお、顧問を入れる前に「そもそも社長が現場から離れられていない」場合は、順序が違います。先にそちらを解いたほうが早い。

Q&A

Q1. 顧問税理士がいるのに、経営顧問も必要ですか?
A. 役割が違います。顧問税理士の業務は税務代理・税務書類の作成・税務相談です(出典:日本税理士会連合会)。扱うのは原則として終わった数字で、これから何を決めるかは領域の外です。逆に、税理士に経営判断まで期待するのは、相手にとっても酷な話です。両方要るかどうかは、いま決めきれていない論点が「数字の話」なのか「事業の話」なのかで分かれます。

Q2. 月に1回話すだけで、本当に何か変わるんですか?
A. 頻度ではなく、その1回で何が決まるかです。月1回でも、期限・投下上限・撤退基準まで決めて終われば、会社は動きます。逆に週1回会っていても、決まらなければ何も変わりません。決めた記録が残っているかを見てください。

Q3. 社内に相談できる幹部を育てるほうが、先ではないですか?
A. おっしゃるとおりで、最終的にはそちらが本命です。ただ、幹部を育てる判断そのものを、いま誰と相談するかという問題が残ります。外部を使うなら、幹部が育つまでの期間限定と決めて入れるのが健全です。

Q4. 顧問を入れたら、社員に「社長は外の人の言いなり」と思われませんか?
A. その懸念が出るのは、決めたことを社長の言葉で説明できていない場合です。顧問と一緒に考えたとしても、社内に伝えるのは社長です。説明できる形になっているかどうかが、そのまま納得解の条件でもあります。

Q5. どれくらいの期間、続けるものですか?
A. 私は、まず半年を一区切りにしています。理由は、契約を長く続けることが目的ではないからです。目指しているのは、社長がご自身で決められる状態に近づくことです。だとすれば、どこかで「どれだけ近づいたか」を確かめる必要があります。半年にしているのは、決めたことが実際に回り始めたかどうかを見るのに、それくらいはかかるからです。短すぎると決めただけで終わり、長すぎると惰性になります。期限のない検討は、評論家を生むだけです。そして半年ごとに、続けるかどうかを、こちらからも問い直します。「もう要らない」と言っていただけるなら、それは失注ではなく、成果です。

まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

経営顧問とは、社長が判断する場面に継続的に関わり、決められる状態をつくる外部の相談相手です。顧問税理士が扱う「終わった数字」とも、経営コンサルタントが扱う「期間を区切った課題」とも、役割が違います。

機能しない理由は3つでした。答えをもらう関係になっていること。相談する材料が社内にないこと。問題を並べただけで絞っていないこと。

そして選ぶときにいちばん大事なのは、④です。

良い経営顧問かどうかは、どれだけ多くの答えをくれたかではなく、契約が終わった後に、社長と会社に何が残ったかで決まります。

残るべきものは、決め方の型と、決めた記録。最終的には、顧問がいなくても決められる会社になっていること。それが、私の考える良い経営顧問です。

まずは、いま決めきれていないことを3つ、紙に書き出してみてください。それだけで、外部に相談すべきことなのか、社内で決められることなのかが分かれます。

いま決めきれていないことを3つ書き出すための用紙のイラスト

決めるのは、いつでも社長です。その決断が会社を一歩前へ進めることを、応援しています。

唐澤経営コンサルティング事務所 代表 唐澤智哉

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この記事を書いた人

唐澤 智哉

新卒で大手金融系シンクタンクに入社し、大手企業向けのITコンサルティングに従事。その後、2社のコンサルティングファームにて、大手企業向けの業務改革・ITコンサルティングに従事。
2012年に大手IT企業に入社し、中小企業向けのコンサルティング事業の立ち上げの中心メンバーとして事業化までを経験し、10年間中小企業向けの経営コンサルティング・ITコンサルティングや研修・セミナーに従事。
その後、2022年に唐澤経営コンサルティング事務所を創業。中小企業向けの経営コンサルティング、業務改革・DX、研修・セミナー等のサービスを提供している。
趣味は読書。